国際陸上科学掘削計画(International Continental Scientific Drilling Program; ICDP)は、世界各地の陸域を掘って地下から得られる様々な情報を研究することで地球環境変動の歴史を知り、地下の活動的プロセスをとらえるための科学テーマに挑戦する国際共同研究プロジェクトです。この取り組みにより、Climate and Ecosystems(気候と生態系)、Sustainable Georesources(持続可能な地下資源)、Natural Hazards(自然災害)など21世紀の私たちの社会が直面する課題を解決する糸口となることを目指しています。
背景
近年、地球の歴史について理解が深まってきました。また、近代的技術のおかげで、地球物理学調査、リモートセンシング調査、広域にわたる資源地質図の製作などの分野でも大きな進歩がありました。その結果、地球の形成過程や内部構造をよりよく理解するためのツールとして、科学掘削が必要不可欠との認識がなされてきました。掘削は、地球の形成過程を直接研究できる唯一の手段であり、また地表観測やリモートセンシング観測に基づく地質学的モデルを評価・検証するためにも役立ちます。掘削から得られる情報は、地球の天然資源や地球環境を管理・監視する戦略作成にあたって必要不可欠なものとなっているのです。
ICDPの任務およびテーマ
科学掘削が有する特殊な能力を通じて、地殻の構成と構造およびそこでのプロセスに関する基本的かつ世界的に意義のある正確な知識を提供することがICDPの任務です。
ICDPは、21世紀の我々社会の基礎的な挑戦として以下の3つのテーマを掲げています。
- Climate and Ecosystems(気候と生態系)
- Sustainable Georesources(持続可能な地下資源)
- Natural Hazards(自然災害)
これらの挑戦は我々が生きる惑星地球の表層のみならず、地下から表層に至る場所で起こる化学反応や物理運動、そして生物間相互作用などのダイナミクスと密接にかかわっており、時間と空間の広がりは膨大で限りなく複雑です。
ICDPがカバーする科学フィールド
>>これまでの掘削成果の例(Fact Sheet)はこちら
ICDPメンバー
メンバー国(23カ国)
オーストリア、ベルギー、カナダ、中国、チェコ、フィンランド、フランス、ドイツ、アイスランド、インド、イスラエル、イタリア、日本、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、オランダ、イギリス、アメリカ
(アルファベット順)
協力機関
シュルンベルジェ社
ICDPの組織
理事会 (Assembly of Governors; AOG):出資国の代表により構成され、ICDPの政策を決定し活動を監視する。
執行委員会 (Executive Committee; EC):メンバー各国から出される代表1名により構成され、計画全体の総括、プロポーザルの実行順位 の決定、予算の配分、および各掘削の運営・実施に当たる。
科学諮問グループ (Science Advisory Group; SAG):世界の主導的な研究者により構成され、提出されたプロジェクトを評価(ピアレビュー)し、計画委員会に送る。
技術支援グループ (OSG):プロポーザルを提出する人に技術的な助言を与えると共に、実際の掘削の管理、得られた試料・データの整理分配を行なう。
日本からの委員(2023年5月現在)
理事会(AOG) | 戸谷 玄 | 文部科学省 |
---|---|---|
執行委員会(EC) | 小野 重明 | 海洋研究開発機構 |
科学諮問グループ(SAG) | 土屋 範芳 | 東北大学 |
会議情報
最近の会議開催報告・次回の会議開催予定
SAG
日時:May, 2023
開催国:オランダ
EC & AOG
日時:May, 2023
開催国:オランダ
ICDPに科学掘削を提案するには
日本はICDPの正加盟国です。日本の大学や研究機関に在籍する人であれば、だれでも掘削プロジェクトを提案することができます。科学掘削を目指す人は、ICDPの支援を得てWSを開催し、提案の改善とプロジェクトの国際化を図り、その後、本掘削の提案をすることになります。
国内では、J-DESC陸上掘削部会がICDPナショナルオフィス(国内窓口)として機能しております。また、陸上掘削部会では掘削提案のサポートをしており、日本の提案はこれまで7割の高い採択率を誇っています。提案に求められるポイントなど、提案者のために様々な情報を提供いたしますので、お気軽に事務局までお問い合わせください。
ICDPプロポーザルの審査の流れ
科学掘削を目指す人は、ICDP の支 援を得て国際WS を開催し、提案の改善とプロジェクトの国 際化をはかり(第1 フェーズ)、その後、本掘削の提案(第 2 フェーズ)をすることになります。
すべてのプロポーザルは科学諮問グループ(SAG)により評価され、執行委員会(EC)によ り承認されます。その後、フル・プロポーザルを提出することになります。提出されたフル・プロポーザルが再度SAG・EC において評価され、AOGにて承認された場合、採択となります。採択された後、技術支援グループ(OSG)からの技術的支援・助言を受け、掘削を開始しま す。
日本発プロポーザルへの支援活動
J-DESC陸上掘削部会では、ICDPプロポーザル締切(毎年1月15日)に先駆け、国内 からの掘削提案を受け付け、これらを査読・検討することによって、より良いICDPプロポーザルとなるよう、提案者へのアドバイスを行っております。陸上 掘削部会によるチェックをご希望の方は毎年11月15日までに原稿を陸上掘削部会事務局(infoのあとに@j-desc.org)までごお送りくださ い。
皆様からのたくさんのご応募をお待ちしております。 なお、ICDPワークショッププロポーザルの提出をご検討されている方々へは、プロポーザルの作成サンプルをご提供しております。
ICDPプロポーザルに関する詳細情報>>こちら(ICDPのウェブサイトが開きます)
ICDPの掘削プロジェクトのうち、日本の研究者が関与しているものについて情報を掲載しております。
掲載すべき情報をお持ちの方は、J-DESCサポートオフィスまで情報をお寄せください。
ICDPの全プロジェクトについては、ICDP公式ウェブサイトをご覧ください。
お問い合わせ
J-DESCサポートオフィス
海洋研究開発機構内