アウトリーチ&教育プログラム

微化石コース

IODPの研究航海の成否を握る一つは、航海中に地質年代をすばやく決定することです。下船後の研究でも、微化石から高い精度で年代を決めたり古環境を明らかにするなど、微化石はIODPへ大きく貢献しています。しかし、微化石の種名を決めるのには熟練した作業が必要であり、たとえば放散虫だと1万種程度からただ一つの名前を決めることになります。実用的な微古生物学の技術を身につけるには、実際の標本を扱うのが良いのですが、指導者のいない大学などでは大変なことです。

「微化石コース」では、微化石に関心のある学生、微化石の初学者を対象に、微化石実習を行っています。このコースの特色は2点あり、複数の専門家が講師となったティーム・ティーチングと、実物標本を観察することです。教科書だけでは得難い経験を積むことができます。

2004年から毎夏に開催する2泊3日のコースです。これまで有孔虫、石灰質ナンノ化石、放散虫、珪藻、貝形虫の実習を行ってきて、一回当たり約30名の受講生が全国各地から集まりました。2008年からは分類群を一つに絞って実習を行っています。初日の午前中に、IODPと微古生物学研究の関係について講演があります。初日の午後から二日目にかけて、実物標本を観察しながら基本を習い、年代決定や環境研究に重要な種にしぼって実際に種名をつける訓練を行ったりします。3日目の午前には、受講生の希望に応じてさらに深く実習を行ったり、実習対象外だった分類群についての質問を受け付けます。質問対応のために、他の分類群の先生に待機してもらっています。3日目の昼前にすべての実習を終え、修了証明書を手渡して微化石コースは終了となります。

受講生が自分の所属機関にもどってから友達や指導教員に「○○という微化石は...なんだ」と話せるようになれば幸です。微化石コースに参加したことが契機となって、微古生物学研究者の所属する大学院へ進学する事例が毎年あることは嬉しい限りです。

2024年度 募集要項

開催概要

名称

J-DESCコアスクール微化石コース(第16回)/第19回微化石スクール

日程

2024年8月26日(月)~28日(水)

会場

国立科学博物館 筑波研究施設 (8階実験室および5階微化石研究室)

共催

日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC)/国立科学博物館 MRC(微古生物標本資料センター)

募集内容

対象

  • 微化石を研究する意欲をお持ちの学部・大学院生、または初学者
  • IODPにMicropaleontologistとして乗船を希望する方、または乗船申し込みを検討している方
  • 研究職にある方々の応募も受け付けますが、学生・若手・未経験者を優先いたします

※一定の条件を満たす学生に限り、J-DESCより旅費の一部を補助いたします。詳細は「旅費支援について」をご覧ください。

募集人数

18名

参加費

3,000円(「微化石マニュアル」購入費を含む)

※参加費には、朝倉書店「新微化石研究マニュアル」の購入代金が含まれます。既に当該書籍をお持ちであり、新規購入が不要な方は、お申し込みフォームでその旨ご連絡ください。その場合、書籍の価格を抜いた金額を参加費として申し受けます。

応募方法

本ページ最下部にある応募フォームよりお申し込みください。

申し込み締切

2024年7月26日(金)23:59

※上記締切日にかかわらず、学生(学部生・大学院生)が定員になり次第締め切ります。

応募に当たってのご留意事項

  • 学生(学部生・大学院生)以外の方については選考させていただく場合があります。
  • 宿泊について、国立科学博物館の敷地内の宿泊施設(1泊2000〜3000円程度)のご利用を希望される方は、お申し込みフォームでお知らせください。ただし、部屋数に限りがありますので、先着順とし、ご希望に添えない場合があることもご了承ください。
  • お預かりした個人情報は、J-DESCコアスクールに関するご連絡、必要な手続きにのみ使用し、漏洩等のないよう適切に取り扱います。

2024年度実施内容

題材となる微化石

放散虫化石

講義・実習の内容

大学や国立科学博物館に設置されている微古生物標本・資料センター(Micropaleontological Reference Center、略称MRC)が企画する微化石サマースクールが、J-DESCが企画するJ-DESCコアスクール・微化石コースと共同開催するようになり今回で19回目を迎えます。IODP航海では年代決定に欠かせない微化石研究者の参画が必須ですが、日本も含めて微化石を鑑定し年代決定までできる研究者は少なくなりつつあります。今回は、年代決定・環境推定において重要なツールの1つである放散虫化石を対象に、その基礎的知識から処理手法など実践的な内容までを一貫して学ぶことを目的に、スクールを開催いたします。

スクールでは、茨城大学の上栗先生および東北大学の鈴木先生に、生態や分類の基礎知識から実際の作業まで幅広く講義していただき、例えば自分でIODP試料中から堆積物を処理し、年代決定用の鑑定までを行うことのできるような技術を取得していただきます。文献試料のみの独学が困難である同定方法の学習や、同定の際の具体的なポイントの指導など、直接の作業・顕微鏡を用いた学習のできる特長もあります。また、九州大学の岡崎先生に、放散虫化石の酸素同位体比測定に関する最新の情報を講義していただきます(オンライン)。産業技術総合研究所の板木先生には、人工知能を活用した放散虫化石の自動分類・ピッキング装置について講義していただきます。技術の習得のみならず、IODPや微化石研究に携わる研究者や学生の縦横のつながりができることもこのスクールの特長ですので、本スクール対象者である学部学生にはもちろんのこと、大学院生や研究職にある方々にも実りあるスクールとなることが期待されます。

なお、本スクールは IODP への貢献に結びつけることを心がけており、乗船経験者である加藤先生にご講演を頂く予定です。

実習項目

  • コア試料の処理の実体験
  • 試料の扱い方と注意点
  • 放散虫化石の生態・分類・同定
  • 自動分類・ピッキング装置
  • 放散虫殻の化学分析
  • 統計解析の基礎

実施体制

  • 上栗伸一(茨城大学教育学部・准教授):放散虫化石の同定・基礎講座
  • 鈴木紀毅(東北大学大学院理学研究科・准教授):放散虫化石の同定・基礎講座
  • 板木拓也(産業技術総合研究所・研究グループ長):自動分類
  • 岡崎裕典(九州大学理学研究院・准教授):化学分析
  • 加藤悠爾(高知大学海洋コア国際研究所・講師)乗船体験の講演
  • 斎藤めぐみ(国立科学博物館):実習補助
  • 久保田好美(国立科学博物館):実習補助

配布物・そのほか

  • 参加費には、朝倉書店『新微化石研究マニュアル』の購入代金も含まれます。すでにお持ちの方で必要ない方は、お申し込みの際にお知らせください。
  • 参加者にはオリジナルテキスト配布
  • IODP/ODP乗船経験のある講師およびサポーター陣による船内での研究活動の相談受付

スケジュール(暫定版)

     
日程 講義内容
8月26日(月) 午後 スケジュール全体の案内
IODP講演(乗船者体験談)
堆積物中の放散虫化石の処理
8月27日(火) 午前 放散虫殻の化学分析
統計解析の基礎
放散虫化石の分類
午後 放散虫化石の分類・同定・年代決定
8月28日(水) 午前 放散虫化石の分類・同定・年代決定
自動分類とピッキング装置
午後 学習内容の総括、質問受付、閉会式

旅費支援について

J-DESC会員機関所属の学生を対象に、参加に係る旅費を補助します。

  1. 補助額:上限¥10,000/人
  2. 応募資格:所属機関がJ-DESC会員機関である大学院生
    (会員機関かどうかは指導教員へ問い合わせください)
  3. 注意事項
  • 参加申し込みのオンラインフォームに「会員機関所属学生への参加旅費の補助」を選択する欄がありますので、補助を希望する学生は「YES」を選択してください。
  • 入金は参加後となりますので、ご了承ください。
  • 補助対象の方には、参加応募締切後、J-DESC事務局よりメールにて詳細をご案内いたしますので、必要書類をご提出ください。
  • 期日までに必要書類の提出がなかった場合は、補助対象外となりますので、ご注意ください。(スクール参加資格は残ります)

応募フォーム

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