会長挨拶(2020年度定例総会)
東京大学大気海洋研究所 川幡穂高
J-DESC(日本地球掘削科学コンソーシアム)は,地球掘削科学の推進,そのための組織・研究者の連携強化を目的として,大学や研究機関をベースに,2004年に設立され,約15年が経過しました.
これまで,深海掘削国際共同計画である国際深海科学掘削計画(IODP)と国際陸上科学掘削計画(ICDP)を主軸として活動してきましたが,両者ともに,真の大型国際プロジェクトであることが特徴です.特にIODPでは,日本が地球深部探査船「ちきゅう」を掘削科学コミュニティに提供することで,世界の地球惑星科学の発展に大きく貢献してきました.一方,日本の掘削科学コミュニティもこれを支えることにより,この20年にわたり大きく飛躍できました.
地球惑星科学には,国家により莫大な資金が投入されており,学術のみならず専門知識を通じた社会へのフィードバックも期待されています.純粋な学術を扱う科学者,ますます精巧化する技術を扱うエンジニア,一般社会の人々,行政の関係者によりアピールすべき結果も異なります.今期は,それぞれに対応した魅力を発表できればと考えます.従来,研究者の内部で比較的閉じていた科学データや知見なども,「税金を投入して得られたデータ・知見は国民,さらに世界の人々が自由にアクセスできることが望ましい」とのオープンデータ・オープンサイエンスの考えを反映して,研究環境も変化してきています.
J-DESCが推進する掘削科学は地球惑星科学と密接に関係していますが,積極的な分野連携及び融合により,高いレベルの「統合的な地球科学的理解」に達することが期待されています.地質学,地球物理学,地球化学,地球微生物学など多分野の密接な協力により,掘削科学技術を介して,地球の深い理解が進み,社会的にも減災などに貢献できることを祈っています.
最後になりますが,J-DESCは全会員機関およびメンバーの協力の下に運営されてきました.皆様の声を反映させながら,隠れたニーズを掘り起こし,J-DESCがなくてはならないものとの認識に至るよう尽力したいと思います.さらなるご支援をお願できればと存じます.