Exp. 360 Indian Ridge Moho船上レポート

最終更新日:2016年2月5日
※日付は日本時間

レポートインデックス

レポート番外編(2016年1月23日)>>高知大学とJR号とのリアルタイム交信が実現!
レポートWeek 7(2016年1月18日)>>順調な掘削
レポートWeek 6(2016年1月11日)>>困難を極める掘削
レポートWeek 5(2016年1月3日)>>明けましてコア記載
レポートWeek 4(2015年12月27日)>>WOW!
レポートWeek 3(2015年12月18日)>>そして掘削へ...
レポートWeek 2(2015年12月11日)>>JR回航中
レポートWeek 1(2015年12月4日)>>南西インド洋海嶺モホへの旅

レポート番外編(2016年1月23日):高知大学とJR号とのリアルタイム交信が実現!

今回のレポートはこれまでと少し志向が違って、陸上からのレポートになります。レポートはJAMSTEC高知コア研究所主任研究員の谷川 亘氏に執筆していただきました。

谷川 亘(JAMSTEC高知コア研究所)

本日、高知大学とJR号との交信が実現しました。高知大学学部生向けの特別講義として、JRとの交信をメインとした海洋掘削科学研究の紹介を主体とした講義が行われました。場所は高知大学理学部2号館で、午後3時から始まりました。この日は大寒波の影響で高知市内においても粉雪がちらつく極寒に近い天候にもめげず、多くの学生が集まりました。

この日は朝から筆者による高知大学(J-DESC会員)の「地震と流体の災害科学」という集中講義が行われており、その授業の1コマを利用しての特別講義でもありました。高知大学理学部の橋本先生とJRに乗船しているJAMSTECの阿部さんの協力のもと、このアクションは実現しました。さらに、「高知」という土地柄を活用して、高知コアセンターで「ちきゅう」キュレーターとして第一線で活躍している(株)マリンワークジャパンの和詩賀子さんをゲストにお呼びして、「ちきゅう」船内の生の仕事現場の様子を中心に紹介していただきました。

特別講義は

  1. IODP Exp. 360の紹介(谷川/JAMSTEC高知コア研究所)
  2. IODPの概要(和/マリン・ワーク・ジャパン)
  3. 「ちきゅう」船内のおしごと紹介(和)
  4. JRからの生中継
  5. 海洋科学の研究に携わるおしごと紹介(マリン・ワーク・ジャパンを例に)(和)

という内容で進行しました。

和さんが「ちきゅう」船内のラボを紹介している途中でJRから信号が送られてきて、そこからJRとの交信が始まりました。Skypeのようなシステムを用いてネットワーク回線でライブ中継する方法で、ウェブでPCモニターをスクリーンに映して交信を行いました。

接続してモニターに現れたのはJAMSTECの阿部さんと金沢大学の森下教授。乗船前にこの二人と会う機会がありましたが、二人とも乗船前と変わらず元気そうです(阿部さんは少しやせたかしら?)。まず何よりも驚いたのはJRから届いた映像と音声の質のよさ。ZOOMという音声映像システム(たぶんhttps://zoom.us/だと思います)を利用しているようです。阿部さんが船上レポーターでスタッフがカメラマンとなり二人三脚で、コアフローを意識した流れでJR船内をめまぐるしく歩き回りコア分析の作業工程を紹介していきました。ところどころ分析途中の研究者に突撃インタビューを行って、どのような作業を行っているのか説明していただきました。航海の最終段階で船上は非常にピリピリしていると思ったのですが、どの研究者も穏やかで好意的にインタビューに応じてくれたのが、研究者の懐の大きさを感じたものでした。船内の分析機器でちきゅうとJRとの違いも説明していただいたのですが、JRではコア試料表面のデジタル画像を撮影しているというのがひとつ特長として挙げられるでしょう。一通りインタビューが終わっての質問コーナーへ。高知大学の学生はシャイなので(田舎の学生につきもの?)バンバン積極的に質問が出ることはなかったのが少し残念なところではありましたが…。さて、学生からの「釣りはできますか?」という質問に対して、「できません・・・昔はJRでも釣りはできたみたいだけど…というか、そもそもこの海域に魚がいない」という阿部さんの回答

「ちきゅう」キュレーションをしている和さんからは「アクシデントで今航海にキュレーターが乗船していないということを聞いたのですが大丈夫ですか」という現場を熟知している人ならではのキラークエスチョンに対して「他のスタッフさんが協力してなんとかやりくりしている」という驚愕の答え。「ちきゅう」船内でも同じような状況が起きても、おそらく和さんをはじめとしたプロフェッショナルが冷静に対応してくれるのでしょう。

あっという間の45分間。本当に近くにJRと阿部さんがいるようなビビッドなやり取りに学生たちも口をあんぐりあけて興奮しっぱなしでした。このような機会をどんどん増やして海洋掘削研究に興味・関心をもってくれる若い芽がぐんぐん育ってくれると良いと思った特別講義でした。

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特別授業の様子。マリンワークジャパンの和さんの熱のこもった「ちきゅう」船内の作業の紹介。

JRとの交信の様子

JRとの交信の様子

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レポートWeek 7(2016年1月18日):順調な掘削

阿部なつ江(JAMSTEC/Physical Properties Specialist)

横浜は昨日雪が積もったようですが、皆様、いかがお過ごしでしょうか?こちらも、日が陰ってから船外に出ると、夏とは思えない寒さです。(南緯32度42分)JR船上から、week 7 reportをお送りいたします。

1月12日、マグネットによるフィッシングで、磨り減ったビットコーン1つが回収されました(写真1)。ここ数本回収率0%が続いたのは、そのビットコーンが、ちょうどドリルビットの真ん中を塞いでいたようです。この後、コアリングを一旦停止し、トライコーン・ビットと呼ばれるドリルビットで、孔をただただ掘っていく(ドリルアウト)を開始しました。37m掘り飛ばしたところで、掘削速度が毎時1〜2mほどに落ちたため、どうやら断層帯は抜けたようです。安定して掘れているので、またコアリングを再開しました。

写真1.回収されたビットコーンを誇らしげに持つヘンリー・ディック先生と、それを奪い取ろうとするクリス・マックレオード先生。

写真1.回収されたビットコーンを誇らしげに持つヘンリー・ディック先生と、それを奪い取ろうとするクリス・マックレオード先生。

再開後のコア回収率は、平均97%を記録!毎回毎回、9.6〜10mを越す量のコア(はんれい岩)が上がってきます。はんれい岩は密度が1立方cmあたり2.9gと思いため、コアの1セクション(1.5m)いっぱいに詰まっていると、最高で9kgに達します。計測のためにコアを持ち運ぶのが一苦労。良い筋トレ(?)だと思って頑張っています(写真2)。それから順調にコアリングが進み、1月15日の21:00、Core 64のインターバルで、ついに海底下600mに到達。海洋地殻だけの掘削では、歴代5位の深さになりました(パチパチパチ)。

写真2.Exp. 360の乗船研究者30名とアウトリーチスタッフ4名のグループ写真。14のIODP加盟国、17の国々から集まっていて、国際色豊かです。

写真2.Exp. 360の乗船研究者30名とアウトリーチスタッフ4名のグループ写真。14のIODP加盟国、17の国々から集まっていて、国際色豊かです。

7週目の避難訓練の後、グループ写真撮影を行いました(写真2、3)。航海も残り2週間あまりとなり、ミーティングでは、これから航海終了までの間にやること、スケジュールなどについての説明がありました。長いと思っていた航海ですが、終わりが見えてくると少し寂しい気もします。この航海では、周囲に魚や鳥などの生物がほとんどいなくて、それもまた寂しい感じです。ここ数日、大アホウドリが二羽、JRの周りを飛んでいたり、水面に浮かんで、船から放出される食べ残しの食料をつまんだりしています(写真4)

写真3.J-DESCから派遣されている4名。左から、野坂敏夫先生(岡山大学)、阿部なつ江(JAMSTEC)、森下智晃先生(金沢大学)、アレッシオ・サンフィリッポ博士(金沢大学&パヴィア大学).

写真3.J-DESCから派遣されている4名。左から、野坂敏夫先生(岡山大学)、阿部なつ江(JAMSTEC)、森下知晃先生(金沢大学)、アレッシオ・サンフィリッポ博士(金沢大学&パヴィア大学).

写真4.大アホウドリが2羽、戯れているところ。

写真4.大アホウドリが2羽、戯れているところ。

・・・と、感傷に浸っている余裕もなく、次から次へとコアが上がってきます。Core 64から66までは、Recovery 95%以上を記録!1月17日の夜から悪天候が予想されたため、早めにCore 71を回収しビット交換を開始。Core 67-71までは、なんとコア回収率91-121%!時々、パイプがスタックするなど、ヒヤヒヤする場面もありますが、ほぼ順調に掘削が進んでいます。この調子なら、海底下900mまでは掘れそうだとのことです。

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レポートWeek 6(2016年1月11日):困難を極める掘削

阿部なつ江(JAMSTEC/Physical Properties Specialist)

三連休明けの日本、皆様いかがお過ごしでしょうか?

JOIDES船上から、第6週のレポートをお送りいたします。今週も、JRでは毎日いろんなことが起こりました。

無事に急患を搬送して、JRは、1月5日に掘削サイト(Site U1473)に戻り、掘削オペレーションを再開しました。まずは孔の掃除とビットの回収から。マグネットを使ってのビット回収がうまくいかなかったため、「ジャンクバスケット」と呼んでいる金属のバケツを何個かつなげたようなツールでの回収に切り替えてみました。そのジャンクバスケットを引き上げてみると、断層岩の破片が多数とともに金属片が少し入っていて、でもドリルのビットコーンは見つかりませんでした。その後何度かジャンクバスケットでの掃除を繰り返し、9回目の掃除で、こぶし大のガブロ片2つを採取。さらに、10回目の掃除では、ドリルパイプの先端に付いている巨大なコアキャッチャーのようなところに、なんと直径18 cm、長さ20cm程度の“コア(!?)”(写真1)が詰まっていました。ドリルビット無しの状態でパイプ先端が孔の底を掘っていたようです。これには、研究者だけでなく、長い掘削経験を持つJRのスタッフもびっくりポン!

写真1.直径18cmの”コア”と、コチーフ2人(右、ヘンリー・ディック先生;左、クリス・マックレオード先生)

写真1.直径18cmの”コア”と、コチーフ2人(右、ヘンリー・ディック先生;左、クリス・マックレオード先生)

結局、脱落した未回収のビットコーン2つは、見つかりませんでした。ただ孔壁の状態は今の所良いとのことで、オペレーション監督のスティーブの言葉を借りれば「As smooth as baby’s bottom(赤ちゃんのお尻のように滑らか)」だそうです。なので、新しいドリルビットでコアリングを再開することになりました。コアリング再開後は、掘削速度がとても速く(~8.5m/時間)、2~3時間に1本の間隔でコアが回収されてきました。どうやら断層帯を掘っているようで、コアは小さいピースばかり。コアリングを続けていても、孔壁は不安定なままです。Core 52Rまで採取した後、またビットコーン1個が脱落したことがわかり、フィッシングを始めましたが、マグネットを使っての回収には失敗。ジャンクバスケットを下ろし、午後に無事に回収され、コアリングを再開。

1月11日、再開したあとの4回(計約20m掘削)のコアリングでは、掘削で孔は掘れているのだけれど、いずれも回収率は0%。何かがおかしいぞ?ということで、パイプを引き上げて先端を確認したところ、幸いビットコーンは全てくっついていたものの、ドリルビットの損傷がが激しく、どうやら孔底で金属と接触しているらしいと判断。そのため、再度マグネットを使って金属のフィッシングを開始しました。

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レポートWeek 5(2016年1月3日):明けましてコア記載

阿部なつ江(JAMSTEC/Physical Properties Specialist)

新年明けましておめでとうございます。

JR船上から、Exp. 360の5週目のレポートをお送りいたします。

年末年始に、JR号では実に様々な事態が発生し、目まぐるしい年越しとなりました。

12月29日、順調に掘削が進み、海底下400mに到達しました。Core 43Rは、回収率95%を記録!

しかし、翌日になって掘削データに異常が見られたため、パイプを引き上げ、ドリルビットを見てみると、3つのビットコーンが脱落していることが発覚(写真1)!孔の中に硬いビット(金属)が落ちていては、掘削を進めることができません。そこで、今度はドリルビットの代わりに、パイプの先端に磁石をつけておろし、その磁石で金属を孔から回収(フィッシング)することにしました。

そしてその日の夕方、今度は船内に急患発生!その急患を陸上の病院に届ける(Medical evacuation)のため、急遽モーリシャスからヘリコプターが飛んで来られる場所まで向かうことになりました。夜遅くに、ビットコーン3つのうちの1つ(写真2)が孔から回収されましたが、残り2つはまだ孔の中。それらは急患を無事にモーリシャスに送り届けてから、また掘削サイトに戻り次第、再度回収を試みることになりました。

写真1.回収されたドリルビット。本来は4個ついていなければいけないビット・コーンが、1個しかついていない。

写真1.回収されたドリルビット。本来は4個ついていなければいけないビット・コーンが、1個しかついていない。

写真2.孔の底から回収されたビットコーン。

写真2.孔の底から回収されたビットコーン。

年末年始の5日間は、モーリシャス付近までの片道約1000kmを往復しました。しかし走り出してすぐに、モーリシャス付近に強い低気圧が発生して、次第に船体の揺れが激しくなり、船速もあまり出なくなってきました。無事に急患を送り届けることができるのでしょうか?皆心配で仕方ありませんでしたが、心配しても船が進まないことにはどうしようもありません。この間、これまで採取したコア(Core 44Rまで)の記載・計測を黙々と続けていました。

大晦日には、夜10時から年越しパーティーが行われ、カントダウンと同時に、前甲板において、今航最高齢のProf. Jim Natlandによる新年の鐘が鳴らされました。回航中で揺れも激しく、盛大な行事はできませんでしたが、新年を無事迎えることができました。

年が明けて元旦も、コアの記載・計測、薄片記載を継続していました。それと並行して、ラボでは、乗船後研究の個人試料を分配する“サンプリング・パーティー”を開始しました。各自サンプリングした場所に、イニシャルの描かれたステッカーを貼っていきます(写真3、4)。貼った箇所を、コチーフとスタッフサイエンティスト、キュレーターで構成される“サンプル・アロケーション・コミッティー(SAC)”がチェックし、コンフリクト(競合)がないか確認して、コンフリクトがある箇所は、話し合いで解決して、そして個々人が持ち帰るサンプルの箇所・数・大きさなどを決めていきました。今回は、特に大きな混乱はなかったけれど、ハードロック航海の場合、コア回収率が低いことがあり、そんな場合は激しいバトル(?)が繰り広げられます。自分がやりたい研究を、しかもそれがこの航海の目的にとってどれだけ重要であるか、それを自分ができること、などを(英語で)説明して相手を説得する必要があります。いろんな意味で鍛えられる瞬間です。

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写真3、4 乗船後研究に使う個人の試料を選び、イニシャルの書かれたステッカーを貼られたコア。

1月2日の17:00 モーリシャスからヘリが到着し、無事に患者を搬送することができました(写真5)。患者さんは無事にモーリシャスの病院で診察を受け、適切な処置を受けて回復に向かっているとのこと。オペレーションを一旦切り上げて、迅速に搬送するという判断をしたことは正しかったようです。

写真5.急患搬送のためにモーリシャスから飛んできたヘリコプター

写真5.急患搬送のためにモーリシャスから飛んできたヘリコプター

そして、大量のコアから、ラボのテクニシャンの人たちが、24時間で、すべての試料をカットしてくれて、あっという間にコアが片付けられていきました。

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レポートWeek 4(2015年12月27日):WOW!

阿部なつ江(JAMSTEC/Physical Properties Specialist)

年の瀬も迫ってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

JR号船上から、Week 4 reportをお送りいたします。

12月22日、コアリング開始から40時間使ったドリルビットを交換しました。掘削孔の中は、岩石屑などがほとんどなく、非常にクリアな状態だったそうです。順調に掘削が進み、12日には、あっという間に海底下100mに達しました。ラボでは順調に記載・計測を行っています(写真1)。

写真1.ヘンリー・ディック先生が、コアラボで記載をしている人たちのところに現れて、ひとしきり色々な教え(?)を説いてくれているところ。

写真1.ヘンリー・ディック先生が、コアラボで記載をしている人たちのところに現れて、ひとしきり色々な教え(?)を説いてくれているところ。

12月24日には、2回目のドリルビット交換を行いました。その後、次々コアが回収されたのですが、あいにく海が荒れてきて(うねりが大きくなった)、一旦コアリングをやめてドリルパイプを引き上げ、天候回復を待ちました。ホワイトボードには、「〜〜〜WOW〜〜〜」と書かれています。「ワオ!」ってなんだろう?と思って、テクニシャンに聞いてみたら、「Wait on weatherのことだよ」と教えてくれました。

そして12月25日クリスマスの日、WOWのおかげでしばらくコアが上がってこなかったため、これまで取れたコアの記載・計測が落ち着いて、クリスマスのスペシャルランチ(寿司あり、ケーキあり)を楽しみました(写真2)。そして昼食後、2時間ほどクリスマスパーティーを行いました。船長の挨拶から始まり、合唱隊や、マンドリン演奏、サンタクロースが登場してプレゼントを配ってくれたり、各専門グループなどが寸劇(写真3)や歌を披露したりと、思いっきり笑って楽しみました。午前中に、クリスマス聖歌隊は、船内の各所を巡って聖歌を披露しました(写真4)。クリスマス・パーティーの後は、あっという間にまた船上での仕事に戻ります。ぱっと切り替えて(?写真5)仕事に戻る様は、見ていて気持ちがいいです。また、テクニシャンの皆さん(写真6)が、パーティーの準備(飾り付けや、進行表、映像撮影など)を空き時間やシフト時間外にボランティアで行ってくれて、我々乗船研究者は思い切り楽しむことができました。

写真2.クリスマス・ランチの豪華な飾り付け。白い魚などの彫刻は、バターでできています。

写真2.クリスマス・ランチの豪華な飾り付け。白い魚などの彫刻は、バターでできています。

写真3.クリスマスパーティーでの寸劇の一コマ

写真3.クリスマスパーティーでの寸劇の一コマ

写真4.クリスマス聖歌隊が船橋へ行って、船長の前で聖歌を披露しているところ。

写真4.クリスマス聖歌隊が船橋へ行って、船長の前で聖歌を披露しているところ。

写真5.クリスマスデーのコチーフ(クリス・マックレオード先生:英カーディフ大学).

写真5.クリスマスデーのコチーフ(クリス・マックレオード先生:英カーディフ大学).

写真6.クリスマスパーティーの準備を頑張ってくれたテクニシャン(アダム・ボーガスさん).

写真6.クリスマスパーティーの準備を頑張ってくれたテクニシャン(アダム・ボーガスさん).

そして掘削は順調に進み、12月27日には、孔の深さは海底下300mを超えました。コアの回収率も80%近くまで達し、ますます記載・計測が忙しくなってきました。

毎週日曜日はBBQ LunchをDeckで楽しんでいます。毎週土曜日と日曜日のDinnerには、スペシャルデザート(Chocolate fondu cakeと、Apple crumble)が出ます。忙しい作業の合間にホッとするひとときです。

では、皆様どうぞ良いお年をお迎えください。

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レポートWeek 3(2015年12月18日):そして掘削へ...

阿部なつ江(JAMSTEC/Physical Properties Specialist)

先週から引き続き、掘削サイトに向けて回航していました。途中大きな低気圧を避けて、航路をやや西にずらしたため、掘削サイト到着は予定より少し遅れましたが、ほぼ予定取り12月16日(水)中に到着しました。

その後海底カメラ(写真1)を下ろして、掘削する地点を選び、その後掘削オペレーションを開始しました。12月17日早朝に、いよいよ掘削を開始!今回は、1000mを超える深い孔を掘る予定なので、ドリルパイプの先端に付いているドリルビットを何度も交換する予定です。そのため、最初海底から20mほど掘削した後、リエントリーシステム(Free fall funnel:写真2)という漏斗のような物を海底に設置しました。設置といっても、ドリルパイプの周りを這わせて自由落下させるだけです。そして掘った孔に突き刺すのですが、これがうまく刺さっていなかったのですが、安定して立っていたので、そのままコアリングを開始することになりました。最初の9.5m(1R)は掘り飛ばし、その後からコアを採取しはじめました。

写真1.海底カメラをムーンプールから降ろすところ。

写真1.海底カメラをムーンプールから降ろすところ。

写真2.リエントリーシステム(Free fall funnel)を組み立て、これから自由落下させようとしているところ。

写真2.リエントリーシステム(Free fall funnel)を組み立て、これから自由落下させようとしているところ。

12月20日から順調にコアが上がってきて、海底下70m付近までのおよそ25m分のコアの記載が始まりました。それと同時に、回航中に記載・計測していたコアのレポートをまとめなくてはならず、いきなり忙しい日々が始まりました。この日は、船外でのBBQランチを楽しみました(写真3)。回航中は風も強く外でのBBQはできません。なので、これが初めてのBBQでした。そして25日のクリスマスの準備が始まっています。25日の午後にパーティーが行われる予定で、それにむけて休憩時間に出し物(もっぱら歌や楽器演奏)を練習したりして、長い船上生活の間の憩いの時間を楽しんでいます。

写真3.今航海初の日曜BBQランチ。天気が良くてとても気持ちよかったです。左から、アレッシオ・サンフィリッポさん(J-DESCメンバー、金沢大学&イタリア・パヴィア大学)、ヘンリー・ディック先生(ウッズホール海洋研究所)、ブノワ・イルデフォンさん(仏モンペリエ大学)、森下智晃先生(金沢大学)。

写真3.今航海初の日曜BBQランチ。天気が良くてとても気持ちよかったです。左から、アレッシオ・サンフィリッポさん(J-DESCメンバー、金沢大学&イタリア・パヴィア大学)、ヘンリー・ディック先生(ウッズホール海洋研究所)、ブノワ・イルデフォンさん(仏モンペリエ大学)、森下知晃先生(金沢大学)。

Outreach & Educationの役割で乗船している4名のおかげで、世界各国へのインターネット中継が連日行われています。iPadカメラを持ったスタッフがラボを巡回し、そこで作業している研究者がカメラに向かって簡単な説明をしたり、配信先の学生や子供たちの質問に答えたりしています。

12月17日(水)の朝には、サンフランシスコで行われていたAGU Fall MeetingのIODP Town Hall Meeting(現地時間112月16日19:00)への中継も行われました(写真4)。

写真4.AGU Fall MeetingでのIODP Town Hall Meetingへ中継している様子。

写真4.AGU Fall MeetingでのIODP Town Hall Meetingへ中継している様子。

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レポートWeek 2(2015年12月11日):JR回航中

阿部なつ江(JAMSTEC/Physical Properties Specialist)

現在掘削サイト(U1473:proposed site AtBk-6)に向けて回航中です。ここ数日、サイクロン崩れの大きな熱帯低気圧と共に移動していたため、船は激しく揺れていて、JR号にしては珍しく、いろいろな物を固定(固縛)するよう船長から指示が出ました。

その間船上ラボでは、この海域で過去に掘削したコア(ODP Leg 118, 176, 179のHole 735Bと1105A)のアーカイブハーフの記載と計測を行いました。新しく上がってくる掘削コアの記載や計測になれる為、そして2km弱ずつ離れた3つの掘削サイトにおけるコアの比較を行うことが目的です。特にLeg 179(Hole 1105A)は、船上のほとんどの人が初めて見るコアでした。ODP Leg 118は、1985年に実施された航海なので、採取してから30年も経っているのですが、昨日取れたかのような真新しさを感じました。これらのコアは、全て高知コアセンター(KCC)に保管されていたものです。

掘削が開始されるまでの間、毎日何回もミーティングを行って、IODPコア記載の規定や、ハードロック(深成岩)航海独特の記載・計測方法の確認をしたり、航海終盤に実施するWire line loggingについて、計測目的と、計測項目&ツールを確認したりしました(写真1、船上セミナーの様子)。

写真1.船上セミナー。コチーフでこの航海の主提案者であるヘンリー・ディック先生(ウッズホール海洋研究所)が、航海の趣旨を説明している様子。

写真1.船上セミナー。コチーフでこの航海の主提案者であるヘンリー・ディック先生(ウッズホール海洋研究所)が、航海の趣旨を説明している様子。

また、船内ツアーが開催され、リグフロアー(掘削フロア)や、船橋(注意:「ふなばし」ではなく、「せんきょう」と読みます)、エンジンルームなどで、どうやって船を動かしているのか、オペレーションの様子などの説明をしてもらいました(写真2)。

写真2.オペレーション管理者の、スティーブ・ミドグレイ氏が、船橋にある装置を説明している様子。

写真2.オペレーション管理者の、スティーブ・ミドグレイ氏が、船橋にある装置を説明している様子。

 今回の航海は、スリランカのコロンボを出港し、赤道を越えて南半球で掘削を行います。回航中に短い時間(1時間半)で簡単でしたが、赤道祭を行いました。

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レポート(2015年12月4日):南西インド洋海嶺モホへの旅

阿部なつ江(JAMSTEC/Physical Properties Specialist)

皆さん、こんにちは!JAMSTECの阿部なつ江です。

JOIDES Resolution号(以下、JR号)は、12月5日(土)21時に、スリランカのコロンボを出発しました。これから南西インド洋海嶺に位置するAtlantis Bank(アトランティス・バンク)と呼ばれる海底の高まりにある掘削サイトまで10日間航行します。掘削サイトに到着したら、海況が許す限り、一つの掘削孔を出来るだけ深く、海底下1300mまでを目標に掘削する予定です。乗船研究者は全部で30人。J-DESCからの乗船者は、岡山大学の野坂俊夫先生、金沢大学の森下知晃先生、それから金沢大学ポスドクのアレッシオ・サンフィリッポさん(Alessio Sanfilippo)の4名です。

実は乗船者は、12月1日(火)の朝には既にJR号に乗船していたのですが、2ヶ月間の航海に必要な食料や、資材などを積み込むのに5日間を要したため、ずっと港に停泊していました。その間研究者は、毎日沢山のミーティングをしていました。実は私は、JR号に乗船するのはこれで6回目なのですが、こんなに出港前にミーティングやら準備を沢山したのは初めてです。船上の分析機器や、岩石コアの記載事項などが年々増えてきて、船上や下船後に各自が研究室でやることがドンドン増えて幅が広がっている気がします。そのため、準備も入念に行うという事なのかも知れません。なので、コロンボの街に出掛ける時間もあまりなく、2ヶ月間の航海に必要な消耗品などがちゃんとそろっていたか、ちょっと不安になっています。。。航海中に飲むために買おうと思っていたスリランカの紅茶を手に入れられなかったのが心残りです。

南西インド洋海嶺は、中央海嶺拡大軸の両側に年間14mmずつ広がっており、拡大スピード(海洋プレートが生産される率)が非常に遅い「超低速拡大海嶺」と定義されています。年間100mm程の拡大速度である太平洋プレートとは異なり、海洋プレートの構造が複雑であることが予想されています。高速拡大プレートにおけるきれいな成層構造を持たない場所が多く、Atlantis Bankでは、通常海底下2~3kmにあるはずの海洋下部地殻に相当する「はんれい岩」が海底に露出していることが分かっています。なぜ下部地殻が海底に露出しているかって?それはこの航海の研究テーマの一つなので、今は分かりません。諸説ありますが、航海の成果を楽しみにしていて下さい。

そして、今回の掘削孔はそのままキープして、ゆくゆくは海底下3kmまで掘り進める予定です。3km掘ると、この場所のモホロビチッチ地震波速度不連続面(モホ面:地殻-マントル境界)を掘り抜いて、その下のマントル層に到達する予定です。太平洋で計画されている「マントル掘削 (M2M: Moho to Mantle)」とは違ったモホ面の地質を見られるのではないかと予想しています。

航海は始まったばかり。これから8週間の南西インド洋海嶺モホへの旅をレポートします。お楽しみに!

After 5 days port call in Colombo, Sri Lanka, we finally for our drilling site in the late night of December 5, 2015. We have very long transit. It takes 10 days to get the site.

The target depth is 1300 mbsf, but as deep as possible to go because our next target is to get a Mohorovicichi seismic discontinuity, Moho, in the ultra-slow spreading ridge around 3 kmbsf. In order to get there soon, we want to deepen our hole as much as possible.

We already had a lot of meetings, meetings, meeting everyday on-board before our expedition started. Honestly, this is my 6th JR cruise and I feel we have the more things to do on-board year by year.

We are hoping to come back to the site later, possibly with D/V Chikyu, and deepen the hole to drill through Slow-spreading Moho in the future. Anyway, our expedition to the “SW Indian Ridge Lower Crust and Moho” has just started. Stay tuned!

写真1.コロンボ港停泊中のJOIDES Resolution (JR)号に乗船する直前の阿部 Fig. 1. Natsue Abe just before getting aboard on JOIDES Resolution (JR)

写真1.コロンボ港停泊中のJOIDES Resolution (JR)号に乗船する直前の阿部
Fig. 1. Natsue Abe just before getting aboard on JOIDES Resolution (JR)

写真2.出港直前の船から見えたコロンボの街 Fig. 2. A view of City Colombo from JR

写真2.出港直前の船から見えたコロンボの街
Fig. 2. A view of City Colombo from JR

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