Exp. 356 Indonesian Throughflow船上レポート

最終更新日:2015年9月14日
※日付は日本時間

レポートインデックス

レポート1(2015年8月6日)>>Exp. 356航海開始!
レポート2(2015年8月7日)>>船上堆積学者の仕事
レポート3(2015年8月27日)>>船上生活―余暇の過ごし方―
レポート4(2015年8月31日)>>My First Expedition
レポート5(2015年9月7日)>>乗船後1ヶ月が経ちました
レポート6(2015年9月14日)>>「WEEK6 blue」(6週間目の憂鬱・・・?!)

レポート6(2015年9月14日)「WEEK6 blue」(6週間目の憂鬱・・・?!)

高柳栄子(東北大学/Inorganic geochemist)

こんにちは.東北大学の高柳栄子です.

IODP Exp. 356のInorganic geochemistとして乗船しています.

8月初旬にFremantleを出航してから早くも6週間が経とうとしています.私自身は,研究面でも生活面でも周囲から多くの刺激を受け,とても充実した日々を送っています.このレポートを通じて,船上での様子を少しでも多く読者の皆さんに伝えられたら幸いです.

Inorganic geochemistの主な仕事は,堆積物に含まれる間隙水(interstitial water)を絞り出し,その化学組成を分析することです(写真1,2).JOIDES Resolution号の化学実験室には様々な実験機器が備わっており,船上で一連の基礎データ(pH,塩分,アルカリ度,元素濃度など)を得ることができます.これらのデータは,堆積物—間隙水での化学反応,ならびに海底での生物活動や物質循環などを明らかにする際に有用です.

写真1:間隙水絞り出し機

写真2:pHおよびアルカリ度を測定する機器

「WEEK6 blue」という言葉があるように,この「6週目」という期間は,乗船者が憂鬱な気分になりがちなようです.そんなブルーな気持ちを追い払うため,航海の後半には多くの楽しいイベントが企画されています.先日(9月11日)は,晴天の下,「Feats of Strength」という名のチーム対抗戦がHelideckで開催され,4つのゲーム(Dr. Cup-hands,Cookie Face,Egg-on-a-Spoon Race,Cottonball Race)を4チームで競い合いました(写真3).「どんなゲームなのか?」は名前から想像してみてください.優勝賞品の「Golden Tim-Tam(ティム・タム:オーストラリアで有名なチョコレート菓子)」を獲得するため,皆が競技に燃え,そして,たくさん笑いました.こういった気分転換は,その後の作業効率を格段に上げます.ちなみに,優勝チームは石輪君を含む「チームThe Hannanigans」でした!

船上で長らく生活していると,あらゆる場面で様々な疑問が湧いてきます(例えば,電気,水,インターネットなど).航海の半ばには,船内の巡回ツアーがあり,普段はみられない船内のシステム(エンジン・室内操作室,操縦室など)を見学しながらスタッフの説明を聞きました(写真4).掘削の際,船が移動できる許容範囲は「掘削地点の水深に対して最大10%」なのだそうです.この航海では比較的浅い海域(多くが水深100 m以浅)をターゲットとしていることを考えると,許容範囲は数メートル・・・船の位置を調整するシステムの精密さと操縦士さん達の腕前に感服せずにはいられませんでした.

写真3: Dr. Cup Hands開始前の様子

写真3: Dr. Cup Hands開始前の様子

写真:操縦室

写真4:操縦室

残りの日々も精一杯楽しみたいと思います!

レポート5(2015年9月7日)乗船後1ヶ月が経ちました

石輪健樹(東京大学博士課程/Physical Properties Specialist )

こんにちは!
IODP Expedition 356に参加している東京大学博士課程の石輪です.今現在,JOIDES Resolutionに乗船中ですが,7月末から始まったこのExpeditionも半分が過ぎたところです.
私はPhysical Properties Specialist ととして乗船してますので,今回は簡単にですが私の役割も含めて,船上での研究・生活を紹介したいと思います.

356_5_1

写真1 夜の掘削の様子.IODPでは休むことなく24時間体制で掘削が行われます.

写真2 左がWhole Round Multisensor Logger,右がSpecial Task Multisensor Logger.

写真2
左がWhole Round Multisensor Logger,右がSpecial Task Multisensor Logger.

Physical Properties Specialist は,コアの密度をはじめとする物性を測定するのが役割になっています.このデータは主に船上ではコア間の対比などに用いられます.基本的に全てのコアはこの機械によって物性などが測定されます.写真2の装置をはじめとする測定を終えた後,コアは半割され,sedimentologistの元へと運ばれ,記載などが行われます.上で紹介した測定も含め,Physical Propertiesは船上で多くの測定を行いますが,他の測定に関しては後の船上レポートでご紹介します.船上では複数の研究グループがあるのですが,互いに協力し合いながら研究を進めています.

356_5_3

写真3 船上から見る夕日.

雨に降られることが少なく,また,夕飯の時間が日が落ちる時間と重なるため,外で夕日を見ながら夕飯をとることが日課になってます.

それではまた.

レポート4(2015年8月31日)My first Expedition

Resti Samyati Jatiningrum(Akita University/paleontologist)

Konichiwa! I am Resti, first year doctoral student from Akita University.
I work as a paleontologist (nannofossil) on IODP EXP 356 (night shift, 00:00 to 12:00).
This is my first time to participate in IODP expedition.
It was very hard at the beginning to adjust myself with the workflow. However after the first few weeks, I was more comfortable with the workflow. My duty on this expedition is to provide biostratigraphic framework based on calcareous nannofossil from each site which forms the basis for other stratigraphic correlation. Here, we use Zeiss Axioscope and analyzed the sample under polarized light using oil immersion under a magnification of 1000X (Figure 1). Sometimes for additional observations we use the TM 3000 scanning electron microscope (SEM) (Figure 2).

Figure 1. Zeiss Axioscope and its name is “grape”.

Figure 2. TM 3000 scanning electron microscope (SEM) at the corner of Paleo Lab.

Speaking of break time, I can enjoy sunrise half way of my duty time every day (Figure 3). We also went to helideck after lunch to enjoy the sun and the breeze (Figure 4). Sometimes we catch glimpses of various sea creatures (e.g sea-snake, jellyfish, whale; Figure 5).

Figure 3. Beautiful sunrise at Site U1461 (NWS-4A), northern part of NWS Australia.

Figure 4. Exploring the helideck with Hokuto (sedimentologist) and Soma (paleontologist, planktionic foraminifera).

Figure 5. Sea creatures (photo credit: EXP356 participants).

 

レポート3(2015年8月27日)船上生活―余暇の過ごし方―

岩谷北斗(香港大学・島根大学協力研究員/Sedimentologist)

ジョイデス号から、こんにちは
香港大学ポスドクの岩谷です。

乗船から早くも3週間がたち、船上での研究や生活にも、だいぶ慣れてきました。
その反面、皆すこし疲れがたまってきている頃合いなのかもしれません。
そこで、今回は乗船している研究者たちの余暇の過ごし方や普段の生活を紹介したいと思います。

356_3_1

1. 毎日の食事はとても豪華です。パンやケーキなども船内で焼かれているそうです。 ジョイデス号では、日曜日にきまって甲板でBBQがおこなわれます。私は、シフトの都合でまだ一度しか参加できていませんが、調理スタッフのみなさんに焼 いていただく、至れり尽くせりなものでした。

写真2 普段の食事でも、天気が良い日などは、皆よく甲板で食事をとっています。 現在の掘削サイトの海域は、クジラが多く生息しているらしく、潮を吹く姿や海面から飛び上る様子を食事をとりながら、ときおり眺めることができます。

2. 普段の食事でも、天気が良い日などは、皆よく甲板で食事をとっています。現在の掘削サイトの海域は、クジラが多く生息しているらしく、潮を吹く姿や海面から飛び上る様子を食事をとりながら、ときおり眺めることができます。

写真3 ジョイデス号には、充実した研究設備があることは言うまでもありませんが、ポップコーンマシーンのあるシアタールームや、フィットネス施設も備わっています。といっても、私はシフトが終わるとベットに直行することが多いので、まだ利用したことがありません…。

3. ジョイデス号には、充実した研究設備があることは言うまでもありませんが、ポップコーンマシーンのあるシアタールームや、フィットネス施設も備わっています。といっても、私はシフトが終わるとベットに直行することが多いので、まだ利用したことがありません…。

写真4 掘削やぐらで作業するスタッフをヘリポートから眺める古生物学者たち。 大きな船なので、船内を散策をしていると未だに迷子になることがあります。

4. 掘削やぐらで作業するスタッフをヘリポートから眺める古生物学者たち。
大きな船なので、船内を散策をしていると未だに迷子になることがあります。

写真5 (おそらく)防火や浸水を防ぐために細かく区切られ、さながら迷路のような船内ですが、 避難訓練が毎週必ずおこなわれるため、研究室と避難経路だけは頭に入りました。自分の部屋は、まだ間違えることがあります。

5. (おそらく)防火や浸水を防ぐために細かく区切られ、さながら迷路のような船内ですが、避難訓練が毎週必ずおこなわれるため、研究室と避難経路だけは頭に入りました。自分の部屋は、まだ間違えることがあります。

とりとめのない報告になってしまいましたが。

最後に
私の所属するチームは、素晴らしい研究者たちに恵まれ、日々勉強になることが多くとても和気あいあいとした雰囲気で、経験の少ない私を助けてくれており、楽しく(8月26日時点)船上での研究生活をおくることができています。

それではまた

このページのトップへ

レポート2(2015年8月7日)船上堆積学者の仕事

岩谷北斗(香港大学・島根大学協力研究員/Sedimentologist)

ジョイデス号から、こんにちは
香港大学ポスドクの岩谷です。

私は、堆積学者としてExp.356に参加しており、掘削されたコアを記載することが船上でのおもな仕事です。
コアの岩相や堆積構造、含まれている化石などを記載することは、コアを扱うすべての研究の基礎となる非常に重要な仕事です。
そこで、今回はジョイデス号に乗船している堆積学者の研究の様子を簡単に紹介したいと思います。

海底から引き揚げられたコアは、取り扱いやすい長さに切り分けられたのち、研究室へと運ばれてきます。 研究室に運ばれたコアは、研究に使用する試料と、保管しておく試料とに分けるため、さらに縦に半割されます。 ここまでの作業は高度な技術を必要とするために、ともに乗船している技術者によりおこなわれます。 また、その他の研究業務や船上での生活も同様に、様々な分野の技術者や乗組員のみなさんにより支えられています。

1. 海底から引き揚げられたコアは、取り扱いやすい長さに切り分けられたのち、研究室へと運ばれてきます。
研究室に運ばれたコアは、研究に使用する試料と、保管しておく試料とに分けるため、さらに縦に半割されます。
ここまでの作業は高度な技術を必要とするために、ともに乗船している技術者によりおこなわれます。
また、その他の研究業務や船上での生活も同様に、様々な分野の技術者や乗組員のみなさんにより支えられています。

ここからが、堆積学者の仕事になります。 コア試料の半割面をきれいにならし、堆積物の表面を撮影したのち、色調などの計測をおこないます。 堆積物は空気に触れると色などを変化させてしまう場合があるため、採取された当時の様子を記録しておくことは非常に重要です。

2. ここからが、堆積学者の仕事になります。
コア試料の半割面をきれいにならし、堆積物の表面を撮影したのち、色調などの計測をおこないます。
堆積物は空気に触れると色などを変化させてしまう場合があるため、採取された当時の様子を記録しておくことは非常に重要です。

コアを肉眼で観察し、堆積物の固結度合、色調、岩相、堆積構造、含まれている鉱物や化石などの詳細な記載をおこないます。

3. コアを肉眼で観察し、堆積物の固結度合、色調、岩相、堆積構造、含まれている鉱物や化石などの詳細な記載をおこないます。

肉眼では観察できない微小な鉱物や、化石などを観察するために、スミアスライドを使った顕微鏡下での記載も同時におこなわれます。 ジョイデス号では、次つぎと運ばれてくるコアを素早く、正確に記載し、多分野で知見を共有するために、デスクロジックというソフトウェア上で記載をしていきます。 私たちの働くコアの記載スペースは、研究室の中心にあるため他分野の研究者がしばしば訪れます。ここでの会話や議論もまたコアの記載にとても役立ちます。

4. 肉眼では観察できない微小な鉱物や、化石などを観察するために、スミアスライドを使った顕微鏡下での記載も同時におこなわれます。
ジョイデス号では、次つぎと運ばれてくるコアを素早く、正確に記載し、多分野で知見を共有するために、デスクロジックというソフトウェア上で記載をしていきます。
私たちの働くコアの記載スペースは、研究室の中心にあるため他分野の研究者がしばしば訪れます。ここでの会話や議論もまたコアの記載にとても役立ちます。

このようにして得られた情報を、次の掘削地点に移動する間に報告書としてまとめます。
通常の論文と同様に、皆で議論を重ね、修正がくりかえされ、ようやく提出することができます。

最後に
私にとって、今回がはじめてのIODPクルーズへの参加であったため、
不安もあったのですが、同船する研究者や技術者、乗組員のみなさんに助けられ、
楽しく(8月7日時点)船上での研究生活がおくることができています。

それではまた

このページのトップへ

レポート1(2015年8月6日) Exp. 356航海開始!

岩谷北斗(香港大学・島根大学協力研究員/Sedimentologist)

2015年8月3日、薄曇りの下、ジョイデス・レゾリューション号は、国際深海科学掘削計画(IODP)第356次研究航海へと出航しました。

第356次研究航海(Exp.356)の目的は、「過去5百万年間のインドネシア通過流と気候変動の歴史の解明」としたもので、オーストラリア西岸沖の6地点でコアの掘削、分析がおこなわれる予定です。

Exp.356には、日本からの4名の参加者を含め、10カ国以上から33名の研究者が乗船し、二か月の間、共同で生活をおくり、24時間体制でさまざまな研究に取り組みます。そうしたExp.356の船上での生活や研究の様子を、こちらで紹介していきたいと思います。

停泊中の ジョイデス・レゾリューション号 乗船後しばらくは、港に停泊したまま、研究の打ち合わせや実験室や試料の取り扱いについてのレクチャーをみっちりとうけます。

停泊中の ジョイデス・レゾリューション号
乗船後しばらくは、港に停泊したまま、研究の打ち合わせや実験室や試料の取り扱いについてのレクチャーをみっちりとうけます。

コアを待ちわびる研究者たち 掘削深度などの情報が表示されるモニターの前で状況を確認し、コア回収のアナウンスがあるとみな目を輝かし甲板へと出ていきます。

コアを待ちわびる研究者たち
掘削深度などの情報が表示されるモニターの前で状況を確認し、コア回収のアナウンスがあるとみな目を輝かし甲板へと出ていきます。

船上からみた夜明け 船上での研究は、昼と夜の12時間交代でおこなわれるため、夜シフトの乗船者は朝日が昇るころに昼食をとります。

船上からみた夜明け
船上での研究は、昼と夜の12時間交代でおこなわれるため、夜シフトの乗船者は朝日が昇るころに昼食をとります。

このページのトップへ

カテゴリー: IODP Expedition パーマリンク

コメントは受け付けていません。