Exp. 346 Asian Monsoon

航海概要

航海情報

テーマ

Onset and evolution of millennial-scale variability of Asian monsoon and its possible relation with Himalaya and Tibetan uplift

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実施予定期間

2013年8月20日~2013年9月28日

掘削船

JOIDES Resolution

掘削地点

科学目的の概要

It is well demonstrated that Asian monsoon varied with the Dansgaard-Oeschger Cycles [DOC]. Recent studies further suggest that such variability may have been caused by oscillations in westerly jet circulation between two different modes of meandering. Because topographic effect of Himalaya and Tibetan Plateau [HTP] is considered as the probable cause of different modes of the westerly jet meandering, and increasing evidences suggest final uplift of HTP commenced during Plio-Pleistocene, it is hypothesized that Plio-Pleistocene uplift of HTP, and consequent emergence of the two discrete modes of westerly jet meandering is the cause of the millennial-scale variability of the Asian monsoon and amplification of the DOC.

In this project, we aim to collect the geological evidence necessary to test this hypothesis through drilling in the Japan Sea and northern part of the East China Sea. We propose to drill two latitudinal transects in the Japan Sea to monitor the behaviors of the westerly jet and winter monsoon. We also propose to drill at the northern part of the East China Sea to monitor the Yangtze River discharge history that should have been reflecting variations in summer monsoon intensity. The southern transect will be used to reconstruct the behavior of the subpolar front and examine its relationship with the westerly jet and the sea level changes. Whereas the northern transect will be used to identify ice-rafted debris [IRD] events and reconstruct temporal variation in its southern limit, which we consider as winter monsoon proxies. Finally, we arrange two depth transects to reconstruct the ventilation history of the sea. We will examine the relation between the ventilation in the sea, and the nature of the influx through the Tsushima Strait and/or winter cooling.

Through the proposed drilling, we hope to 1) specify the onset timing of orbital and millennial-scale variabilities of East Asian monsoon and westerly jet, and reconstruct their evolution process and spatial variation patterns, and 2) reconstruct orbital and millennial-scale paleoceanographic changes in the Japan Sea during the last 5 m.y. to clarify the linkage between the paleoceanographic changes in the Japan Sea and variabilities of East Asian monsoon and/or sea level changes. Comparison of the obtained results with the uplift history of HTP will enable us to test the idea that topographic evolution of HTP was responsible for creation of bimodality in westerly jet circulation that caused amplification of millennial-scale variability of Asian monsoon.

We hypothesize that there have been two quasi-stable modes of the westerly jet meandering, and oscillation between the two modes could be the essential part of the Dansgaard-Oeschger Cycles. We further speculate that Himalaya-Tibetan Plateau [HTP] play a role of topographic barrier that creates the two quasi-stable modes of the westerly jet meandering and Plio-Pleistocene uplift of HTP could have triggered the onset of millennial-scale abrupt climatic changes in northern hemisphere. In this proposal, we plan to collect paleoclimatological and paleoceanographical constraints critical to test this hypothesis through IODP drilling of the Japan Sea and northern part of the East China Sea. The drilling will enable us to reconstruct the history of onset and evolution of the orbital and millennial-scale variabilities of summer monsoon, winter monsoon, westerly jet position and intensity, and desertification in East and Central Asia during the last 5 m.y. We also propose to explore the linkage between orbital and millennial-scale variabilities of the East Asian monsoon, discharge of the Yangtze and Yellow Rivers, and paleoceanography in the Japan Sea.

Aims of the proposed drilling are two folds.

  1. Specify the onset timing and reconstruct evolution process of orbital and millennial-scale variabilities of East Asian monsoon (summer monsoon, winter monsoon, and westerly jet axis), reconstruct their spatial patterns, and examine their interrelationship.
  2. Reconstruct orbital- and millennial-scale changes in surface- and deep-water circulations in the Japan Sea, and examine their relation with variabilities of East Asian monsoon and glacio-eustatic sea level changes.

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J-DESCからの乗船研究者
氏名 所属 役職 乗船中の役割
多田隆二 東京大学 教授 Co-chief Scientist
池原 研 産業技術総合研究所 副研究部門長 Sedientologist
板木拓也 産業技術総合研究所 研究員 Paleontologist (Radiolaria)
入野智久 北海道大学 助教 Stratigraphic Correlator
久保田好美 東京大学 大学院生(博士課程) Paleontologist (Foraminifer – Planktonic)
佐川拓也 愛媛大学 研究員 Sedimentologist
杉崎彩子 東京大学 特任研究員 Paleomagnetist
鳥田明典 東京大学 大学院生(修士課程) Sedimentologist

乗船者募集(〆切ました)

募集の概要

The objective of this expedition (based on IODP Proposals 605-Full2, 605-Add, 605-Add2, and 605-Add3) is to core and log sites on a latitudinal transect in the Japan Sea, and one site in the northern East China Sea, to test the hypothesis that Pliocene-Pleistocene uplift of the Himalayan and Tibetan Plateau and the consequent emergence of the two discrete modes of westerly jet circulation caused the amplification of millennial scale variability of the Asian monsoon and tele-connection mechanism with Dansgaard-Oeschger Cycles.

Scientific objectives will

  1. address the timing of the onset of orbital and millennial scale variability of the East Asian Monsoon,
  2. reconstruct orbital and millennial‐scale paleoceanographic changes in the Japan Sea during at least the last 5 m.y.,
  3. reconstruct the ventilation history of the Japan Sea, and its relation with the nature of the influx through the Tsushima Strait and/or the intensity of winter cooling; and
  4. monitor the history of the Yangtze River discharge in the northern end of the East China Sea as it reflects variation and evolution in East Asian summer monsoon.
募集〆切

2012年8月1日(水)

〆切ました

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注意事項

応募する方は全員英文CV、さらに在学中の場合は指導教員の推薦書が必要となります。
修士課程の大学院生の場合は乗船中の指導者(指導教員もしくは代理となる者)が必要です。

乗船に関わるサポートについて

乗船研究者としてIOから招聘される方には乗船前から乗船後に至る過程の数年間に様々なサポートを行っています。主な項目は以下の通りです。乗船が決まった方は様式に記入の上お送りください。

  1. プレクルーズトレーニング:乗船前の戦略会議やスキルアップトレーニング
  2. 乗船旅費:乗下船に関わる旅費支援
  3. アフタークルーズワーク:モラトリアム期間中の分析
  4. 乗船後研究:下船後最長3年で行う研究の研究費
お問い合わせ

J-DESCサポート

海洋研究開発機構 地球深部探査センター内
E-mail: infoの後に@j-desc.org
Tel: 045-778-5271

船上レポート

最終更新日: 2014年4月11日
※更新の日付は日本時間

レポートインデックス

レポート1>>準備万端!
レポート2>>船上での時間調整@日付変更線
レポート3>>忙しい日々の始まり
レポート4>>堆積学グループの紹介
レポート5>>船上での楽しみ
レポート6>>コアのサンプリング
レポート7>>ラップ

レポート7 「ラップ」2013年9月26日

烏田明典(東京大学/Sedimentologist)

こんにちは。東京大学博士課程1年の烏田です。Exp. 346ではSedimentologistとして参加しております。現在私達は既に掘削を終え、最終寄港地である釜山に向かっている途中です。最後にふさわしくない話題かもしれないですが、今回は日本海堆積物掘削に参加して非常に印象に残っている「ラップ」事情についてお話したいと思います。他の方が既に紹介されていますので詳細を省きますが、日本海の海洋環境は気候変動に合わせて非常に酸化的な環境から非常に貧酸素な環境に劇的な変動をしており、この変動は堆積物の明暗層という形で鮮やかに記録されています。

しかし、得られた堆積物についてSedimentologistが記載するためにコアを半割し堆 積物を空気にさらしてしまうと、堆積物と空気中の酸素が反応してしまい堆積物の酸化が非常に速やかに進行します。特に貧酸素環境下で形成された堆積物は非 常に酸化速度が早く、有孔虫などの炭酸塩の殻を持つ微化石が溶けてしまい、研究の大きな妨げとなっています。そのため今回の航海では得られた堆積物を「い かに酸化から守るか」が非常に重要であり、特別なルールでラッピングが行われています。

今回の航海では、まず得られた全てのコアについて堆積物の表面を一度ラップで覆い、その上にコア 全体をくるむような形でさらにラッピングをすることになっています(Double Wrapping)。これにより酸化を防いでいるのですが、これだけでは完全に酸化を防ぐことができません。そのため酸化しやすい堆積物が頻繁に見られる 各サイト上部100mについては、Double Wrappingの上に「Shrink Wrapping」という特別なラッピングを行っています。これは加熱すると縮む性質を持つラップ材を用いて、空気が確実にコアに入らない形でコアをラッ ピングするものです。今回はこのラッピング時に脱酸素剤も同時に封入することで酸化を防いでいます。

さて、このような形で私達はラッピングをしてきたのですが、皆さんは今回の航海でどれほどの堆積物が得られたかご存知でしょうか?
正解は6000mです。

そして6000m分の堆積物について「半割」されたコアをそれぞれラッピングする必要があります。この航海で私達は12000m分の半割されたコアをラッピングしてきました。
さて、この膨大な量のラッピングは一体誰がするのでしょうか?
正解は主にSedimentologistとJOIDES Resolutionのスタッフです。この膨大な量のラッピング経験を経て、船上ではwrapperが続々と誕生しました。

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例1 船上staffのJustin

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例2 SedimentologistのSam

この航海のためだけに25km分のラップが購入されたらしいのですが、ラップをほぼ使い切ってしまいました。おそらくラップ使用の世界記録だろうということを皆で言っています。

あと2日で今回の航海は終わってしまいますが、研究者はこれから本当の研究が始まります。現在は各研究者のサンプリング調整や共同研究の打ち合わせなどを行い、多方面からの視点で今回得られた試料から面白い結果を出そうという努力をしています。

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 レポート6 「コアのサンプリング」2013年9月24日

久保田好美(国立科学博物館/Paleontologist -Planktonic Foraminifera)

微化石チームの久保田です.航海も残すところ数日となりました.我々,微化石チームはいち早く最後の掘削地点の観察を終えまして,報告書の作成に追われているところです.

さて,このアジアモンスーン航海では,8つの地点で掘削が行われましたが,合わせて6000 m以上!の海底堆積物の採取に成功しました.堆積物は、9.5mの長さのコア(柱状試料)として上がってきますが、我々は,船上でそれを1.5 mのセクション(切断されたコア試料)にカットして,さらに縦方向に半分に分割しているので,9000本もの半割セクションを採取したことになります.大 変なのは,これを管理するキュレーターを含めたスタッフ.9000本ものセクションは,10本ごとに箱詰めにされるのですが,それにしても9000本もの セクションにラベルを付け,適切に梱包して,配送する作業は並大抵のことではありません.これらのセクションは,3月に再び我々研究者によってサンプル採 取されるのですが,6000 mのコアをどのようにサンプル採取するかの計画を練るのはさらに大変です(この作業は,首席研究者とキュレーターが行います).

ところで,コアは,船が釜山の港に到着したあと,日本の高知コアセンターに配送され,大きな冷蔵室で半永久的に(少なくともこのIODPのプログラムが終わるまでは)保管されます.研究者が,再びコアと対面するのは来年の3月です.きっと6ヶ月はあっという間ですね.

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コアを待つ大量のコアケース

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 レポート5 「船上での楽しみ」2013年9月23日

佐川拓也(九州大学/Sedimentologist)

こんにちは,九州大学の佐川です.

7月末から始まったExp. 346も残すところあと一週間となりました.JOISES Resolution号は東シナ海での掘削を終え,また日本海へと戻って掘削を続けています.乗船研究者は,掘削して上がってきたコアをひたすら観察や分 析をし,サイトごとに調査結果をまとめるサイトレポートの執筆に追われている毎日です.毎日が非常に忙しくあっという間に過ぎてしまうのですが,サイトご とにそれぞれ異なる特徴があるのでエキサイティングな日々が続いています.

2ヶ月の長い航海での楽しみの一つが何と言っても食事です.乗船前には日本の味が恋しくなるので はと少し心配もしましたが,船での食事はどれも美味しくて毎回食べ過ぎてしまうほどです.船の中では歩く距離も少なく運動不足になりがちなので,最初のう ちは食べ過ぎないように気をつけていたのですが,船の美味しい食事を食べられるのも今だけだと思い,途中ですっかり諦めてしまいました.心なしか服がきつ くなった気がするのは“高温乾燥機で服が縮まったから”という解釈で僕と板木さんの中では一致しました.そんな中,烏田君は毎食決まってお代わりをするの で,彼がどのくらい食べるのかいつもみんなで注目しています.

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美味しそうにハンバーガーをほおばる烏田君

さらに,たまに週末に開催されるバーベキューは皆が特に楽しみにしています.先日土曜日の昼食時 にもコックの方々が一生懸命準備をしてくださってバーベキューが行われました.肉や魚の他にケーキなども振る舞われます.晴れた空の下,周りは見渡す限り 海という状況で食べるハンバーガーやステーキの味はまた格別です.そろそろ航海もまとめの段階に入ってきました.まだまだ忙しい日々は続きますが,あと一 週間この貴重な体験を楽しみたいと思います.

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乾杯?!!(バーベキューの一コマ)

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 レポート4 「堆積学グループの紹介」2013年8月27日

佐川拓也(九州大学/Sedimentologist)

みなさま,こんにちは.九州大学の佐川です.前回のレポートで久保田さんから微化石グループの紹介がありましたが,今回は堆 積学グループの紹介をしたいと思います.堆積学グループは昼シフト(正午~深夜0時)と夜シフト(深夜0時~正午)にそれぞれ5名ずつの計10名で構成さ れています.個性豊かなメンバーですが,日に日にチームとしての結束力が強まっているのを感じます.日本からは産総研の池原さん,東大の烏田君,そして私 の3名が参加しています.

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堆積物グループのメンバー.後列左からKen,Shiming,Aki,Sam,Andy,前列左からHongbo,Maria,Martin,Larry,筆者

堆積学者の主な仕事は,コアを肉眼で観察したり,スミアスライドを作って顕微鏡 観察したりすることで堆積物の構成要素を調べ,数百万年に及ぶ環境変化を考察することです.さらに,コア表面をスキャンして高精度な画像を撮ること,色や 帯磁率を測定することも堆積学者の仕事です.現在,私たちは3番目のサイトで掘削しており,次々に上がってくるコアの観察や分析を行っています.今でこそ仕事に慣れてきて,全体の流れの中でスムーズに処理できるようになりましたが,最初のサイトでは色々と慣れていないことが多く大変でした.
日本海の堆積物は非常に変化に富んでいるため,限られた時間の中でどのように記 載すべきか議論を重ねました.そのうちに,未処理のコアがラックにどんどん溜まってしまい,時間やプレッシャーとの戦いでした.それでも各シフトの5人が 協力して仕事を効率よく分担し,シフトの交代時間には10人全員で集まって情報交換を行うことで,徐々にコアの渋滞も解消され毎日楽しむ余裕が出てきまし た.

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写真:日本海の堆積物コア

それにしても日本海の堆積物コアは非常に美しく,何度見ても飽きることがありません.全てのコアに目を通すことができるのは堆積学者の特権です.あと5週間思う存分楽しみたいと思います.

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 レポート3 「忙しい日々の始まり」2013年8月23日

久保田好美(国立科学博物館/Paleontologist -Planktonic Foraminifera)

Exp. 346乗船者の久保田です。船はようやく日本海に到着!最初のサイト(U1422)の掘削が始まりました。 日本海北部のこのサイトのメインターゲットは、海氷が陸に着岸したときに海岸の砂や礫(れき)を取り込んで、沖合で氷が融けた時に落とした石(ドロップス トーンや氷河性砕屑物)がどれだけ堆積物の中に入っているかを調べ、海氷の張り出しぐあいから冬季にどれだけ寒冷化したのかを過去4百万年間にわたって明 らかにすることです。今回は、堆積物の年代決定のために、私を含め、放散虫、珪藻、石灰質ナンノプラ ンクトンの専門家で構成された微化石チームが乗船していますが、日本からは2人が参加しています。私は浮遊性有孔虫が専門ですが、もう一人は、放散虫屋の 産総研の板木拓也さんです。その他は、ヨーロッパからAnn Holbournさん(有孔虫)、Cristina Lopesさん(珪藻)、Mariem Saavedra-Pellitero(ナンノ)、アメリカからBobbi Brace さん(ナンノ)、オーストラリアからStephan Gallagherさん(有孔虫)、インドからRaj Singhさん(有孔虫)が乗船しています(写真1)。国籍、年齢もさまざまですが、頼もしいメンバーです。

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“Core on DECK”のアナウンスとともに、掘削・採取した柱状のコアが最初に1.5mのセクションに切り分けられるデッキ(キャットウォークと呼びます)に駆けつ け、コアを保持する透明プラスティックチューブの最下部に取り付けられているキャッチャーに捕まったサンプルをいただいていきます。採れたての堆積物を顕 微鏡で観察し、年代決定の鍵となる種がいないかどうかを探すのですが、いの一番に回収されたコアを観察できるおいしい仕事でもあります。

最初のサイトは、水深が3400mと日本海の中でも深い部分に当たり、有孔虫や 石灰質ナンノなどの炭酸塩の化石は非常に残りにくいことが予想されていました。予想通り、炭酸塩の微化石の産出は断続的でしたが、一方で放散虫や珪藻と いったケイ酸塩の殻を持つ微化石は豊富に含まれていました。おかげで、一人ずつしかいない放散虫と珪藻の専門家はとても忙しくしていましたよ。

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レポート2 「船上での時間調整@日付変更線」2013年8月16日

佐川拓也(九州大学/Sedimentologist)

みなさま,初めまして.IODP 346次航海に堆積学者として乗船しています九州大学の佐川です.

私たちが乗船しているJOIDES Resolution号は,8月2日にアラスカのValdezの港を出港しまして,最初の掘削地点である日本海へと向かっております.途中,アラスカ湾で 強い低気圧に襲われましたが,現在(8月15日)は北海道襟裳岬沖を津軽海峡に向けて元気に航行中です.この航海は2ヶ月間の乗船期間のうち最初の約2週間がトランジットという,ある 意味特殊な航海になっています.最初の掘削地点である日本海北部のJB-3サイトへの到着は8月17日になる予定です.そのため,本来12時間で交代する シフトはようやく今日から本格的に始まりました.これを読んでいる方の中には,まさか「どうせ暇なんでしょ?」とか,「遊んでば かりいるんでしょ?」などと思われている方はいないと思いますが,私たちは毎日,オチのよくわからないアメリカンジョークに笑顔で答えてみたり,ダンス パーティーに向けてサルサのレッスンを受けたり,と忙しい日々を過ごしております.

というのは冗談で,これからあがってくるコアをスムーズに処理し,大きな成果を得るために日々努力しております(本当です).各ラボでは分析機器の操作方法に関する講習やトレーニングなどが行われており,着々と準備が進められています(本当です).さらに,船内では毎日セミナーが開かれています.セミナーでは乗船研究者が持ち回りでそれぞれの研究を紹介しています.また,今後の研究方針に関する議論や共同研究の提案なども行われています.まだ掘削が始まっていないので,これといってワクワクするような話題を持っていないのが残念なところですが,太平洋横断している私たちがよく話題にしていたことを一つ紹介します.

出港地であるValdezと日本の間には17時間の時差が時間あります.船はValdezを出港してからじっくりと西へ向かって日本へと近づいてきたので,2日に1回程度の間隔で1時間ずつ時間調整が行われてきました.時間調整の日には掲示板に,“今夜の夜中2時に時計を1時間戻してください”という感じの紙が張り出されます.この場合,夜中の2時が1時に戻るので,いつもより1時間多く寝られることになります.こうして何度か長い睡眠時間をもらい,ある意味“得”をしてきたわけですが,日付変更線を越えたタイミングで一気に損した気分にさせられてしまいました.それは,JOIDES Resolution号が日付変更線を越えた8月8日の夜中に,例によって時間調整が入りました.この日は“夜中の0時に1日進めてください”というもの だったため,8月8日の23時59分の次は,8月10日の午前0時0分となり,乗船者は2013年8月9日を過ごすことができませんでした.

もちろん日本からValdezに渡った際に大幅に時計を戻していますし,その後 も1時間ずつ戻していたので時間的に損はしていないのですが,それでも8月9日を1秒も過ごしていないというのは何となく残念な気持ちになってしまいま す.というわけで,私達には8月9日のアリバイがありません.

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8月15日午後4時頃のJOIDES Resolutionの位置

さて,そろそろJOIDES Resolution号は津軽海峡を通過します.日本人研究者は携帯の電波が気になり始める頃です.次回は初めてのコアがあがってきた興奮をどなたかが伝えてくれると思います.お楽しみに!

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レポート1 「準備万端!」2013年8月15日

久保田好美(国立科学博物館/Paleontologist -Planktonic Foraminifera)

船の上からこんにちは。研究員の久保田好美です。出港地のアラスカを出てから2週間がすぎようとしています。

この航海は、アジアモンスーンの発達の歴史とそれに伴う日本海の環境変動を約1 千万年前から連続的に明らかにするために計画されたものです。まず日本海を北から南に横断しながら7地点、対馬海峡を抜けたあと東シナ海北部の1地点で海 底の掘削を行います。6000m以上もの厚さの海底堆積物を柱状の試料(コアと呼びます。)として採取します。乗船している研究者は、総勢34名。その国と地域はさまざまで、日本(8名)、 アメリカ(11名)、ヨーロッパ(7名)、韓国(3名)、中国(2名)、オーストラリア、ブラジル、インドからそれぞれ1名です。専門分野もさまざまで、 堆積学、古生物学、古地磁気学、地球化学、地球物理学の専門家の集合体として、研究目的を達成できるようチーム編成がうまく考えられています。

あと2日ほどで,日本海北部JB-3のサイトに到着します.2週間のトランジットのおかげで,ラボの準備や共同研究者との調整などを済ませることができ,準備万端で臨むことができました.

それでは皆様,次回もお楽しみに!

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アラスカのバルディーズのコンテナ港に停泊しているJR。ここから乗り込みました。

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報告書類

  • 2nd Postcruise meeting
    開催日程:2016年1月22日~24日
    開催報告:PDF(こちら

成果一覧

成果一覧はこちら

※IODP研究成果の取りまとめは、研究航海乗船者に対するサポートを継続していくために非常に重要なものです。成果については、主に日本(J-DESC枠)から乗船した方が含まれる論文をまとめております。新たに論文等を出された場合や資料中の過不足・お気づきの点などがございましたら以下まで情報をお寄せください。

参考:IODP Publications
http://publications.iodp.org/

参考:Scientific Ocean Drilling Bibliographic Database
http://iodp.americangeosciences.org/vufind/

お問い合わせ

J-DESCサポート
海洋研究開発機構 横浜研究所内
E-mail: infoの後に@j-desc.org
Tel: 045-778-5703

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