Exp. 336 Mid-Atlantic Ridge Microbiology

航海概要

テーマ

Initiation of long-term coupled microbiological, geochemical, and hydrological experimentation within the seafloor at North Pond, western flank of the Mid-Atlantic Ridge
(IODPでの大テーマ:Deep Biosphere & Subseafloor Ocean)

オリジナルプロポーザル>>こちら(PDF)
Scientific prospectus>>こちら

航海期間

2011年9月17日~11月20日

掘削船

JOIDES Resolution(USIO)

掘削エリア

航海概要

Based on IODP Proposal 677-Full, this expedition will examine the microbiology of a sediment pond and the underlying young, cold, and hydrologically active flank of the Mid-Atlantic Ridge. Drilling operations at three sites will include sediment/basalt coring, basement logging, and installation of three long-term subseafloor observatories. The primary science objectives are to investigate (1) the nature of microbial communities in young ridge flanks and their role in crustal weathering, and (2) the origin of deep-seated microbial communities.

航海詳細>>USIOのページへ

共同首席研究者

Katrina Edwards、Wolfgang Bach

J-DESC推薦の乗船研究者
氏名 所属 役職 乗船中の役割
針金由美子 産業技術総合研究所 研究員 Petrologist
平山仙子 海洋研究開発機構 主任研究員 Microbiologist
坂田 霞 大阪大学 大学院生(博士課程) Organic Geochemist
中村謙太郎 海洋研究開発機構 研究員 Petrologist

乗船に関わるサポートについて

乗船研究者としてIOから招聘される方には乗船前から乗船後に至る過程の数年間に様々なサポートを行っています。主な項目は以下の通りです。

  1. プレクルーズトレーニング:乗船前の戦略会議やスキルアップトレーニング
  2. 乗船旅費:乗下船に関わる旅費支援
  3. アフタークルーズワーク:モラトリアム期間中の分析
  4. 乗船後研究:下船後最長3年で行う研究の研究費

お問い合わせ

J-DESC事務局
E-mail: infoの後に@j-desc.org
Tel: 045-778-5271

乗船者募集(〆切ました)

乗船者募集〆切

2011年1月15日(土)
終了

募集分野

1) direct core measurements of oxygen and other chemical parameters relevent to microbiology

Direct measurements: the interest is in a scientist who can directly measures species of interest that are being consumed or produced in microbiological reactions. Oxygen will be a key in this setting as well as nitrate and all other N relevant species in pore waters. Other non-nutrients analyses that someone of this type could be bring to the table are Fe, Mn, and S (some use electrodes for these measurement but there are other alternatives techniques).

2) biogeochemistry

Biogeochemistry: of particularly interest is someone interested in isotope incubation and incorporation experiments of species that would be relevant to this setting which include acetate, bicarbanate etc. Scientist who measure rates would be beneficial as well.

 3) pore-water geochemistry

応募する>>こちら

その他・注意事項

乗船支援について>>こちら
乗船研究者のためのガイドライン>>こちら
※応募する方は全員英文CV、さらに在学中の場合は指導教員の推薦書が必要となります。
※修士課程の大学院生の場合は乗船中の指導者(指導教員もしくは代理となる者)が必要です。

船上レポート

更新: 2011年11月22日
※更新の日付は日本時間

Exp. 336船上レポートインデックス

レポート6>>今回の航海を振り返って~二ヶ月の冒険の終わり
レポート5>>下船間近なのです.下船まであと10日です!
レポート4>>ダブルパーティー;集合写真撮影会
レポート3>>船上での娯楽
レポート2>>待望のファーストコア,そして嬉しい楽しい出来事達
レポート1>>いざ出航!大海原へ!

レポート6「今回の航海を振り返って~二ヶ月の冒険の終わり」

坂田 霞 (大阪大学)、日本人乗船者一同

11月7日に下船まで残り10日のカウントダウンを切ってから,今回の航海初堆積物コアリングに向けての準備が始まりました.また,下船まで二週間を切ると,下船準備のアナウンスが流れ出します.書類の締め切りや荷造りについて,部屋の清掃予定など細々とした情報が送られてきます.また,今までのハードロックのコアリングでは約5時間間隔でコアが上がってきていましたが,堆積物のコアリングではずっと短い1時間間隔でコアが上がってきます.航海終盤での新しい作業ということもあり,船の中には緊張感が漂っています.ドキドキします.さぁー気合いを入れていきましょう!
11月7日15時頃,今回の航海初の堆積物のコアが上がって来ました.堆積物のファーストコアを一目見ようとたくさんの人だかりです.ハードロックのコアリングでは回収率が20%程ですが,堆積物では回収率はほぼ100%です.回収されるコアの長さが全然違います.歓喜の渦です.「すごーい!こんなん初めてみたー!」と感激していましたが,その直後,感激は間隙に変わり,怒涛の間隙水絞りで化学実験室は戦場と化しました.船上だけに.人手が足りません.坂田は洗い物係りに任命されました.間髪入れずにどんどん洗い物がたまります.洗えども洗えども….ぢっと手を見る暇もありません.手を見る間もなく洗った物をすぐさま乾燥させます.円柱形の筒に堆積物を入れて,重石を載せ,油圧で堆積物を絞って間隙水をゲットしていきます.この筒と重石達が猛烈に重たいのです.しかし,きっちり綺麗にかつ速く洗わなければ作業が中断しますし,しっかり乾かさないと間隙水の濃度が変わってしまうので,洗い物と乾燥はめちゃめちゃ大事です.地味でしんどいですが.悲しいかな,日本人の私は背が低く洗い場に体がフィットしていません.蛇口が微妙に遠いのです.同じ姿勢で数時間洗い続けます.体力勝負です.でも皆忙しくて疲れているので辛そうな顔はNGです.「これも洗って!」に「喜んで!」と笑顔と気合いで答えます(写真1).右ストレートが強くなりそうです.とにかく洗い物のせいで仕事が止まらないように必死に数時間洗い続けます.シフト終わりには腕,肩,背中にかけて筋肉痛になります.あぁー助けてください.ヘロヘロでご飯を食べる元気はないですが,明日のことを思って頑張って食べます.想像以上にハードです.

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写真1:洗い物をひたすら続ける坂田.哀愁漂うその背中.

11月8日,堆積物コアリング二日目.今日は昨日の作業で慣れたこともあり,うまく役割分担が出来て昨日のようなドタバタはなかったです.少し談笑する余裕も出て来ました.しかし,日頃の運動不足がたたって筋肉痛は続いています.そして11月10日12時過ぎ,無事に最後のコアリングが終了しました!ほっと一安心です.嬉しくて「うひょー」と変なダンスを踊ってしまいました.これからは堆積物の記載を行う人,物性値を測る人,サンプルの処理をする人で忙しくなります.航海の終わりまでまだまだ気が抜けません.中村さんと針金さんは,コアの写真を撮り,帯磁率と色反射率の測定,コアの片付けなどのお手伝いをされていました(写真2).帯磁率と色反射率は一つの装置で一気に測れるので賢い仕組みになっていて感心します.手が空いた人達で忙しい人達のお手伝いをして何とか乗り切りました.分析が終わると,Site Reportの提出が待っています.分析結果をまとめて提出しなければなりません.船はどんどんアゾレスに向けて進みます.そして研究者はレポートの完成に向けてどんどん書き物を進めます.

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写真2:コアラボで大活躍の中村さんの様子.シャキシャキとどんな仕事もこなす姿がステキすぎます!

11月13日,チャンピオン・オブ・ロゴがプリントされたTシャツを皆で作りました(写真3).アイロンプリントで作ります.これがExp. 336 Tシャツのロゴです!(写真4)今回の掘削ポイントにJRが,また乗船したバルバドス,下船するアゾレスに星のマークが入っています.また,今回乗船している研究者の出身国の国旗が回りにデザインされています.とってもいいお土産になりました.

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写真3:楽しいTシャツ作り

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写真4:Exp. 336 Tシャツのロゴ.思い出が沢山詰まった宝物です.

また,この日は航海最後の日曜日でした.毎週日曜日にはスペシャルデザートが用意されます.アップルパイを細かくしたものに,温かいカスタードクリームをかけ,仕上げにソフトクリームをかけて食べます(うぅ~ハイカロリー).冷たいものと温かいもののコラボレーションがステキです.最後のスペシャルデザートを心行くまで楽しみました.食事中の会話も「帰ったら一番初めに何をしたい?」など,皆さん,家に帰れるのを楽しみにしながら船はどんどん進みます.どうやら予定より一日早い16日にアゾレスに着くようです.久しぶりの陸はとてもワクワクします.「自由だー!!」と叫んでしまう危険性があります.これ以上怪しげな行動を取ってはいけません.
今回の船上レポートでは,広報担当として坂田が感じたことや,船上での生活などをお伝えできて私自身とても楽しかったです.船上レポートを読んで下さった皆様,長い間お付き合い頂き,有難うございました.少しでも楽しんで頂ければとても嬉しいです.今回は船上レポート最終回豪華特別拡大版!パチパチパチ!ということで,坂田の目線からだけではなく,日本人乗船研究者全員の今回の航海の感想をご紹介したいと思います.

それでは,中村さんお願いします!

はじめまして
JAMSTECの中村です
航海もいよいよあと3日というところにきて「はじめまして」というのも変な話ですが、航海中のレポートをすっかり坂田さんに頼りきってしまっていたために・・・・・・・・・・・

(以下略)
坂田さん、本当にありがとうございました
せっかくですので、最後にこの航海の感想を正直にぶっちゃけて見ようと思います。

2ヶ月という航海期間は、過去の私の何回かの乗船経験(掘削船の経験はありませんが)の中では最長です。しかし、終わってみれば「あっという間」だったなぁというのが今の正直な感想です。それだけ毎日必死だったのだろうと思います。
今回の航海は、航海計画段階に一切関与することなく、実行段階で突然飛び入り参加するという自分にとってあまり経験の無い航海でした。そのため、一緒に乗船する人たちは、ほぼ全員船で初めて出会う人ばかりで、しかもみな外国人という、あまりに特殊過ぎる環境からのスタートでした。日本の船でさえ、乗り合わせた知らない人とコミュニケーションを取れるようになるまでに、多くの時間と労力を必要とする私(要するに“人見知り”)にとって、さらに言葉も満足に通じないという状況は、正直“両手両足にぶっとい鎖で鉄のおもりをくくり付けたままヒグマと闘う”くらいのインパクトがありました(例えが分かり難いっ!)。

そんな苦しい状況を何とか乗り切れたのは、以下のような幾つかの幸運に恵まれたおかげだと思います。ここで改めて列挙してみましょう。
(1) 同室で同じく岩石学者だった陽気なフランス人のポールといち早く仲良しになれたこと。彼とは、乗船前のホテルでたまたま話をして友達になり、乗船したら部屋も同じだったという超ラッキーな出会いでした。
(2) 日本から参加した平山さん、針金さん、坂田さんという3人の女性研究者(私以外は全員女性でした)にうまいことコミュニケーションのきっかけを作ってもらえたこと。人見知りの私が、(a) 初対面の、(b) 外国人の、(c) しかも女性、に話しかけるというのは、“2011年11月11日11時11分11秒にたまたま落ちてきた隕石がちょうど法隆寺の鐘にあたって「ゴーン」とその瞬間を知らせる”くらい有り得ないことです(例えが分かり難いっ!!)が、女性同士は意外と早く打ち解けているものです。そのため、たまたま日本人同士で一緒にいる時に、外国人の女性研究者と話をするきっかけが生まれると
いう素晴らしいチャンスを頂けるラッキーがありました。
(3) 英語が堪能で社交的な中国人のフェンピンさん(女性)および韓国人のパークさん(男性)と仲良くなれたこと。なお、彼女ら(彼ら)と仲良くなったきっかけには、(2)も大きく絡みますが、多国籍軍団の中でアジア人同士はやはり親近感を持って接することができ、積極的に話しかけてもくれます。そのため、彼女らの英語力や社交力によって、彼女らとだけではなく、他の研究者とコミュニケーションをとるきっかけをも与えられる機会が数多くありました。これも、非常に大きな助けになったと感じます。 以上をまとめてみると、“英語力 and/or 社交力の高い人といち早くお友達になれると GOOD !”ということでしょうか。長々と列挙した割には、一言で済んでしまいました・・・・・。無理矢理もう一つ付け加えると、メチャクチャな英語に付き合う耐性の高い非ネイティブの人の方が、速やかにお友達になれるような気がします。もちろん、ネイティブスピーカーの研究者の皆さんや、USIOスタッフの皆さんもとても親切に接してくれるので、きっかけさえつかめればコミュニケーションはとれるようになることでしょう。大事なのはきっかけ作り、というお話です。
なお、これはあくまで私の個人的な感想であり、“NASAで極秘に開発された次世代スーパーコミュニケーション技術”とかではありませんので、念のため。特に、英語力と社交力の両方、もしくはどちらか片方を人並みに持ち合わせている大多数の人には参考にならない可能性がありますので、ご注意下さい。また、私と同様に両方が不足しているという人も、ご使用に際しては使用上の注意を良く読んで、用法・容量を守ってお使い下さい。

いずれにしても、毎日が必死だった分、非常に充実した航海だったと思います。また本航海は、私の専門である岩石以外にも、堆積物、間隙水、微生物、さらには様々なツールを駆使した掘削孔のロギングやCORKオペレーションまであるという盛りだくさんの航海でした。そのため、たった1航海で、IODPで行われている様々なオペレーションを一気に見られるという、まるで“三国志と信長の野望と提督の決断と大航海時代が混ぜ合わさった恋愛アクションRPG”のような(例えが分かり難いっ!!!)、一粒で何度でもおいしい航海だったなぁと思います。そして、下船を目前に控えた今、今回の経験を今後の研究生活に活かしていけたらいいなぁと思いつつ、戦いが終わって静寂を取り戻したコアラボをぼんやりと見つめながら、船に揺られているところです。

“コアラボや つはものどもが 夢のあと”

中村さん,ステキな例えと俳句を有難うございます!それでは,針金さん,お願いします!

こんにちは。Exp.336 Mid-Atlantic Ridge Flank Microbiology航海でPetrologyを担当していました産総研の針金由美子です。
霞さん、航海レポート、楽しい文章を毎回どうもありがとうございました。(photokunoichiとしての使命は無事に全うできたと思います。)

本航海は、掘削孔でCORK、ロギング、微生物、物性、岩石、堆積物、地球化学と考えられる限りの研究手法を使って海底下の微生物圏を理解しようというかなり特殊な航海でしたが、同時にすべての手法が直に見学できる初心者に取って非常に興味深い航海でした。またアウトリーチにもずいぶん力をいれていて、IODP-USIOやC-DEBIのwebサイトの他、facebookやtwitterを始めとしたSNSでも積極的に航海の内容が公開されていました。

私としては「初めて」の掘削船乗船ということもあって、どういう雰囲気なのかを周囲の研究者に聞いていたのですが、特に「とにかく楽しむことが大事!」と強調して言われました。最初は「はて?」でしたが、2ヶ月たった今、うまくは言えないけれどもその言葉の意味を理解できた気がします。苦労することも食事の量も多かった分、たくさんの驚きと得難い経験を得ることができ、航海を満喫することができました。おかげで体重も増えました(かすみさんとともに目下の深刻な悩みです)。

さて、2ヶ月で思ったことは以下の3つ。もっとたくさんあるのですがスペースの問題と個人的な感情が交じっている事柄もあるので省略です。
①英語がねえ・・・
やはり日本人にはなれないものですがすべてにおいて必要です。個人的には海外に長年留学するよりは、船上で2?3ヶ月過ごす方が英語は上達するのではないかと感じました(自動車学校に半年から1年以上かけるよりも、短期合宿でみっちり終わらせるのに近い感じです。)。船上では英語で自己表現を行わないとほぼ何もできません。黙っていてもサンプルやアドバイスはもらえません。人見知りにプラスして人前で話すことに苦手意識があったので、なかなかきっかけの一言が言えず辛かったです。だから、真面目な話でもバカな話でも自分が言いたいことを片言の単語でもいいから何としてでも伝えねばならぬ!という意識を持って臨むように心がけたのは良かったと思います。ただし、向こうが本気を出すと速すぎて会話に全く付いて行けなかったので、次回はもっとよく聞き取れるようにがんばりたいです。

②仕事のペース配分を考える
体調を維持して毎日仕事をしっかりこなすことが船上では重要です。そういう点で、欧米人は仕事のペース配分が非常に上手だと感じましたし、残業を推奨しません。一度、私がシフト時間を大幅に越えてコアを見ていた際に、周囲から「明日までラボに来るな!とにかく寝ろ!」と一瞬ラボを出入り禁止にされそうになるくらいでした。仕事をだらだら続けることでひたすら疲れ果てるのではなく、オンオフをきちんと切り替える、これは見習わなければと思いました。さすがに最後の忙しいときはみなさん残業していましたが。

③自分の分野を良く知る
自分の専門分野をきちんと楽しく正しく理解してもらえるように噛み砕いた言葉でいろいろな言い回しを使って説明しなければならないと感じました。何度か自分の研究分野について話すことがあったのですが、自分がどっぷりその世界の言葉にだけはまっていて説明に困ったからです(単語のバリエーションも少なかった)。英語の問題があるので、自分の分野を英語できちんと説明することについて日本人には最初から厳しいけれども、日本語でもいいからもっと訓練するべきだと思いました。その点、co-chiefのBachさんはどんな分野の会話にもきちんとフォローするし、他分野の研究者へも面白く説明する、そして、突然ひょうきんになったり、イケメンになったり。やはり「男は引き出しがたくさんあったほうがいい」*と仕事中、謙太郎さんと何度かうなずきあったものでした。
*航海中はかなりの頻度で謙太郎さんから名言が飛び出していました。これはそのうちの一つです。

最後に“ほぼ女性”で構成されていた日本人研究者 (写真5)の皆さんに大変お世話になりました。仕事で疲れているときや英語で落ち込んでいるとき、霞さん、仙子さんと謙太郎さんの優しさと励ましが非常にうれしかったです。特に同じ岩石組だった謙太郎さんにはバカな話から真面目な話までお世話になりました。
JRに一緒に乗船した個性的な研究者と超個性的なテクニカルスタッフ、気さくな船員の皆さん、そして、このような機会を与えてくださった皆さんすべてに感謝しております。本当にどうもありがとうございました!

さて、航海が終わっても研究は始まったばかり、面白い結果が出ることを願って次に進みたいと思います。

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写真5:Mainly Japanese Girls!!

中村さん,ムチャ振りにもいつも笑顔で対応して頂いて有難うございます.

今回の船上レポートは,Photokunoichi針金さんにたくさんの写真を提供して頂きました.有難うございます.それでは,平山さん,お願いします.

航海終了にあたり初めて船上レポートをします、JAMSTECの平山です。
これまでずっと坂田さんにお任せしっぱなしでしたが(霞さん、ありがとう!)、彼女のユーモア溢れる楽しいレポートによって「JR航海はすばらしいものだ」ということがすでに十分伝わっていることと思います。そこで、かなり忘れっぽい質なので備忘録を兼ねて本音でこの航海を振り返ってみようと思います(注: ちょっとネガティブな本音も含みますが、あしからず)。

航海前、乗船研究者の一人から参加者全員に一通のメールが届きました。「この航海はCORK (long-term, subseafloor observatory) 設置が最優先されるので、コア採集は時間があったらやる程度。皆、時間潰しの仕事をたくさん持ってきた方がいいですよ。」という衝撃的なものでした。CORK設置は、コチーフ率いる巨大研究グループが莫大な研究費を使い、今後数年かけてこのサイトをじっくり研究するために欠かせない重要ツールなので、これが最優先という道理はよくわかります。しかし日本人含め今回の航海にだけ参加する者にとっては現時点では何のメリットもありません(たぶん)。という訳で、「え?コア採らないかも?! 2ヶ月もただ乗船するだけ?」という不安を抱きながら、それじゃあ、とせっせと船上で陸の仕事をする準備をしての乗船となりました。しかし、初めてのIODP航海、初めてのアメリカ船での生活、耳から正確な情報が掴めない状況という日常とかけ離れた生活が始まり、結局最後までゆっくり陸の仕事ができる状況ではなく、ほとんどは持ち越したまま下船となります。最終的には、サンプル無しかも・・という心配も杞憂に終わり、多すぎず少なすぎず、適当数のサンプルを得ることができました。他の研究者もそれなりに満足したと思います。よかった、よかった。

それというのも、トラブルが付きものというCORK設置が時間的には予定をオーバーすることなく進み、コアリングの時間が十分確保されたからです。しかしすべてがすんなり行くはずがなく、CORKにもいろいろありました。航海初っぱなのCORKの入れ替えでは、終了(成功)間際で予想外の事態が起き、直後にtropical storm到来で避難というダブルパンチを被ったコチーフの落胆ぶりと目の下のクマは周囲を大いに戸惑わせ、皆がこの航海で最も不安を感じた出来事でした。でも3日後には吹っ切れた表情をしていたので心配はご無用です。コチーフ率いる研究グループの目的の1つが、海底下の玄武岩の中には鉄酸化菌が優占する微生物圏が存在する、という仮説を証明することであるため、CORKの素材には十分注意が払われていました。玄武岩に含まれる鉄がエネルギー源であると仮定している生態系を、これから現場微生物培養器等を設置して数年かけて研究しようというのに、人工的な鉄構造物をそのまま設置する訳にはいかないからです。そのため本当はもっと効率良く深く掘りたくても、耐久時間ギリギリまでドリルビットを使ってビットを落として回収不能となってしまったら大変です(一度それが起き、途中まで掘った孔を一つ放棄しました)。何か問題が生じてもCORK設置が完了できるよう、時間配分を含めすべてに余裕を持ってオペレーションが行われました。そして最後の岩石コアリングとCORK設置が無事終了。その結果、当初多くの研究者が無理だろうと予想していた堆積物コアリングの時間が十分確保され、航海最後に怒濤の3日間を経験することに・・・。

私は夜シフトで微生物サンプルを処理しました。岩石コアと違って堆積物コアではほとんどの作業をcatwalkで行います。堆積物はcatwalkで1コアあたり20?30個の微生物用と、1?3個の間隙水用のwhole round coreを切り分け、微生物用コアはそのまますべて個人サンプルとなります。つまり多い時はトータル2 section分がごっそりwhole roundで跡形もなく持って行かれます。もちろん岩石コアでもpetrologistの悲しい眼差しや精一杯の抵抗に全く動じることなく、回収率10-30%の貴重且つ美味しそうなコアをごっそりwhole roundで持ち去るmicrobiologist達。微生物がメインの航海なので誰も正面切って文句は言えません(なんせ、研究者全員が“Mainly Microbe”と書かれたTシャツの着用を半ば義務づけられてましたから!)。最後に経験した堆積物コアリングでは、岩石と違ってコアリングのスピードが速く、初日の大混乱から徐々に慣れたとはいえ3日目には皆ヨレヨレ・・・。こんなのが一週間も続いたら過労で倒れますね。そりゃ健康診断も必要な訳だわ、と最後の最後で妙に納得。本航海では岩石コアリングの方が重要なのに、直近の作業且つ非常にしんどかったことから、堆積物が非常に強く印象に残っています。良かった点は、作業量が多かったので会話も多く、また皆でしんどい思いを共有し親近感がぐっと増したことです。皆、よく頑張った!

他のIODP航海でも同じかと思いますが、長い時間をかけ準備してきたコチーフの研究グループの計画を尊重し、それと競合せずにいかに貢献するか、というのが難しいなと感じました。先方が人手不足で出来ることは何でもやって欲しいと思っているならともかく、今回は最先端を走る飛ぶ鳥を落とす勢いの巨大グループだったので、グループ外の研究者はかなり遠慮し様子を見ながら出方を探るといった状況でした。今振り返るとあまり遠慮せず少々図々しいくらいでも良かったのかな、という気もしますが、正直よく分かりません(笑)。初対面の、しかも表情や言葉のニュアンスから感じ取れるものが少ない外国人とこういう状況で仕事をする機会は滅多にないので、とにかく反省点も含めて非常に良い経験になりました。また外国人、特にアメリカ人の(興味深い?)生態を知る貴重な機会となりました。その他、気づいたことなど

● 夜シフト
スタッフのシフトは0?12、12?0時でしたが、研究者は6?18,18?6時。夜シフトの私は18?6時シフトに生活サイクルを合わせるのに時間がかかり、成田空港の薬局で買った睡眠改善薬を使ったりしました。また体がシフト時間に慣れた後は、スタッフのシフトに合わせて13時頃に行われるミーティングは時々寝過ごして出られないことがありました。部屋の電気を全部消すと真っ暗になり寝過ごす可能性が高いので注意です。なお本航海ではコアリング期間が限られていたため、ルームメイトと部屋で一緒になる期間が結構あり、寝ている間にルームメイトが出入りすることも多く、当初、物音であまり熟睡できませんでしたが、部屋側に向いている耳だけに耳栓をしたら熟睡できるようになりました。両耳には間違ってもしてはいけません。そして壁側の耳のそばには目覚まし時計をお忘れ無く。

● 船内はとにかく寒い

出発準備をしている時は残暑が厳しく、おまけに出発2日前に家のエアコンが壊れたため寒さを想像するのが難しい状況だったので、防寒対策は万全ではありませんでした。でも本当に寒いです。侮ってはいけません。特に私が拠点にしていたPCルームは。このレポートも、裏がフリースの分厚いパーカーを着込み、首にはウールのストールを巻き(帰国時使うつもりで持ってきたのにまさか船内で毎日使うとは!)、冷え切った手でキーボードを打っています。もっと着込みたいです。足下が特に冷えるので分厚い靴下(できればハイソックス)があるとよいです。そんな冷えきった体に嬉しいのが、毎朝朝食で用意されるショウガたっぷりの中華風スープです。朝5時、食堂が開くのと同時に頂き、その後しばらくはストールなしで仕事ができました。

最後に、精神的に多いに助けられた日本人の皆さん、中村さん、針金さん、坂田さんにはどんなに感謝してもし尽くせない思いです。今回は日本人参加者が4人と非常に少なかったので、もし8人いたらどんな感じだったろうと想像してみたりしましたが、人数が少ない分、一致団結し2ヶ月間過ごすことが出来ました。皆さん、ありがとうございました。そしてお疲れさまでした!平山さん,有難うございました!ナイトシフトはとっても辛かったと思います(特に堆積物のコアリングではナイトシフトの間に上がってくる方が断然に多くて本当に可哀想でした).お疲れ様でした.

坂田は今回の船上レポートにひとつの想いを託していました.それは「もっとたくさんの学生さんにJRやちきゅうに乗ってほしい」ということです.ドクターやマスターの学生さんと話すと「乗ってみたいけど勇気がなくって」という声をよく聞きました.坂田の航海前と航海後の心理状態を正直に書くと,乗船前,長期の航海を思ってただただ不安でした.研究船に乗るのも初めてでした.日本語の空間ならまだしも,英語で勝負しないといけない空間で二ヶ月,初めての経験ばかり.「私は日本に正常な精神状態で帰って来れるんやろか」と不安で押しつぶされそうでした.「大西洋中央海嶺!もうめっちゃ行きたい!」と日本を飛び出したはいいものの,「思い切り良すぎたんちゃうか....もうちょっと物事よく考えなあかんのちゃうか....やっぱりあほやったか....」と,そんなことを考えながら日本を出る飛行機に乗っていました.船での生活はくじけることも,へこむことも,周りの方に申し訳なく思うことも,苦労することも,たくさんありました.でも,この航海を通じて得たもの,喜びや幸せの方がはるかに多いです.初めて見る外の世界での発見や驚き,世界各国から乗船されている研究者の方々との出会い,年齢も国籍も超えて出来た多くの友達....もし,乗船手続きをしようか迷っている時の私にタイムマシンで戻ってアドバイスが出来るとしたら,私は絶対に「乗りなさい」と言います.二ヶ月の航海での経験はとても貴重で贅沢なものです.これからの研究生活に必ず生きてくると思います.もしも機会がもてるのであれば,思い切ってどんどん乗らないともったいないと感じました.二ヶ月間,たくさんの国籍の研究者の方々と,研究にどっぷり浸れる空間はなかなか得られるものではないです.そこでこの船上レポートで,船上の生活を楽しく,かつ「坂田でも多くのことを学び,成長して帰って来れた」ことをお伝えしたかったのです.「航海に参加して本当に良かった.楽しかった.成長できた」と思えるのは一緒に乗船できた皆さんのおかげです.困ったときはいつも皆が支えてくれました.笑顔にしてくれました.この航海で出会えた全ての方に感謝しつつExp. 336の船上レポートを終わりにしようと思います.

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写真6:JRからの美しい夕日と.....

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写真7:仲良しポールと謙太郎さんの笑顔でお別れです

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レポート5「下船間近なのです.下船まであと10日です!(11月7日)」

坂田 霞 (大阪大学)

とうとう下船間近です.9月14日に日本を出国し,17日にバルバドスでJRに乗船してから長い時間が経ちました.下船は11月17日です.下船する場所はアゾレス諸島のポンタデルガダという場所です.あと少しです.下船まで二週間を切った頃から「ほんまもう二週間ないわー」「いつ家に帰れるの?」「どこ経由で帰るん?」という会話を聞くことが多くなりました.皆さん,家族や友達,自分の国が恋しくなってきています.坂田も生まれ育った大阪に帰って関西弁にまみれて,もうもみくちゃにされたいっ!!はっ,取り乱してしまいました.坂田は関西を長期間離れると国内の出張でも「関西弁にもみくちゃにされたい衝動」に駆られるのでいつものことです.ご心配なく.「帰ったら一番食べたいものは何?」と聞いてみると国柄が出てとっても楽しいです.フランス人の方は「美味しいパン,美味しいチーズにもちろんワイン!あとケーキもね」とウインク付きで答えてくれました.そうですよね,ワイン飲みたいでしょうね.私はこの夏にフランス行ってフランスパン,チーズ,ワイン,ケーキをきちんと体験したのですが,どれも素晴らしく美味しかったので「ほんまやんねー!」と日本人なのに激しく同意しました.アメリカ人の方は「美味しいステーキにサラダ,家で作ったピザが食べたい」とのこと.確かにアメリカっぽいですね.船のお肉もとっても美味しいと思うのですが,やはり違いがあるのでしょうか.坂田は「お寿司が食べたいな~生の魚とお米のステキなコラボレーション!あと日本酒もね!」と答えました.ポン酢と一味唐辛子をこよなく愛する坂田は,「家族でお鍋を囲んでポン酢と一味唐辛子の風味を心ゆくまで味わいたい」と言いたかったのですが,ポン酢の説明が難しすぎて断念しました.うどんにいっぱい一味を入れて食べてもいいなーと思ったり,日本への想いは募ります.家が恋しくなる一方で,船での研究のワクワク感と,この航海でめぐり合えた仲間達との共同生活の時間はあとほんの少ししかないのです.この事実が寂しくて一日一日が貴重だなとより一層思う今日このごろです.残りの時間も皆で楽しく仲良く笑顔で過ごさないともったいないですね.ということで今日も元気に挨拶運動です.「Hello! How are you?」

下船が近いということで,お土産作りを始めました.ミニミニカップの作成です.これは何かというと,真っ白のカップ(カップラーメンの紙じゃないカップをイメージして下さい)に好きな絵を描いて,海底に沈めます.それを再びデッキに引き上げると,水圧で小さくなったカップが出来あがります!坂田はこれがとっても欲しかったので,ワクワクしながら絵を描きました.せっかくの記念なので,「Exp. 336: Mid-Atlantic Ridge Microbiology」と乗船期間,JOIDES Resolutionの文字を書き,世界地図上の今回の掘削ポイントにJRを描きました.周りには可愛い微生物達(奇妙な未確認生物達?)を散りばめました(写真1).

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写真1:ミニミニカップ完成!テーマは「世界の海ではしゃぐ微生物達とJR in Mid-Atlantic Ridge」スケールのボールペンにもご注目ください!

カップの底には海とJRと「かすみ」の文字,カップの内側にも微生物達(宇宙からの怪しい侵略者達?)を散りばめました.このカップのいい所は小さくなるので絵が上手っぽく見えるところです.坂田は絵が下手なので細部が分からなくなるのは嬉しいです.だから写真1には小さくなる前のカップが写ってないわけです.決して撮り忘れではなく,絵が下手なことの証拠隠滅を狙ったわけです.でもこんなに下手だと公言してしまってはもうバレバレなので意味がないですね.縮む前のカップは後ろの白い綺麗なものを写してありますので,「ここまで縮むのかー!水圧やるなー!」とカップの変化をお楽しみください.
現在,今回の航海,初めての堆積物のコアリングに向けて着々と準備が進められています.早ければ7日(月)早朝(JR時間)に堆積物のファーストコアが上がってくる予定です.航海の終盤での新しい仕事になるので,緊張感が漂っています.

最後にもう一つ楽しいお話を.11月に入って,今回の航海のロゴを決める投票が行われました.一位を獲得したステキなロゴは,今回の航海のロゴに正式認定され,下船が近づくと持参した白いTシャツにこのロゴをプリントしてお土産にできます.JRの階段にも歴代のチャンピオン・オブ・ロゴ達が飾られていて,一位を飾ることはとっても名誉なことなのです.今回の航海の内容を上手に盛り込んだロゴを皆さん作っていらっしゃって,7作品のエントリーがありました.どれも上手なので選ぶのに時間がかかってしまいます.11月5日,ついにチャンピオン・オブ・ロゴが決定しました.ロゴの詳細は次回の船上レポートでお伝えします.お楽しみに!

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レポート4「ダブルパーティー&集合写真撮影会」(11月3日)

坂田 霞 (大阪大学)

レッツパーティーその1です.今回はサンプリングパーティーの様子をお伝えしようと思 います.サンプリングパーティーとは何かと言いますと,掘削されたコアのサンプルを, 下船後研究室に持ち帰って研究できるように,研究者同士が話し合ってどういう風に分け合うかを決定する場のことです.乗船前に「こういうサンプルがこれたけ欲しいです.こんな分析します」とリクエストを提出しているので,そのリクエストに基づいて,実際のコアを前にどの部分をどれたけ欲しいか,サンプルを使って何をしたいのか,分析手法は何を用いるのか,などを再度話し合い分け合っていきます.写真 1 はコアを前に「ここい いんじゃない?」と品定めをしている様子です.

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写真 1:コアを前にどこをもらえはいいか検討中の中村さんと平山さん

今回はハードロックのため,自分の名前 (苗字のアルファベット4 文字)が書かれたシールを欲しい部分に貼っていきます.坂田のシールはグリーンの「SAKA」です.貼っているうちにサカサカサカサカサカと楽しくなります.分け方か決まると,再度コチーフの方達のチェックを経て,オッケーがもらえるとカットするラインをチャコペンのような鉛筆で引いていきます.その後,そのラインに沿ってカッティングしてもらいます.サンフルは船の最下部にある巨大な冷蔵庫(4°C)または冷凍庫(-20°C)で保管します.

10 月 19 日は船首で集合写真が撮影されました.快晴でとてもいい天気です.写真日和です. たくさん写真を撮りました.今回はチームアジアの写真を公開します(写真 2).

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写真 2:チームアジア左上から,パクさん,坂田,針金さん,中村さん 左下から,平山さん,フェンピンさん

日本,中国,韓国から計 6 人乗船しているので,記念撮影です.上海から乗船されているフェンピンさんは,いつも娘のように私に優しく接して下さります.一緒にご飯を食へたり,ジム に行ったり,映画を見たり,今後の人生について語り合ったりして仲良くさせてもらっています.国籍も年齢も超えてお友達ができるなんて素敵なことだと思います.今回は日本人が4人乗船しているので日本語も話せて,それほどホームシックにならずにすんでいます.一緒に乗船できてありがたいです.日本人 4 人は,中村さんと針金さんがPetrologist, 平山さんがMicrobiologist,坂田がOrganic Geochemist として乗船しています. Petrologistの仕事は,コアの記載を行うことです.揺れている船内でルーペを使ったり顕微鏡を使ったり,岩石の分類のための細かい作業が続きます.Microbiologistの仕事は,固いハードロックのサンプルをハンマーでガンガン砕くのが重労働で大変そうです.平山さんは低温室 の嫌気チャンバー内でガンガン砕いているので,服を着こんでいないと寒いのと,耳栓をしていないと耳が痛くなるので大変そうです.Organic Geochemistの仕事は,堆積物中の炭化水素ガスのモニタリングと炭酸塩含有量や炭素,窒素,硫黄の元素量を測定することです.坂田は中村さんと針金さんが作業されているコアラボによくお邪魔します(写真 3). 上がってきたコアのことなど,あれこれと質問しては,中村さんと針金さんが丁寧に答えてくださるので,これからもコアラボにちょくちょく遊びに行こうと思います.

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写真 3:コアラボで中村さんに色々質問している様子

ちなみに,10 月20日,針金さんのご提案で「日本人会」を開きました.食堂で納豆汁,お味噌汁,柿の種を食べながら日本語で語り合いました.柿の種って醤油の味がちゃんとするんだな?としみじみ感じました.気兼ねなく日本語が話せてとってもリラックスできました.船には電子レンジがありますし,お湯はいつでも使えるので,レンジでチンできるご飯や,お味噌汁などを持参されると,とってもいいと思います.
10月25 日午前 6 時頃,二つ目のホールでのファーストコアが上がって来ました.今回も ハードロックです.コアが上がってくると,素早く 1.5m 間隔にカットして,青色と白色の キャップでフタをします.その後,微生物屋さんによって,微生物用にサンプルが選別さ れます.このサンプルは細かく砕かれ,DNA,RNA,培養実験に使われます.微生物屋さんの選別後は岩石屋さんが,まるで子供を可愛がるような優しい眼差しで,「これは面白い ね」「あっなんだこれは!」と盛り上がります.この時点では「触っちゃだめよ!動かしち ゃためよ!」と注意されているので,顔を寄せてじーっと見守っています(写真 4).

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写真 4:上がってきたばかりのコアを見つめる坂田,針金さん,中村さん. 早速,中村さんにレクチャーして頂いています

すぐにそれぞれのピースにどっちが下部に当たるか印がされます.その後コアは半割されるのですが,半割する前に非破壊で行われる分析がいくつかあります.それは,コアの写真を撮ることと,帯磁率(MS),γ線減衰密度(GRAPE),自然γ線(NGR)の測定を行うことです.これらの非破壊分析の後にコアが半割され,保存用(アーカイブハーフ),分析用 (ワーキングハーフ)に分けられます.その後,アーカイブハーフの半割された面の写真を撮り,帯磁率と色反射率(Color Reflectance)を測ります.また,ワーキングハーフからは P 波,体積,質量,熱伝導率,ICP-AES,XRD,CHNS 元素分析の分析用にサンプルが切り出されていきます.アーカイブハーフでは記載の作業が行われていきます.写真は 記載をしている真剣な表情の中村さんと,お茶目な一面を見せて下さる中村さんです(写 真 5 ).

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写真 5:お仕事中にお茶目な姿を見せてくださる中村さんの様子. 1枚で3つの中村さんの表情を楽しめるステキな構成です

10 月 31 日はハロウィンです.今日は 22:30 からハロウィンパーティーがあります.今日も コアラボに行くと,針金さんに楽しい写真を見せてもらえました.

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写真 6:いつもとどこか様子の違う中村さん

写真 6 は顕微鏡に向か って作業されている中村さんです.あれ,なんだかいつもの中村さんの背中ではないです ね.少し様子が違います.どこが違うのでしょう.それでは呼んでみましょう「中村さー ん!」

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写真 7:ネコに仮装しつつお仕事をしている笑顔の中村さんネコバージョン

「はいはーい」(写真 7)振り返った中村さんはなんと可愛らしいネコミミをつけていまし た.猫に仮装中でいつもと様子が違ったんですね.今日も優しくお茶目な中村さんです. 針金さんはこのネコミミをコアラボの人達につけてもらって,写真をたくさん撮られていました.もちろん坂田もこの後,ボーリングの指導も受けながら写真を撮って頂きました. 針金さん,いつもステキな写真をありがとうございます!

レッツパーティーその 2 です.ハロウィンパーティーが始まりました.パーティーでは, たくさんのお化けたちが大集合していました.ゾンビ,死神,ドラキュラ,化け猫,黒猫, 海賊,水兵さん,なぜか古代ギリシャ人.微生物の可愛いぬいぐるみもカラスに仮装中です.「お菓子をくれなきゃイラズラするぞー」(写真 8)もちろん,たくさんのお菓子も用意されました.リンゴあめ(坂田はこれを見て秋祭りを連想して日本が恋しくなりました. もう日本は 11 月で寒いでしょうね),クッキー,チョコレート,ジュース,ポップコーン, ナッツなどなど…クッキーはハロウィン仕様でとっても可愛く,そして美味しいです(写 真 9).陽気なお化けたちは朝まで踊り続けたのでありました.

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写真 8:「お菓子をくれなきゃイタズラするぞー」とカラスに仮装中のぬいぐるみ

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写真 9:ハロウィン仕様の可愛らしいクッキー

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レポート3「船上での娯楽」(10月24日)

坂田 霞 (大阪大学)

そろそろ航海は残すところ約半分となり,折り返し地点です.仕事の合間の息抜きは大切な時間ですし,一緒に乗船している方々と仲良くなれるいい機会になります.乗船中,自由な時間を一体どのように楽しく過ごしているのか.今回は船での楽しい時間の過ごし方をご紹介します.

1.食事
船の食事は大変美味しいです.新鮮なお野菜やサラダ,フルーツも毎日出ますし,メインの種類も豊富です.食事の時間は5~7時,11時~13時,17時~19時,23時から1時,6の倍数±1時間です.この時間に食堂に行くと,スープやサラダ,メインの料理を食べることができます.カレーのバリエーションが多くてどれもとても美味しいです.食事の時間以外にも数種類のケーキやパン,コーンフレーク,リンゴやオレンジなどの果物,クラッカーが常にスタンバイされていて,ついつい誘惑に負けてしまいます(写真1).

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写真1:常にスタンバイされているケーキ達.数種類が用意されている.

平山さんのお気に入りはアップルパイです.たくさんリンゴが入っていて,甘すぎず美味しいです.コーンフレークも沢山の種類があり,坂田はレーズンの入ったものが好きです.飲み物の種類も豊富で,紅茶,コーヒー,水,炭酸水はもちろんのこと,緑茶,牛乳,オレンジジュース,ぶどうジュース,りんごジュース,コーラ,スプライト,ファンタが常備されています.また,これが非常に嬉しいのですが,ソフトクリームがいつでも食べられます.ここでひとつ豆知識.ソフトクリームは和製英語で,英語ではアイスクリームと呼びます.メインでは魚料理が毎回美味しいです.普段,日本で食べているものや飲んでいるものを持ってくると日本食が恋しくなったときに重宝します.坂田はよく昆布茶を15~16時頃に食堂で味わっています.昆布茶を見たことのない人達は興味津々です.「飲んでみる?」とオススメしてみると「海のにおいがするー」っと,皆さん香りだけ楽しんでいました.飲むのには勇気がいるようです.「スープだと思うと飲めるけど,お茶って言われると不思議な感覚」との感想でした.
食事自体が美味しいだけでなく,食堂のお兄さん達が明るく陽気な人ばかりなことにも癒されます.最近では「こんにちは」「もしもし」「おはよう」「友達」「ありがとう」などいろんな日本語であいさつをしてもらえてとても嬉しいです.船での生活は,食事を作って下さる人,掃除をして下さる人,洗濯をして下さる人,様々な人々に支えられて成り立っています.いつもありがとうございます!

2.メール,インターネット,電話
JRから日本へはリアルタイムでメールを送ることができます.ネットもリアルタイムで使えます.これは本当にありがたいです.やはり英語だけの生活では,日本語が恋しくて仕方がなくなります.坂田は喋るのが大好きです.日本では友達や家族と話すのに飽き足らず,電車で知らないおばさんとよく仲良くなりますし,買い物に行くと店員さんとあれこれと世間話をしょっちゅうしています.どうしても日本語で話したくなります.そういうときに友人からメールをもらえるととても心が癒されます.日本のニュースも毎日チェックすることができます.これで帰国後の浦島太郎化を防止できます.日本はだいぶ涼しい(寒い?)とのこと,また日本が暑かったころに出国したので実感がわきませんが情報はゲットしています.帰国時のために薄手のジャケットを一枚持ってきましたが,後は全部夏物です.さぁーどうやって帰ろ...そんな心配はさておき,「今の時代,そりゃメールとネットできるぐらいじゃビックリせんわ」とお思いの皆さん.電話もできるんです.船から日本に電話もできるんです.大西洋のど真ん中から日本に電話ができるんです!これはビックリです!衛星を飛ばしてくれた人,ありがとう!早速,実家に電話をしてみました.プルルル.「(父)はい.坂田です」「(娘)お父さん?霞ですよ.皆元気?ビックリしたやろ~私もビックリ~」「(父)んっ?霞?はっ?えっ?....あの,今,忙しいんで」「(娘)あっそうなん?あの...船からかけてるんよ?」「(父)....?」という何ともぎこちないやり取りをしました.まさか大西洋のど真ん中から電話が出来るとは思わなかったらしく,声がすごく似ている高度なオレオレ詐欺と警戒されたようです.しかし,一家の主はこれくらいの警戒心を持っていないといけないので良いことです.とにかく,大西洋から日本に電話ができるのはそれほど衝撃的なことです.音声もクリアに聞こえるので,私自身とても驚きました.メール,電話,インターネットは日本と繋がっていられる大切なツールです.

3.デッキからの美しい景色
天気のいい日にデッキから海や空を眺めるのも気分転換に最高です(写真2).昼間の海は濃いブルー,空は淡いブルーです.18時頃には夕日が美しいです(写真3).また,ヘリポートには「JOIDES Resolution」の文字が非常にかっこいいです(写真4).先日は船の周りにクジラが泳いでいたとうわさを聞きました.残念ながら坂田は目撃できませんでした.残念です.次回に期待します!

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写真2:デッキで外のフレッシュな風を楽しむ中村さん.

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写真3:夜が近づきつつある海と空.色のグラデーションが美しいです.

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写真4:ヘリポートからの眺め.かっこいいJOIDES Resolutionの文字.

4.ジム
船内にはジムがあり,いつでも運動できるようになっています.船内では普段の生活より運動量が少ないので,ジムで定期的に運動すると健康的です.坂田は運動が苦手なので,ちょくちょく部屋をのぞいては少しだけ早歩きをし,十分運動した気になっています.決して走りません.船は揺れるのでよく転ぶ坂田には危険です.あくまで歩くことにこだわります.用途が分からないのですが,数種類のマシーンがあり,体を鍛えることも可能です.坂田が使えるのは歩いたり走ったりするもののみです.十分運動できていると信じています.信じたいです.信じさせてください.

5.映画
船内にはムービールームがあり,大きなスクリーン,良いスピーカーで映画を楽しむことができます.ハードディスクには色々な映画が入っていて,どれを見ようか迷ってしまいます.先日は「オペラ座の怪人」と「2012」を見ました.坂田は怖いものを見ると眠れなくなる習性があります.オペラ座の怪人はほとんど顔を覆っていてスクリーンを見られませんでした.よって話があまり分かりませんでした.2012は手に汗握るスリリングなシーンが沢山あり面白い上に,生きるか死ぬかのギリギリの場面で見せる,人それぞれの行動に考えさせられるものがありました.あっ,映画の紹介ではなくて施設の紹介ですね.すみません.週末に映画を見るのも楽しい息抜きの一つです.

6.図書館
ムービールームの隣には本棚がたくさん並んでいる部屋があります.ここにはたくさんの小説やUNOなどのゲームが置いてあります.読書が好きな坂田は初め「おぉー!」とテンションが上がったのですが,すぐにテンションが下がりました.「英語ばっかやん.当たり前か」しかし!よーくよーく見ると6冊ほど日本語の本を発見しました.やったぁー!きっと以前の航海で日本人の方が置いていって下さったんだと思います.日本語の本を見つけたときはとても嬉しかったです.本を置いていって下さった方々,ありがとうございます.早速「探偵ガリレオ」を読ませて頂きました.坂田の一日の終わり方は,ベッドに寝転がりながらiPodで音楽を聴きつつ小説を読むスタイルをずっと貫いています.ルームメイトには「そんなに毎日本読んでたら図書館の本読み尽くすんちゃうか~」と笑われています.「日本語の本だけやったらありえるわ~もうちょっと大事に読まなあかんね~」と返します.坂田は小説を三冊持参しました.大事に大事に読んでいましたがもう二冊を読んでしまったので,とても有難い発見でした.もっと正直に話すと日本からの行きの飛行機で一冊目の本を4分の3を読んでしまい後悔していました.それなのにガリレオが面白くて,懲りずにまたハイスピードの二晩で読んでしまいました.もっとゆっくり味わうべきでした.ごめんなさい.そして,また本をお借りします~.

7.乗船されている皆さんの笑顔と優しい心遣い
10月17日で下船まであと一ヶ月となりました.すると,可愛いメッセージ付きのキャンディーを頂きました(写真5).こういう心遣いがとっても嬉しくて心が癒されます.テンションが上がり,クジラを泳がせる真似をして遊び笑われました.こういう和やかな雰囲気がとても有難いです.また,10月17日22:30からムービールームでダンスパーティーが開かれました.曲に合わせて各々好きに踊ったり,男女でペアになって踊ったりします.「日本とは全然文化が違うな~」なんてしばらく見ていると,名前を呼ばれ,ついには円の中心で踊ったりすることになりました.針金さんの「これは楽しんだもん勝ちよ」の言葉を信じて「えぇーい!」となんだかよく分からない,阿波踊りのような,カクテルを作るときの動作のようなダンスをしました.せっかく男女ペアで踊っても相手の足を踏みかけたり,転びそうになったり,どんくささに溢れていましたが,とにかく,楽しんだもん勝ちなのです!
このように様々な楽しい時間の過ごし方が船ではできます.乗船している方と映画を見たり,ジムで運動したり,食堂でお茶をしたりすると,とっても仲良くなれるので,息抜きの時間も大切な時間の一つです.

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写真5:折り返しをお知らせしてくれる可愛いクジラキャンディー

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レポート2「待望のファーストコア,そして嬉しい楽しい出来事達」(10月17日)

坂田 霞 (大阪大学)

ジョイデス時間10月5日午後11:00(日本時間10月6日午前11:00.日本とJRでは時差12時間です),「Core on deck」と放送が船内に響きます.「Core on deck」は何のお知らせかというと,「デッキに掘りたてのコアが上がって来ましたよー」というお知らせです.今日は夕方あたりから「航海初めてのコアはぜひとも見たい!」と研究者達は「Core on deck」の放送を心待ちにしていたのです.私も「今日は眠れへんわ!長い夜になるわ!ドキドキ」としっかり昼寝までしてその時をソワソワと待ち構えていました.「うしっ!今日は夜通し起きてても平気やかんな!」と気合いが入っています.そして,ジョイデス時間10月5日午後11:00,「Core on deck」と放送が流れた瞬間,「うお,来た!」とか「Wow!」と口々に短い感想を述べた後,皆さん素早くデッキに向かいます.私も転ばないように注意しながらヘルメットと防護メガネを抱えてデッキに走ります.デッキに到着すると,あわただしく掘りたてのコアの処理が始められます.持ち運びしやすいように1.5mずつに切断した後,コアの上下が分からなくならないように下側に白色,上側に青色のキャップを素早くはめてふたをします.「空が青いから上が青い」と覚えましょう.「下の海も青いやん」とつっこまないでください.混乱を招く恐れがあります.特に坂田はすぐに混乱しますのでやめましょう.実験室に運ばれたら,まず,微生物学者の方々がいくつかの試料を選んで素早く微生物実験室に持っていきます.酸素に触れると死んでしまう微生物もいるので,とにかく手早く処理をします.「生きていて下さい,微生物さん達」とお願いした後,岩石学者の方々が,どの面で半割するか,研究用にまわすものと保存用にまわすものをどうするか,を相談します.皆さん真剣な表情です.初めてのコアは回収率が非常によく,皆さん笑顔でいっぱいです.あぁー夜更かしして待ったかいがありました!皆さんの笑顔がこぼれたところで,仲良し三人組でテンションが上がり,たまらず「Yeah!」と歓喜の舞をしました.仲良し三人組とは,フランス出身のポール,スペイン出身のタニア,そして坂田です.ちなみにタニアは坂田のルームメイト(居室は二人部屋)です.そして歓喜の舞をバッチリ撮られていました (写真1:針金さん撮影).ちなみにこの写真は「ちょっとうまく撮れなかったからもう一度踊って」とテイク2をお願いされ再度踊っている場面です.次もいいコアが上がってくるようにと笑顔で踊ります.非常にウケたので大阪人としては嬉しい限りです.ポール,タニアありがとう!和やかな雰囲気でコアの処理は進んでいきます.

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写真1:ファーストコア歓喜の舞(左からポール,タニア,坂田)

「あぁーええもん見たなー」と安心すると,無性に眠たくなってしまいました.「んっ,昼寝したんやろ.しっかりせなあかんよ.子供ちゃうねんよ」とバシバシ頬を叩きますが眠いです.「今日の夜のためにどんだけ寝て備えたと思ってんねん….ふぁー明日も沢山よいコアが上がってきますように.ぐぅー.」と頭が朦朧とし耐え切れず就寝です.この耐え難い睡魔に襲われる現象を,人は「ゆりかご効果」と呼びます.JRは大きな船なので,大きな揺れは感じませんが,常に心地よく揺られています.このため,陸上では考えられない眠気に襲われます.先日は私もタニアも10時間も寝てしまいました.起きて早々「ワールドレコード,イエーイ!」と二人ではしゃぎました.もうラテンのノリが楽しくて仕方ありません.
コアが続々と上がってくる中,10月7日のランチは初バーベキューでした.皆で甲板に出て,いい天気の中,気持ちよく食事をします.いい天気過ぎて日差しが強いので,日焼け止めとサングラスは必須です.「イエーイ!」と掛け声をかけてサングラスをかけるとウケました.今日は絶好調な気がします(勘違い?).新鮮な野菜,サラダ,網には色々なお肉たち,えび,とうもろこし,じゃがいも,そしてデザートにはケーキたちが並びます.坂田は「えびとコーンとチキンをください」と注文します.食堂のお兄さん達は「相変わらずこの子は魚介か野菜ばっかやなー」という悲しげな目線を送ってきます.はい,魚介が大好きです.とにかくえびを,えびを早く下さい.今日はプリンも食後に食べました.満足満足.すると,突然海を眺めていた人々が「おぉー!」っと歓声をあげたあと「マヒマヒ,マヒマヒ」と言っています.「えっ!?マヒマヒ?ちょっとどないしたん!?大丈夫!?」聞くとマヒマヒ(mahimahi)とはシイラの仲間で魚の名前だそうです.船の周りには魚がちらほら集まっていました(写真2).

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写真2:船の周りに集まる魚達.これはmahimahiではないです.

そんな楽しいバーベキューも終わり,10月9日,「日本は三連休でええよなー今回の航海結構三連休被ってるから損してるわー」なんて思っていると,今日はとても素敵なディナーが用意されていました(写真3).そうです,ジャパニーズ寿司です.提灯,刀,扇子などの飾りつけも綺麗で,寿司パーティーという感じです.パチパチパチ!中国のかほりがしないでもないですが,それは内緒にしておきましょう.各自好きなものをここから選んで食べます.少なくなると食堂のお兄さん達が素早く追加していってくれます.「よし,今日はバイキング形式やから少ない量を味わって適度な満腹感を楽しめる」と思っていると,奥から食堂のお兄さんの目がキラーンと光っています.「ヤヴァイ,食べる量チェックされてる」とドキドキしながら適量をお皿にとると案の定,「霞,もっと食べなさい」と言われてしまいました.あうぅー見つかった!「One more. One more.」はい,もう一個だけやで.

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写真3:美しい飾り付けのお寿司達.まるでお正月のよう.

今日はお味噌汁もあり,感動的です!さぁー今日は日本に帰った気分で食べるぞ!すると「お箸があるよー」との声.ホンマや!お箸や!すごい!皆さん,約一ヶ月ぶりにお箸に出会えた感動をご存知でしょうか.離れ離れになってしまった恋人に思いがけず偶然出会うようなものです.「あぁーあなたはここにいたのね.会いたかったのよ.会えて嬉しいわ(ホロリ)」と感動しながら,お箸でお味噌汁とお寿司を頂きます.お寿司は日本風とは少し異なりますが,これはこれで大変おいしいです.お味噌汁は...おぉーなんてことだ!日本で飲むお味噌汁みたい!豆腐とわかめのお味噌汁です.感動にひたっていると「霞はどんだけ喜んでるんだ」,「彼女はハッピーガールね」,「よっぽど日本が恋しいんじゃない」など,様々な感想が飛び交います.それらを適当な笑顔で返しながら,心をお味噌汁に集中させ,心行くまで味わいました.日本の裏側,大西洋のど真ん中に来て最近思うのですが,食事が人生に占める割合は相当な大きさだと実感しています.船の食事はとっても美味しく,毎日満足しているのですが,今日の味噌汁&寿司攻撃は鮮やかでした.美味しい!素敵過ぎる!「自分は日本人なんや」と大切なことに気づいたお寿司パーティーでした.

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レポート1「いざ出航!大海原へ」(10月5日)

坂田 霞 (大阪大学)

9月16日から「Mid-Atlantic Ridge Microbiology (Exp. 336)」の航海が始まりました.今回の航海の目的は「玄武岩中での微生物生態系を探る」ことです.これまでは堆積物中の微生物生態系が主に調べられてきました.玄武岩中の微生物生態系を調べるのはとてもチャレンジングな試みです.どんなエキサイティングな結果が待ち受けているのか.大きな期待をのせて約2ヶ月にわたる航海が始まります!ということで,第一回は大阪大学,博士後期課程一年の坂田が船上の生活をレポートさせて頂きます.学生の目線から,乗船時の不安やドキドキ,ワクワクをお伝えできればと思います.よろしくお願いします.

今回,日本からは4人の研究者が乗船します.日本人乗船研究者は9月15日にバルバドス入りし,16日に無事JOIDES Resolution号に乗り込みました.今回は日本人全員IODPの乗船は初めてです.私,坂田にいたっては研究船に乗ること自体が初めてです.出国時は不安99%,ワクワク1%というような極限的な心理状態でした.日本国内でも二ヶ月も出張で自宅を離れたことはありません.成田空港を飛び立った時は「あかん,ほんまに日本出てもうた.無事に帰って来れるんやろか...足をひっぱらずにちゃんと仕事せな,役にたたなほんまあかん...」と不安でいっぱいでした.「泳げへんけど大丈夫やろか...バルバドスって一体どんな国なんやろ...」など,どうでもいいところまで心配になります.しかし!JOIDES Resolution号を見てワクワク感が急上昇しました.大きい!でかい!立派!すごい!「こんな素敵な船に乗れるなんて,自分はすごく幸せなんだ!」と一気にテンションが上がります.船に荷物を運び込んだあとは,近くのバーで乗船研究者の皆さんと最後の晩餐(最後の飲酒)です.船にはお酒を持ち込んではいけません.今回は,アメリカ,ドイツ,フランス,イギリス,ノルウェー,スペイン,デンマーク,中国,韓国,日本と様々な国から研究者が乗船されています.大勢での食事はワイワイと楽しく,あっという間に夜は更けていきます.写真は,晩餐後にバルバドスのブリッジタウンの港で撮られたJOIDES Resolution号です(写真1).あぁー美しい.

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写真1:闇夜に浮かぶ美しい JOIDES Resolution号

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写真2:芸術的な白鳥のシュークリーム

乗船前に,私が心配していたことが大きく二つあります.英語能力と食事です.当たり前ですが,船での会話は全て英語です.出国する前から絶対に守ろうと決めていたルールがあります.それは「誰よりも元気に笑顔で挨拶をすること」.英語が不得意とか言ってる場合ではありません.苦手だと思うなら,どこかで人より勝るポイントを作らないといけません.まずは挨拶で勝負しようと早速挨拶運動開始です.「Hi! Good morning!!」.もう一つは食事の心配です.私はポン酢と一味唐辛子をこよなく愛しています.あっさりした日本食が大好きです.欧米のこってりした食事に体はついていくのか...しかし,これは全くの杞憂でした.船の食事はとっても美味しく,特にお魚は美味です.中華風のあっさりしたスープも美味です.デザートも常にスタンバイされていて,中には芸術的な美しいデザートもあり(写真2),誘惑が多いです.食事の際は,うっかりすると食べ過ぎてしまうので注意しないといけません.毎回「少量にしてください」と食堂のお兄さんにお願いをしないと大変なことになります.乗船の際には体重の増加にご注意ください.食堂のお兄さん,悲しげな瞳をしないで,胃が大きくないだけで,とっても美味しく頂いてますよ~!それでもたまに,日本食が恋しくなるので,日本から持参した昆布茶を飲んで癒されています.乗船の際には,普段自分が飲んでいるもの,食べているものなどを持参すると気分転換にいいと思います.

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写真3:ラボツアーの一場面.真剣です

出航してからまもなく,ラボツアーが行われました.船にあるラボを全て見て回ります(写真3).写真にあるように,外に出るときはヘルメットと防護メガネをかけなければいけません.自分が分析で使う装置をもっと詳しく聞きたかったので,後日テクニシャンの方にお願いして見学に行きました.テクニシャンの方々は,各実験室にいらっしゃって,分析のスペシャリストです.細々と質問したり,これを見せてあれを見せてと色々お願いしましたが,終始笑顔で優しく対応して頂きました.乗船されている方は皆いい人ばかりで,素敵です.素敵すぎます.皆さんの笑顔と陽気さに癒されて,坂田の不安はどんどん小さくなっていきます.

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写真4:人を詩人にさせる青い空と青い海

船はどんどん進み,見渡す限りの海と空です(写真4).こんなに青に囲まれた景色は初めてです.海の青は水深に比例して濃くなっていきます.こんなに濃い青色をした海は見たことがありません.「陸がないのすげー」と子供のような感想から,「空の青と海の青は,それぞれ違う美しさをもっているのね」と詩人のような感想まで思わず述べてしまいます.恐るべし,美しき青.さぁーこれからどんなサイエンスが待っているのか.次回の航海レポートもお見逃しなく!

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