2050 Science Framework
国際深海科学掘削計画(International Ocean Discovery Program;IODP)は、2013年10月に開始した多国間科学研究共同プログラムであり、「IODP Science Plan 2013-2023: Illuminating Earth‘s Past, Present, and Future」に基づいて実施されています。
2024年以降の海洋科学掘削の指針として、2020年秋に、海洋科学掘削2050サイエンスフレームワーク(2050 Science Framework: Exploring Earth by Scientific Ocean Drilling)が出版されました。このフレームワークは 650 名を超える研究者が、インド、日本、ヨーロッパ、オーストラリア/ニュージーランド、アメリカ、そして中国で開催された 6つのワークショップで議論した成果を持ち寄り、研究コミュニティのアイデアを結集して創り上げたものです。重要なフロンティアやその実現に必要な項目などを網羅した124ページの完全版、各項目の要約を掲載した12ページの概要版、2ページのパンフレットが用意されておりますので、下記からご覧ください。
◆2050 Science Framework 原文(英語)
http://www.iodp.org/2050-science-framework
J-DESCでは、海洋科学掘削2050サイエンスフレームワークに基づき、J-DESC コミュニティが重点を置く内容をハイライトしたパンフレット等を作成しました。
◆パンフレット(A4)
広くみなさんに知っていただくためのパンフレット
◆リーフレット(A3二つ折り)
パンフレットよりも詳しい内容について説明するリーフレット
さらに、海洋科学掘削初心者の学生さんや専門が異なる方にも読んでいただくため、サイエンスライターによるわかりやすさ重視の改訂を施した『海洋科学掘削2050サイエンスフレームワーク 日本語要約版』を作成しました。
「海洋科学掘削2050サイエンスフレームワーク」や「海洋科学掘削2050サイエンスフレームワーク 日本語要約版」の策定、執筆、出版にいたる経緯については、J-DESCニュースレター14号にて詳しくご紹介していますので、こちらも是非ご覧ください。(リンク:https://j-desc.org/jpn/wp-content/uploads/2021/05/JDESC_NewsLetter-vol14_final.pdf)
国際深海科学掘削計画(IODP)とは
国際深海科学掘削計画(International Ocean Discovery Program;IODP)は、海底下の堆積物や岩石を掘削し、地球の歴史やダイナミクスを解明することを目的とした、多国間科学研究共同プログラムです。2013年10月に開始し、2021年7月現在、22か国が参加しています。
深海科学掘削は、月を目指すアポロ計画と時を同じくして始まった、マントルへの到達を目標とする「モホール計画」を起源とし、1968年にアメリカのDeep Sea Drilling Project (DSDP)に受け継がれました。その後、 IPOD (International phase of Ocean Drilling)、ODP (Ocean Drilling Program)と引き継がれ、統合国際深海掘削計画(Integrated Ocean Drilling Program:IODP)を経て現在に至ります。
海底を掘削するためのプラットフォームは、アメリカのジョイデスレゾリューション号、ヨーロッパの特定任務掘削船、そして日本の国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)が運用する地球深部探査船「ちきゅう」です。
IODPに関する科学プロジェクトの推進や研究者の支援を担うProgram Member Offices(PMO)が設置されており、J-DESCは日本におけるPMOの役割を担っています。
IODPのホームページ;
http://www.iodp.org/
IODP科学計画書「 Illuminating Earth’s Past, Present, and Future」
IODPは2011年に策定された科学計画書「IODP Science Plan 2013-2023: Illuminating Earth’s Past, Present, and Future」に基づいて実施されています。この科学計画書に沿って科学掘削提案が提出され、審査を通過して高い評価を得た第一級の提案が実行計画に組み込まれ、掘削研究航海が実施されます。
本科学計画書では、以下の4つの主要テーマが示されています。
1.気候・海洋変動:過去を読み、未来を予想する
2.生命圏フロンティア:地下生命多様性および生態系による環境への影響
3.地球活動の関連性:深部プロセスおよびその地球表層環境への影響
4.変動する地球:人類の時間的スケールに対するプロセスおよびハザード
IODPの枠組み
IODP組織図
IODP Forum
IODP Forumは、議長と参加各国の各組織代表からなる会議体で、IODPの計画全体を俯瞰し、掘削船の運用、参加各国の連携、将来計画に関する調整・提言を行います。
Facility Board
IODPに供する掘削船の運用計画に対して提言・承認する運用委員会。アメリカではJOIDES Resolution Facility Board (JRFB)、欧州海洋掘削研究コンソーシアム(European Consortium for Ocean Research Drilling; ECORD)ではECORD Facility Board (EFB)、日本ではChikyu IODP Board (CIB: 「ちきゅう」運用委員会)が設置されています。
Program Member Office: PMO
IODP 参加各国においてパネル委員や乗船研究者の公募・推薦等を行うとともに、国内での研究者窓口や、各種国際対応案件の窓口となる機関。日本ではJ-DESC Support Office、アメリカではUS Science Support Program (USSSP)、ECORDではECORD Science Support & Advisory Committee (ESSAC)がこの機能を持ちます。
Science Operator
IODPにおいて、掘削船の運用・管理、データ管理、掘削コアの保管・管理をはじめとする各種業務を実施する組織。日本では海洋研究開発機構(JAMSTEC) 研究プラットフォーム運用開発部門(MarE3)、アメリカではJOIDES Resolution Science Operator (JRSO)、ECORDではECORD Science Operator (ESO)がこの機能を持ちます。
科学評価パネル及び環境保護安全パネル
IODPに提出されたプロポーザルの科学的内容の評価を行うScience Evaluation Panel: SEP(科学評価パネル)と掘削サイトの安全性及び掘削による環境影響評価を行うEnvironmental Protection and Safety Panel: EPSP(環境保護安全パネル)にはJ-DESCからも委員を派遣しています。これらのパネルは JOIDES Resolution Facility Boardの下に設置され、Science Support Officeによって運営されています。
J-DESCからの委員
科学評価パネル(Science Evaluation Panel: SEP)
委員氏名 | 所属 | 専門 | 任期 |
---|---|---|---|
Science subgroup | |||
橋本善孝 | 高知大学 | Tectonics, structural geology, geomechanics | 2019年10月~2022年9月 |
松崎賢史 | 東京大学AORI | Paleoceanography, micropaleontology | 2019年10月~2022年9月 |
山口耕生 | 東邦大学 | Paleoceanography, Microbial biogeochemistry | 2020年10月〜2023年9月 |
針金由美子 | 産業技術総合研究所 | Petrology and structural geology | 2021年10月〜2024年9月 |
仲田理映 | 東京大学 | Marine geophysics and tectonics | 2021年10月〜2024年9月 |
Site Survey subgroup | |||
山本由弦 | 神戸大学 | Structural geology, Marine geophysics | 2020年10月〜2023年9月 |
白石和也 | JAMSTEC | Marine geophysics | 2020年10月〜2023年9月 |
環境保護安全パネル(Environmental Protection and Safety Panel: EPSP)
委員氏名 | 所属 | 専門 | 任期 |
---|---|---|---|
朴 進午 | 東京大学大気海洋研究所 | Marine geology, geophysics | 2016年10月~2022年9月 (2期目) |
掘削プロポーザル
IODPの仕組みとプロポーザル提出について
- IODPのウェブサイト(http://www.iodp.org/proposals/submitting-proposals)を参照ください。
- 新しいプロポーザルガイドライン(Proposal submission guideline)が2020年7月に改定され、2020年10月1日締め切り分から適用されます。
主な変更点は以下の通りです。
・従来のAmphibious Drilling Project proposalに代わる Land-2-Sea proposalの新設
・MSPのフルプロポーザル提出時にコスト別シナリオが必要となった
・文字数制限の変更
・プレプロポーザルのリバイズ版(”Pre2”)に関する説明が追加された
・SEPレビューに対する応答を記入するセクションの追加
新しいプロポーザル提出ガイドラインはこちらからもご参照いただけます。
http://iodp.org/top-resources/program-documents/policies-and-guidelines/696-iodp-proposal-submission-guidelines-july-2020/file
プロポーザルの提出を予定されている方は、必ずご確認ください。
提案から実現までの流れ(評価方法)
- プロポーザルの審査プロセスは以下の通りです。
- 掘削提案は、毎年4月および10月に締切りがあり、IODPのウェブサイト(https://www.iodp.org/proposals/submitting-proposals)から応募します。
提出について
- プロポーザルの提出についてはIODPのウェブサイト(https://www.iodp.org/submitting-proposals) をご覧ください。
- 新しいプロポーザルガイドラインを提出前に必ずご確認ください。(2020年7月改定)
航海実績・予定へのリンク
- IODP研究航海についてはこちらをご覧ください。
その他
- 今後のIODP掘削船のスケジュール・動向については事務局までお問い合わせください。
掘削提案サポート(科学推進専門部会のサポート)
科学推進専門部会では、IODP掘削提案に関する各種サポートを実施しております。プロポーザルの提出を検討される際は、お気軽に以下問合せ先までご相談ください。
プロポーザル作成支援:j-watch について
科学推進専門部会では、日本発のIODP掘削提案を支援する取り組みとして j-watch 体制を導入しておりましたが、2020年より j-watch の支援内容を変更しました。新制度の概要は以下の通りです。
- IODP掘削提案者は、掘削書提出締切(毎年4/1と10/1の2回)に先立って提案書のドラフトをJ-DESCに提出し、アドバイスを受けることができる。
- 科学推進専門部会は、提出された提案書のテーマに応じてアドバイザー(j-watch)を2名程度割り当てる。
- j-watchはScience Evaluation Panel (SEP) 経験者、または科学推進専門部会経験者等から人選する。
- j-watchは提案書のドラフトを査読してコメント・助言を書面で報告する。
- 提案者はj-watchのコメントを受けて修正ののち提案書を提出する。
- j-watchはSEPの審査過程(Pre, Full, Revise)を通じて、継続して助言を行う。
IODPプロポーザル提出前アドバイスのご案内(2022年4月1日提出締切分)
2022年4月1日の締切に向け、IODP掘削提案書の提出の準備をされている方は、以下の要領で、j-watchによるアドバイスを受けることができますので、ぜひご利用ください。利用を希望される方は、ドラフト原稿の提出前に事前登録のご連絡をお願いします。
事前登録受付期間:2022年3月1日(火)まで
- 登録方法:emailにて下記内容(書式なし)を連絡
- 事前登録内容:全プロポーネントの氏名・所属、提案タイトル、提案種別(Pre, Full, Full2, APL等)提案概要(5行程度)
プロポーザル提出期間:2022年3月11日(金)まで
- 提出方法:email添付、またはファイル転送サービス等
- 査読時期:受領後、随時開始します
- コメントの返送:3月24日(木)頃まで
- Email送付先:J-DESCサポートオフィス
事前調査データ取得支援
IODP掘削プロポーザルが国際的に高い評価を得られるためには、質の高いサイエンスが求められる事はもちろん、プロポーザルで提案する掘削地点を評価するのに必要な、高品質なサイトサーベイ(事前調査)データの提示が不可欠となります。
J-DESCの科学推進専門部会では、掘削プロポーザルに必要なサイトサーベイ(事前調査)データの評価・選定とその取得について、プロポーザル提出・未提出(準備中)を問わず支援を行っております。
サイトサーベイ(事前調査)データの取得方法は主に下記のとおりです。
1) 既存データの利用:
2) 学術研究船白鳳丸・新青丸共同利用(東京大学大気海洋研究所):
3) 研究船利用公募(海洋研究開発機構):
1) 既存データの利用:研究機関等では既存データを公開しているデータベースサイトがあります。これらを通じて既存データを利用することが可能です。下記にいくつかの例を示します。
※2021年8月17日現在、海洋研究開発機構のデータベースは3月18日付プレスリリースで既報の
情報セキュリティインシデントへの対応により、一部、公開を停止しております。
ご利用の皆様にはご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。
- DARWIN:JAMSTEC航海・潜航データ・サンプル探索システム(海洋研究開発機構):
http://www.godac.jamstec.go.jp/darwin/j - J-EDI:深海映像・画像アーカイブス(海洋研究開発機構):
http://www.godac.jamstec.go.jp/jedi/j/index.html - 地殻構造探査データベースサイト(海洋研究開発機構):
http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/IFREE_center/ - 海域地質構造データベース(産業技術総合研究所):
https://gbank.gsj.jp/marineseisdb/ - 高分解能音波探査断面データベース(産業技術総合研究所):
https://gbank.gsj.jp/sbp_db/ - Marine Geology and Geophysics( NOAA):
https://www.ngdc.noaa.gov/mgg/mggd.html
2) 学術研究船白鳳丸・新青丸共同利用(東京大学大気海洋研究所):
- 東京大学大気海洋研究所では船舶の共同利用のための申請を受け付けています。これらを通じて新たにサイトサーベイ(事前調査)データを取得することが可能です。下記は共同利用のページのURLです。
http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/coop/index.html
3) 研究船利用公募(海洋研究開発機構):
- 海洋研究開発機構では研究船利用公募のための申請を受け付けています。これらを通じて新たにサイトサーベイ(事前調査)データを取得することが可能です。下記は研究船利用公募のページのURLです。
http://www.jamstec.go.jp/maritec/j/public_offering/
WS支援
- 掘削提案(プロポーザル)作成のためのワークショップ等の開催や参加については、JAMSTECの支援制度がございます。こちらをご覧ください。
お問い合わせ
J-DESCサポートオフィス
海洋研究開発機構 横須賀本部内
E-mail: