Exp. 379 Amundsen Sea West Antarctic Ice Sheet History

航海概要

航海概要

テーマ

Amundsen Sea West Antarctic Ice Sheet History

 

JRSOのページ>>こちら

航海予定期間

2019年1月18日~3月20日

掘削船

JOIDES Resolution

乗船/下船地

Punta Arenas to Punta Arenas, Chile

掘削地点

アムンゼン海(南極海)

科学目的

The West Antarctic Ice Sheet (WAIS) is largely marine-based, highly sensitive to climatic and oceanographic changes, has had a dynamic history over the last several million years, and if completely melted, could result in a global sea-level rise of 3.3–4.3 m. Expedition 379 will obtain records from the continental shelf and rise of the Amundsen Sea to document WAIS dynamics in an area unaffected by other ice sheets as well and that currently experiences the largest ice loss in Antarctica. The primary objectives include (a) reconstructing the Paleogene to Holocene glacial history of West Antarctica, (b) correlating the Amundsen Sea WAIS-proximal records with global records of ice volume changes and air/seawater temperature proxy records, (c) constraining the relationship between incursions of warm water masses onto the continental shelf and the stability of marine-based ice sheet margins, and (d) reconstructing major WAIS advances onto the middle and outer shelf, including the first ice sheet expansion onto the continental shelf of the Amundsen Sea Embayment and its possible control by the uplift of Marie Byrd Land.

 

詳細についてはJRSOのページをご参照ください。

 

共同首席研究者

Karsten Gohl and Julia Wellner

J-DESCからの乗船研究者
氏名 所属 役職 乗船中の役割
岩井 雅夫 高知大学 教授 Diatom Micropaleontologist
堀川 恵司 富山大学 准教授 Sedimentologist
山根 雅子 名古屋大学 研究員 Petrophysicist (Physical Properties) Specialist

乗船に関わるサポート情報

乗船研究者としてIOから招聘される方には乗船前から乗船後に至る過程の数年間に様々なサポートを行っています。主な項目は以下の通りです。

  1. プレクルーズトレーニング:乗船前の戦略会議やスキルアップトレーニング
  2. 乗船旅費:乗下船に関わる旅費支援
  3. アフタークルーズワーク:モラトリアム期間中の分析
  4. 乗船後研究:下船後最長3年で行う研究の研究費

乗船の手引き(乗船前準備や船上作業・生活方法に関する経験者からのアドバイス集)>>こちら

お問い合わせ

J-DESCサポート
海洋研究開発機構 横浜研究所内
E-mail: infoの後に@j-desc.org
Tel: 045-778-5703

募集情報

募集情報

募集分野

制限なし

追加募集分野:
Biostratigrapher, with a particular focus in radiolaria, of the Antarctic region or Southern Ocean

応募方法

応募>>こちら ※募集は終了しました
応募用紙の記入方法>>こちら

募集〆切

2017年10月15日(日)
2017年11月15日(水) 延長しました
2018年2月21日(水) 追加募集〆切

Information Webinar

September 21, 2017, at 12:00 pm EDT
(日本時間 2017年9月22日 午前1時)

To learn more about the scientific objectives of the expedition, life at sea, and how to apply to sail, please join us for this web-based seminar.
To participate in a webinar, you need access to the Internet and a computer with a microphone and speaker capability or a telephone. To register, click on the link below.

>>Information Webinar registration  for Exp. 379

After registering, you will receive an email response with instructions on how to join the webinar.

注意事項

応募する方は全員英文CV、さらに在学中の場合は指導教員の推薦書が必要となります。
修士課程の大学院生の場合は乗船中の指導者(指導教員もしくは代理となる者)が必要です。

 

船上レポート

最終更新日:2019年4月10日
※日付は日本時間

レポートインデックス

Exp.379 Episode 1: プンタアレナス出港-Exp.379航海スタート

Exp.379 Episode 2: 備えあれば憂いなし?!:古生物ラボ顕微鏡

Exp.379 Episode 3: Youは何しに南極へ?

Exp.379 Episode 4: Youはいつから南極へ?

Exp.379 Episode 5: 南極圏突⼊-南極線通過儀礼祭ペンギンレース

Exp.379 Episode 6: ハッピーバレンタインデー

Exp.379 Episode 7: Youは南極の何処にいるの︖

Exp.379 Episode 8: 眠れない夜と雪の⽇には・・  

Exp.379 Episode 9: 南極八景

Exp.379 Episode 10: これから乗船される方へ

Exp.379 Episode 11: 南極今昔物語-南極深海掘削の始まり

Exp.379 Episode 12: 進化するフォンダン・ショコラ、改め、ラバ・ケーキ

Exp.379 Episode 13: “旅”は続く  New!

 

Exp.379 Episode 13: “旅”は続く New!

2019年3月26日受領(4月10日公開)
山根 雅子(名古屋大学 研究員)

第379次航海は下船の日を迎えました(写真1)。長いようで短かった二カ月間の船上生活、苦楽を共にした仲間との別れは少し寂しいですが、本航海の“旅”はまだまだ続きます。むしろ、ここが新たなスタート地点なのです!!

写真1 下船風景。晴れ晴れとした気分と寂しい気分が入り混じる。

今年の夏には、アメリカ・テキサスのコアレポジトリでサンプリングパーティーが行われ、乗船後研究が本格的にスタートします。その1~2年後には、ポストクルーズ会議が開催され、研究の進捗状況の報告や情報交換が行われます。今後数年間に渡り(そして、その先も)、本航海の堆積物コア試料を用いた研究が続いていきます。

また、第379次航海の終りは、次の第382次航海の始まりでもあります。我々の下船とオーバーラップするように、次の航海の共同首席研究者が、翌日には研究者一行がJR号に乗船します。我々が日夜働いたコアラボは、丹念に清掃が行われ、綺麗さっぱりな状態(写真2)で次の航海の研究者とコアを待ちわびています。

写真2 きれいに掃除されたコアラボ。下船地までのトランジット中に掃除が行われる。

階段の壁に貼られた歴代航海のロゴ(写真3)を眺めながら、これまでの、そしてこれからも続くJR号の“旅”に思いを馳せる著者でした。

写真3 階段の壁に貼られた歴代航海のロゴの一部。写真中央下の四角いロゴ(クジラの尾びれのイラスト)が第379次航海のロゴ。

 

Exp.379 Episode 12: 進化するフォンダン・ショコラ、改め、ラバ・ケーキ

2019年3月17日受領(3月18日公開)
山根 雅子(名古屋大学 研究員)

船上生活で土曜日は特別な日です。なぜなら、ラバ・ケーキ(Lava cake;フォンダン・ショコラの米国式の呼び名)が提供される日だからです!今回は、ジョイデス・レゾリューション号乗船者にとって一週間の活力源であるラバ・ケーキ(注:個人の見解です)についてレポートします。

週に一度の特別なスイーツと言えば、9年前の第318次航海の時はアップル・クランブルでした。ところが、3年前の第361次航海の時には状況が一変しており、フォンダン・ショコラがその座を奪っていました。ちなみに、アップル・クランブルは現在も毎週日曜に提供されています。

3年の年月が流れ、フォンダン・ショコラはラバ・ケーキと呼び名が変わり、今なお不動の人気を誇っています。呼び名だけでなく形も少し変わり、山型の形状になりました(写真1, 2)。そのせいか、山腹からの割れ目噴火を頻繁に起こしています。一緒に提供されるアイスクリームを載せるスプーンにも変化があり、柄が丸まった専用スプーンになりました。専用カトラリーが用意されるほど、ラバ・ケーキは重要な存在になっているのです(注:これも個人の見解です)。

写真1 3年前(第361次航海)の姿。

写真2 現在の姿。チョコレートアイスが添えられた特別バージョン。

本航海の後半では、チョコレートアイスバージョンやストロベリーアイスバージョンが登場し(写真2)、ラバ・ケーキは進化し続けています。ラバ・ケーキに負けじと、著者も努力を怠りません。初回はやっとの思いで一皿食べ切りましたが、毎週欠かさず食べた結果、最近は一皿では物足りなくなってきました。

ジョイデス・レゾリューション号に乗船の際は、ラバ・ケーキご賞味あれ。

 

Exp.379 Episode 11: 南極今昔物語-南極深海掘削の始まり

2019年3月1日受領(3月14日公開)
岩井 雅夫(高知大学 教授)

今は昔、第28次航海乗船研究者(図1)の一人として、ニュージーランドビクトリア大学のPeter J. Barrett博士がグローマーチャレンジャー号に乗船していました。長らく氷上掘削を牽引し、現在も南極センター名誉教授として活躍されています。南極縁辺の掘削は、DSDP時代の1972年から1973年にかけて実施されたこの第28次航海が始まりです。

西オーストラリアのフリーマントルからニュージーランドのクライストチャーチにもどるまでの2ヶ月間に、ウィルクスランド沖とロス海で11地点掘削(図2)、回収率は半分以下と断片的でしたが、鮮新世(約260-530万年前)の温暖化イベントとその直前の氷床拡大シグナルに、当時既に気付いていました。

図1

図2

ビクトリア大学南極センターには昨年のロス海航海(Exp.374)で共同主席研究員を努めたRob McKayや、鮮新世の温暖化を氷上掘削データで実証したTim Naishらがおり、その情熱が脈々と受け継がれています(Robはウィルクスランド沖航海で一緒の夜勤組、Timは数年前高知県沿岸の鮮新世堆積物を一緒に見に行きました)。

鮮新世は気の遠くなるほど前の時代ですが、現代とよく似た環境下で氷期・間氷期の激変を何度も繰り返していました。堆積物はタイムカプセル、実験室では再現できない地球の営みを、そっと教えてくれます。堆積物のコア試料は虫食いだらけの古文書のようなものですが、上手にページをめくり地球史からの警鐘を読み解こうと、皆必死です。

第28次航海から約半世紀の時を経た今、第379次航海の船上に「ホワイトハウスで気候変動に関する専門家を募集中」の掲示がありました(写真1)。さてどんな人が応募・採用されるのでしょう。地球史からの警鐘をしっかり受け止めてくれる体制ができるといいですね。

写真1

 

Exp.379 Episode 10: これから乗船される方へ

2019年3月5日受領(3月8日公開)
堀川 恵司(富山大学 准教授)

富山大学の堀川です。航海も残り2週間ちょっとです。

初めてのJR乗船、外国人との英会話だけの生活、12時間のシフトにもようやく終わりが見えてきました。
気持ちに余裕が出てきたので、初めての船上レポートを書きます。

さて、この船上レポートを読んでる人は、これからJRに乗船する方が多いかもしれませんね。

これから乗船する方には、日本のアメとかお菓子を持っていくことをお勧めします。
みんなでシェアできるようなお菓子やアメがあると(日本的なお菓子や変わったお菓子もいいですね)、怖そうな外国人研究者にも、話しかけることができます。
クッキーとかケーキとかは、食堂に無限にあるので、特に飴は喜ばれました。

また、食事時の話題はだいたい、食べ物の話が多く、私はこれまでに納豆とか豆腐とかの話を振られました。
納豆や豆腐、あるいは日本の健康食品(海外の女性研究者は健康に気を使ってる人も多い)のうんちくを英語でしゃべれると話題提供ができるような楽しい食事になるでしょう。

 

Exp.379 Episode 9  南極八景

2019年2月28日受領(3月6日公開)
岩井 雅夫(高知大学 教授)

南極といえば氷⼭(写真1)ですが、夜は⼀応暗くなり、ほぼ毎⽇900ミリバール台の荒れた空では、なかなかシャッターチャンスが訪れません。鯨やペンギンは、夜勤組が寝静まったまだ⽇の⾼い⼣⽅に、本航海では姿を現しています。

写真1 南極特有な卓状氷⼭(tabular iceberg)

船の上では毎週写真コンテストが⾏われています。”船上カメラマン”のティムが審査し、厳選された投稿写真とプロがとった写真で、航海の様⼦が紹介されています。夜勤組にはなかなか会いに来てくれない鯨の写真も、Weekly Photoには登場します(テキサスA&M⼤学IODPホームページ)︔
http://iodp.tamu.edu/scienceops/gallery/exp379/

南⼤洋の氷⼭は、しかし、南⼤洋掘削の⼤敵です。ある⼀定距離内に氷⼭が漂ってくると、掘削パイプを引き抜いて通り過ぎるまで待機です。気温が上がると(といっても氷点下でなくなるだけですが)氷⼭もふえ、通り過ぎたと思ったら戻ってくるのもいるからやっかいです(写真2)。

写真2 氷⼭の⾏⽅を⾒守る

そんな厄介者がやってくるからこそ、たまの晴れ間は気晴らしとシャッターチャンスになるのですが(写真3, 4)、内⼼は複雑。氷⼭・流氷を⼀掃してくれる神⾵が吹かないものかと、実は願っているのです(写真5, 6)。

写真3

写真4

写真5 ⼀⾒のどかな⾵景・・・

写真6 ⼼の叫びが掲⽰板に・・・

最初の掘削点U1532では7つの孔(Holes U1532A-G)をあけ800m近い地質断⾯を掘削することに成功、年代もばっちり決めてます(詳しくは⽇誌や週間報告記事をご覧下さい)︔
http://iodp.tamu.edu/scienceops/sitesumm.html
http://iodp.tamu.edu/scienceops/sitesumm.html/379/

しかし・・・

 

Exp.379 Episode 8  眠れない夜と雪の日には・・

2019年2月15日受領(2月21日公開)
岩井 雅夫(高知大学 教授)

カレンは、コミック漫画で科学を伝えるサイエンスコミュニケータ(図1)。本航海にはアウトリーチ専⾨員として乗船しています。

図1 カレンの⾃⼰紹介コミック

もともとはルポライターとして執筆活動をしていたものの、10年ほど前からコミック漫画を描くようになったそうです。今回の航海中も、ラボや船で働く⾯々の様⼦を次々と漫画に描いて情報発信しています︔
#AntarcticLog comics about Expedition #379

北極圏調査に同⾏取材していたあるとき、現地調査したい研究者と、⽣活の場を荒らされたくない地元原住⺠とのトラブルに遭遇。⽂字をならべた⽂章では理解されず、別の⽅法が必要と強く感じ、そこからコミック漫画で表現する道を歩み始めたそうです。

こんな⾝の上話を⾷堂で聞いていたところ、「あなたも⽇本語版作成に協⼒してよ」と声をかけられました。試⾏錯誤のもと完成したのがこちら(図2, 写真1)です。

図2 ⽇本語版.J-DESCの本航海ホームページ情報もいれてもらいました.

写真1 カレンの船上オフィス壁⾯に張り出された⽇本語版

プンタアレナスをはなれてから早くも4週⽬に⼊っていますが、なぜか5時間以上眠ることができず、今朝も3時間で⽬が覚めてしまいました。こんな眠れない夜(夜勤なので・・)と雪の⽇(写真2)には、眠れぬ状況を憂いながらも、こうしてアウトリーチのお⼿伝いをしたり、船上レポートをしたためています(もしかして眠れないのはこれが⼀因︖︕)。

写真2 雪の⽇にはピクニックテーブルも閑古⿃

 

Exp.379 Episode 7  Youは南極の何処にいるの︖

2019年2月13日受領(2月19日公開)
岩井 雅夫(高知大学 教授)

南極といっても、オーストラリアの約2倍ある⼤陸とそれを取り巻く広⼤な海が南極圏に含まれます。第379次航海で向かった先は⻄南極太平洋側のアムンゼン海、⽇本の昭和基地とは南極点を介してほぼ真反対に位置するところです(図1)。最寄港プンタアレナス(チリ)からここまで、約3300キロメートルの海路を⼀週間ほどかけてたどり着きました。

図1 第379次航海掘削予定地点

ここアムンゼン海の名前は、1911年12⽉南極点に⼈類で最初に到達したノルウェーの探検家アムンゼン(1872-1928年)に由来します。温暖化の影響をうけ南極で最も氷が急激に失われている場所で、このまま⻄南極の氷床が全てとけてしまうと、世界中の海⽔準が3-4m上昇してしまうと⾒積もられています。氷床がどのように形成され、過去の温暖化で何が起きていたのか、詳しく調べるための試料を、海底に孔(あな)をあけて採取します(プレスリリース参照)。

掘削した試料が船上に揚収されると「コア・オン・デック」のコールが船に鳴り響きます(写真1)。マリンテクニシャンと前後して⾶び出す(でも決して⾛りはしません)古⽣物研究者は、コアキャッチャー試料をもらい(写真2, 3)、いち早く年代決定作業へと向かいます。

写真1 ⾦属パイプを取り外し,海⽔が噴出したリグフロア.このあとアクリルチューブに⼊った柱状試料を取り出したところで,「コア・オン・デック」のコールが鳴り響く.

写真2 キャットウォークのコアキャッチャー押し出し作業.⼈⼒・ハンマーでたたき出すのが⼤変になった場合はこの万⼒が活躍.

写真3 ラボにはこばれたコアキャッチャー試料

期待通りの堆積物がとれているのか否か︖堆積物の年代は船上での判断や下船後の研究に⼤きく影響しますので重責です。古⽣物ラボでは⽇勤・夜勤の連携も密にしながら、迅速な年代判定作業が進められて⾏きます(写真4)。気になる堆積物があがってくると、乗船研究者はみな⾎眼に・・(写真5)。さてこの航海ではこの先どんなドラマが展開していくのでしょうか。

写真4 古⽣物ラボのクロスオーバーミーティング(勤務交替次の引き継ぎ).掘削試料の年代が気になり,共同首席研究員のカールステン(左端)とジュリー(右から2番⽬)もたびたび参加.

写真5 半割されたコア試料がテーブルにならび, 群がる夜勤組の⾯々.

※2019年2月20日:タイトル修正しました

 

Exp.379 Episode 6  ハッピーバレンタインデー

2019年2月13日受領(2月14日公開)
岩井 雅夫(高知大学 教授)

今週2⽉14⽇はバレンタインデー。⽇本では⼿作りチョコレートや義理チョコに頭を悩ませたり、それを⾒守ったりと、皆こぜわしかったかもしれません。
⼩雪まう南極海のジョイデス船上(写真1)でも、着々と準備が進められています(写真2)。⽇頃の感謝を込め、乗船研究者⼀同で船員さんにチョコレートを送る、JR号南極掘削航海の恒例⾏事です。

写真1 ジョイデス・レゾリューション号の船上に舞い散る⼩雪

写真2 メッセージカードを作る⽇勤組のエレンと⼭根さん

⽇本で⾔えば”義理チョコ”かもしれませんが、60余名分の顔を思い浮かべながらの作業は、とても義務感からでは達成できません(写真3)。若⼿⼥性陣を中⼼に(写真4)、⼀枚⼀枚オリジナリティのある作品を仕上げていきます(写真5)。

写真3 顔写真⼊り船員リストを確認しながら60枚あまりのメッセージ⼊りカードを作成

写真4 夜勤組のマーゴット, テレサ, ビビ (左から). 最後の仕上げはこの3⼈のがんばり.

写真5 オリジナルカードにはメッセージとチョコレート/キャンディーを添えて

以前の航海で「⼤変だったんだから・・」という声を聞いていたので、今回は当⽅もがんばってお⼿伝い。ところが最後の2⼈となったところで卓球の名⼿マーゴットがニヤニヤしながら「どっちにする︖」「筋⾁質︖それともそうじゃないほう︖」と・・・思わずふき出してしまいました(笑)

 

Exp.379 Episode 5  南極圏突⼊-南極線通過儀礼祭ペンギンレース

2019年2月13日受領(同日公開)
岩井 雅夫(高知大学 教授)
堀川 恵司(富山大学 准教授)
山根 雅子(名古屋大学 研究員)

南緯66.33度の⼀線を越えると、太陽が⼀度も沈まず⽩夜が起こる世界に突⼊します。
調査船ではこうした「⼀線」を超えたとき、安全祈願とコミュニケーション活性化をかねてお祭りがよく開かれます。

第379次航海では、プンタアレナスから移動中の1⽉下旬に南半球の極線(polar circle)、南極線(Antarctic Circle)を越えました。南極圏に初めて⼊ろうとする者は、海の神様の命に従い、ペンギンとしての修⾏をつまなくてはなりません。⼤切な卵を上⼿に運ぶ競争です(写真1)。

マリンテクニシャンふんする熟練ペンギンは、プロとして安全にかつ効率的に運ぶ⽅法を初⼼者に指南します(写真2)。無事運び終われば、ご褒美として⾚い紅が⿐に塗られ(写真3)、関⾨を通過した証として⾦のレッテルがもらえます。

しかし、卵を落として割ってしまうと⾚い紅はもらえず、⻩⾊の紅のみ。落とした者はまだまだ修⾏がたりません。年寄りのほうが要注意です。でも安⼼して下さい、本航海で初めて南極圏に突⼊した⼤半の若⼿参加者は⿐とほほを⾚くし、南極圏内での活動が正式に認められました(写真4)。

写真1 海の神様とその使者たちに⾒守られ,ペンギンレースが始まった.卵を落とさずに運べるか?!

写真2 指南役のスーザンペンギンに従い必死に取り組むベス

写真3 ⿐の⾚いインクは,無事卵を運び終え,南極圏での活動を認められた証.

写真4 南極圏初めてじゃないベテランもいるけどまあいいでしょ.皆さんお疲れ様でした.

 

Exp.379 Episode 4  Youはいつから南極へ?

2019年2月12日受領(同日公開)
岩井 雅夫(高知大学 教授)

堆積学者として乗船するサンドラ(写真1)は、本航海が3度目の掘削船航海で、一緒に乗船するのは東南極ウィルクスランド沖のExp.318航海以来2度目です。「いつから南極へ?」とある日食堂で尋ねると、「何のこと?」「大学入る前?後?」とけげんな顔...改めてつたない英語で聞き直すと「研究では学部のときからずっとよ。南極探検の本を読んで14歳ころからずっと南極にあこがれていたから」と教えてくれました。

サンドラは学生時代からひたすら南極観測に従事、米国の次期科学掘削研究課題検討委員会の一員として活躍の場を広げている今も、頻繁に南極にでかけているそうです。サンドラにかぎらず本航海に乗船する中堅以上はみな南極調査研究の経験豊富なエキスパートばかり..キャサリンは南極大陸調査の大ベテラン、共同首席研究者のジュリアや同じシフトのスティーブは浅海域掘削プロジェクト、同室のリードは氷上掘削プロジェクトに深く関わってきています。

写真1 堆積ラボで熱弁をふるうサンドラ(写真奥)と聞き役ベンディー(手前)

映画「南極物語」を観たのは、確かに私も10代でした。だけど私にとって南極は辺境の地。学部のころ極地研究所にあこがれたこともありましたが、当時は堆積物をあつかっている地質学研究者が一人もおらず、研究分野がほど遠いと感じ即断念。今回4度目の南極調査といいながらも10年に1度がいいところ、しかも全て外国の調査船です...(写真2)

写真2 ロス海のテラノバ基地沖で荷下ろしをする調査船イタリカ号(第14次イタリア南極隊ANTA98/99航海; 1999年1月撮影).極地研究所の国際共同研究として実現.

それでもこうして日本の大学が一番忙しい時期に南極調査に参加し南極の風景を目にできるのは(写真3)、国際深海科学掘削計画に日本が長年参加し支援体制があったこと、職場でもある程度理解してくれる人たちがいたことからに他なりません(今回もJ-DESCの皆さんに大変お世話になりました..)。感謝の念を忘れることなく、掘削本番に臨みたいと思います(時差がありますがご容赦を)。

写真3 真夜中の夕日と氷山(出入港地チリの時間帯を利用しているため3時間の時差あり)

 

Exp.379 Episode 3  Youは何しに南極へ?

2019年1月30日受領(同日公開)
岩井 雅夫(高知大学 教授)

航海がはじまると、航海の成功にむけた準備がはじまります。共同首席研究者やスタッフサイエンティストらが中心になり目的意識を共有、チームを作っていきます (写真1) 。

写真1 サイエンスミーティング

「Youは何しに?」と問われた各乗船研究者は、船上での役割や個人の興味・研究目的などについて紹介しあい (写真2) 、プレイヤーとしての特性を確かめチームプレーの意識を高めていきます。

写真2a CDことHillenbrand博士は南極半島Leg178の粘土鉱物分析結果について紹介

写真2b 間隙水分析について語るKim博士 (韓国)

「Youは何しに南極へ?」と聞くまでもなく、これまで氷上掘削の現場に毎年のように通い詰め、本航海実施提案者の一人であるReed Scherer教授(北イリノイ大学)は、私が修士学生だったころからの知り合いです (写真3) 。しかし彼には、研究とは別に南極に通う意外な理由があるとか..

写真3 Reed Scherer教授 (北イリノイ大学) [©Reed Scherer; 撮影:岩井]

「今日は大雪で大学が休みになった。家の周りはマイナス30度越えで北極・南極より寒い!」と言って、南極海で晴れ間がのぞいたある日 (写真4) アメリカの天気図を張り出してました (写真5) 。異常気象で米国内陸部は最低気温記録更新中、「南極は避寒地」と笑いながら裏事情を教えてくれました。

写真4 青空の広がる南極海を進むJOIDES号

写真5 アラスカでは0℃を上回る温暖化が進む一方、北米内陸部は-40℃を下回る記録的厳冬

 

Exp.379 Episode 2 備えあれば憂いなし?!:古生物ラボ顕微鏡

2019年1月27日受領(1月28日公開)
岩井 雅夫(高知大学 教授)

船からのレポートによれば、27日現在水温は6度とまだ暖かい..嵐を上手にかわしながら船速もあがり、数日後には最初の掘削点に到達する予定です (写真1) 。

本航海では、風に流される海氷と、海流で運ばれる氷山をさけながらの難しいオペレーションが予想されています。掘削点周辺は海水温もマイナスになることから、救命スーツの着衣点検も南大洋の航海では必須 (写真2) 、今日は2度目の避難訓練も予定されています。

写真1 ドレーク海峡付近で6ノット程度だった船速も10ノットをこえ、一路掘削地点をめざす。

写真2 救命スーツ着用演習

一方各ラボの準備も嵐・会議の合間を縫って進めています。古生物ラボでは、顕微鏡や写真撮影装置の設定が不可欠です。今回は放散虫と珪藻の観察に共有できるよう、10x、20x、40x、63x、63x oil、100x oilのレンズを用意してもらいました (写真3) 。

JR号の船上ではImage Captureというデータベースとリンクした写真撮影用ソフトウェアを用いますが、操作方法に慣れることに加えスケールの調整・確認も不可欠です (写真4) 。プログラム内部の設定はいじれないので、撮影領域を変更して調整 (写真5) ...6度目のJR航海でようやくコツをつかんだ気がしました。

写真3 古生物ラボに備え付けられた顕微鏡と写真撮影装置のマニュアル

写真4 対物ミクロメーターを用いて、写真撮影装置のスケールを確認。

写真5 各種設定画面

 

Exp.379 Episode 1 プンタアレナス出港-Exp.379航海スタート

2019年1月26日受領(1月28日公開)
岩井 雅夫(高知大学 教授)

センター試験や学期末試験、大学院改組でざわつく大学をあとにして、南米大陸南端のマゼラン海峡に面するプンタアレナス(チリ)にやってきました。メンテナンスを終えたばかりのJOIDES Resolution号が、混み合う港で私たちを迎えてくれました (写真1) 。

初めての南極航海となったODP Leg 178以来、実に21年ぶりに同じ港をJR号で出港することになりました。以前おとずれたプンタアレナスの街並みを思い起こしながら、前回同様マゼラン像 (写真2) に安全祈願しました (写真3) 。

写真1 プンタアレナス港に停泊中のJOIDES Resolution号

写真2 中央公園のマゼラン像。マゼランが1520年にこの地を訪れてから約500年。

写真3 マゼラン像に安全祈願。これで2ヶ月後には無事航海をおえこの地に戻れるはず。

港停泊中も連日会議や船内ツアーが続き、ご多分にもれず忙しくすごしています (写真4) 。今回の調査地域ではインターネット接続が途絶えると予想されているので、待ったなしの書類を慌てて書き上げ職場に提出、一段落した今がチャンスとこの原稿をしたためました。

船は予定通り1月23日に離岸し、多少遅れるも調査海域にむけ進み始めています (写真5) 。ドレーク海峡にさしかかり既に船は大揺れ、船酔いでつらそうな乗船研究者もちらほら見られますが、日本からの乗船研究者は皆元気です。あとは調査海域で流氷や悪天候に邪魔されることなく掘削が実施できることを祈るばかりです。

写真4 本航海で初めて導入されたX線写真撮影装置の概要説明を受けるラボツアー参加者

写真5 南米大陸最南端をかわしドレーク海峡を目指す

カテゴリー: IODP Expedition パーマリンク

コメントは受け付けていません。