航海概要
テーマ
South Pacific Paleogene Climate
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航海予定期間
2020年1月3日~3月4日==> 2020年1月3日〜2月6日
掘削船
JOIDES Resolution
乗船/下船地
Fiji to Papeete, Tahiti
掘削地点
科学目的
Expedition 378 will investigate the record of Cenozoic climate and oceanography through a drilling transect in the far southern Pacific Ocean. In particular, it will target sediments deposited during the very warm Late Paleocene and Early Eocene including the Paleocene-Eocene boundary, as well as the Eocene-Oligocene transition to investigate how the Eocene earth maintained high global temperatures and high heat transport to the polar regions despite receiving near modern levels of solar energy input. Investigation of the recovered sediments also will constrain the subpolar Pacific climate, oceanographic structure, and biogeochemical cycling of much of the Cenozoic. These sediments will be used to characterize water masses, deep and shallow ocean temperature, latitudinal temperature gradients, the strength of upwelling, and the strength of the zonal winds to study both the atmospheric and oceanic climatic subsystems.
詳細についてはJRSOのページをご参照ください。
共同首席研究者
Deborah Thomas and Ursula Röhl
J-DESCからの乗船研究者
氏名 | 所属 | 役職 | 乗船中の役割 |
---|---|---|---|
浦本 豪一郎 | 高知大学 | 特任助教(卓越研究員) | Sedimentologist |
田中 えりか | 東京大学 | 大学院生(博士課程) | Sedimentologist |
安川 和孝 | 東京大学 | 助教 | Sedimentologist |
選定中 ※詳細は「募集情報」タブを参照
乗船に関わるサポート情報
乗船研究者としてIOから招聘される方には乗船前から乗船後に至る過程の数年間に様々なサポートを行っています。主な項目は以下の通りです。
- プレクルーズトレーニング:乗船前の戦略会議やスキルアップトレーニング
- 乗船旅費:乗下船に関わる旅費支援
- アフタークルーズワーク:モラトリアム期間中の分析
- 乗船後研究:下船後最長3年で行う研究の研究費
乗船の手引き(乗船前準備や船上作業・生活方法に関する経験者からのアドバイス集)>>こちら
お問い合わせ
J-DESCサポート
海洋研究開発機構 横浜研究所内
E-mail: infoの後に@j-desc.org
Tel: 045-778-5703
募集情報
募集分野
制限なし
応募方法
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応募用紙の記入方法>>こちら
募集〆切
2017年9月15日(金) 締め切りました
Information Webinar
August 28, 2017, at 12:00 pm EDT
(日本時間 2017年8月29日 午前1時)
To learn more about the scientific objectives of the expedition, life at sea, and how to apply to sail, please join us for this web-based seminar.
To participate in a webinar, you need access to the Internet and a computer with a microphone and speaker capability or a telephone. To register, click on the link below.
>>Information Webinar registration for Exp. 378
After registering, you will receive an email response with instructions on how to join the webinar.
注意事項
応募する方は全員英文CV、さらに在学中の場合は指導教員の推薦書が必要となります。
修士課程の大学院生の場合は乗船中の指導者(指導教員もしくは代理となる者)が必要です。
最終更新日:2020年2月7日
※日付は日本時間
レポートインデックス
レポート1(2020年1月13日受領)>>Exp.378の乗船研究者は2/3が女性です!
レポート2(2020年1月20日受領)>>Core on deck! そして30000人!
レポート3(2020年1月22日受領)>>船内の音
レポート4(2020年1月23日受領)>>Sedimentologistのお仕事
レポート5(2020年1月27日受領)>>Happy New Year!
レポート6(2020年1月30日受領)>>ロマン
レポート7(2020年1月31日受領)>>エンドレス January
レポート8(2020年2月6日受領)>>下船まで
レポート9(2020年2月7日受領)>>Thank you, all!
Exp.378の乗船研究者は、2/3が女性です!
2020年1月13日
田中 えりか(東京大学 大学院生)
IODP 第378次航海 “South Pacific Paleogene Climate” に参加している東大の田中えりかです。
この第378次航海は、当初の予定 (2018年10月から12月) より大幅に遅れて開始されました。そのため、フィジーから無事に出港でき、主席研究者・プロジェクトマネージャー・乗船研究者一同、心の底からほっとしているところです。
現在、研究掘削船JOIDES Resolutionは、南太平洋をひたすら南下し、ニュージーランドの東岸を進んでいます。
目的地は、ニュージーランドの南方沖、1973年 (47年前!) に研究掘削船Glomar Challenger号で掘削されたSite 277という地点です。
今回の航海では、このSite 277を再掘削し、できるだけ連続したコア試料を採取することを目的としています。このSite 277には「古第三紀 (5600万年前~3400万年前)」 という時代の海底堆積物が残されていることがわかっています。この古第三紀は、地球が非常に温暖で、南極にも北極にも氷床がなかった時代です。そのため、この航海には、「地球の気候変動 (特に温暖化) に関しての記録が残っていないかを確かめたい!」「海の(微)生物はどのように生息していたのかを解明したい!」という研究者が数多く乗船しています。
また、この航海は、主席研究者2名、プロジェクトマネージャー1名を含め、研究者の2/3が女性であり、今まで例のないほど女性の乗船者が多い航海となっています。
私たちの日常は、
・各種ソーシャルメディア (JOIDES Resolution;Twitter, facebook, Instagram, Youtube, Soundcloud)
・第378次航海ホームページ:www.thejoidesresolution.org/expedition/378
・主席研究者ブログ:https://iodpexpedition378.wordpress.com/
・アウトリーチメンバーブログ:https://otagomuseum.nz/blog/all-aboard/
などを通じて見ることができます。
ぜひのぞいてみてください!
Core on deck! そして30000人!
2020年1月20日
田中 えりか(東京大学 大学院生)
こんにちは
田中えりかです。
長いトランジットを経て、やっとコアがデッキに上がってきました!
船員さんや技術者さんも待ちに待ったとばかりに、ノリノリで “Core on deck!!!!” と教えてくれます。今回のコアは非常に連続性が高く、我々Sedimentologistとしても、どれだけ素早く丁寧に記載できるか腕の見せどころです。
長いトランジットの最中は、昼シフトの有志たちで、’Squeeze Cakes’ (「間隙水」と呼ばれる堆積物に含まれている水を採取する手法) というバンドを結成し、さまざまな曲にチャレンジしました。首席研究者がドラムを叩き、その他のメンバーはウクレレ、ピアノ、ギター、ボンゴ、コーラスで参加しました。コードと歌詞のみが書かれたスコアを使うため、時々、曲のメロディーが分からなくなる時がありますが…船の上では、インターネットへの接続が制限されているので、メロディーの確認はできず、なんとなくで乗り切りました。コアが上がってくる初日には、’I’m ready for the core’ という替え歌を作り、事前に知らせていなかった首席研究者の仕事部屋に突撃して歌うというサプライズも行いました。
さて、今回の航海ではアウトリーチのメンバー3人がとても頑張っていて、新規フォロワーの獲得やフォロワーのエンゲージメントを常にチェックしています。我々一同、「え???」と聞き返してしまうほど驚いたのは、中国のアウトリーチメンバーが1/18に行った配信が30000人もの視聴者を獲得していたということでした。船の上のみならず研究業界は閉鎖的な空間で、研究者側のアウトプットがないと、いったい何が行われているかわからない場所です。私も高校生ぐらいまで、研究者に対してかなり曖昧なイメージしか持っておらず、研究の世界にアクセスする術を持っていませんでした。だからこそ、このようなアウトリーチを通して、クリアな研究者のイメージを提供できることを、非常に嬉しく思います。願わくば、私の地元のような、博物館や、大学・研究所の一般公開に気軽にアクセスできないエリアであっても、船上からの配信に平等にアクセスできる社会になるといいな、と感じます。
本航海に限らず、JOIDES Resolution号でのIODP航海実施中は、船上と陸上の教育機関を繋いで、研究者から船内の様子をお伝えすることができるので、興味のある方はJ-DESC事務局にご連絡いただければと思います。
予定通りに進めば、今週一週間で一段階深部へと掘り進めていくことになります。
狙っているターゲットまできちんと到達できるのか、ひやひやしていますが…きっちり仕事をこなしつつ気長に待ちたいと思います。
船内の音
2020年1月22日
田中 えりか(東京大学 大学院生)
こんにちは
田中えりかです。
今日はJOIDES Resolution号の船内の音について話したいと思います。
まずは、実験室。
様々な機械が、いろんな音をたてながら一生懸命データを出してくれています。
私たちSedimentologistが使っているのは、主に二つの機械です。
SHMSL (Section Half Multisensor Logger; シュミゼル) という、帯磁率という値やコアの明度を測定してくれる機械は、1cmごとのデータを出すため、一定の間隔でモーターが動く音を鳴らします。
その隣では、Section Half Imaging Logger (SHIL; シル) という機械でコアの写真を撮影しています。あっという間にコアの写真を綺麗に撮影してくれるので、とても助かっています。
対面で、笛吹ケトルのような音をテンポよく出すのが、堆積物コア中の磁気を測定する機械です。超電導岩石磁力計という強そうな名前のとおり、強力な電磁石で測定を行います。
強力な電磁石を用いた測定に影響を与えないために、実験室の入り口には、「携帯は機内モードにしてね」という張り紙がしてあります。陸上の高知コア研究所やちきゅうにもこの機械がおいてあり、そちらには地磁気をシャットダウンするための高性能な部屋が専用で存在します。
比較的静かに動作するのは、X線CT装置、自然γ線測定装置、P波速度測定装置などの、いわゆる「物性」と呼ばれるものを測定する機械たちです。
X線装置は、陸上の病院にあるX線CTの機械と同様に、コアを輪切りにした映像を出してくれる便利な機械です。
自然γ線測定装置やP波測定装置は、堆積物中の構成鉱物が持つ特徴を放射線量や音波の伝わり方などで取得してくれます。
そして、その隣にはコアの半割部屋が。技術者の皆さんがプラスチックパイプに入ったコアを縦に2分割しています。
堆積物が柔らかいうちはピアノ線で静かに切ってくれていましたが、コアがカチカチに硬くなってきたのでと、今はチェーンソーのような機械でギュイーンという音を立てながら切断しています。半割後のコアの表面はほれぼれするほどなめらかです。
技術者の皆さんが作業をやめて、物性を測定している機械の前に集まりだしたら、コアが上がってくる時間です。”Core on deck!!”の放送が流れ、技術者の皆さん、主席研究者、サンプリングを行う研究者が一斉にヘルメットと保護メガネをかけて外に出ていきます。
次にキャビンと呼ばれる自分の部屋に移ります。ここでも、24時間いろいろな音が聞こえます。
「公海」と呼ばれるどこの国にも属しない海を航行している間は、一定の間隔で小鳥がさえずるような音が聞こえてきます。これは、音波を使用して海底の地形データをとる際に出る音です。
また、波が船にぶつかっている音も聞こえてきます。波や風次第では、船が波にぶつかりに行くような形になり、船体の金属がバーンと銅鑼のような音を立てることもあります。はじめて船に乗る人は、この音に悩まされ、睡眠不足になることもままあります。
コアを取る際には、一か所に止まって取ることになるので、上の二つの音はぱったりやみます。
ただ、その代わり、機械の駆動音が常に聞こえてきます。スラスターの音です。JOIDES Resolution号では、「ダイナミックポジショニングシステム」という方法で、船の位置を掘削地点の真上に固定しています。その際、船がGPSや風力計、海底に設置したビーコンなどを駆使して、7つのスラスターの駆動速度を変えたり、向きを変えたりしています。このスラスターの1つが、キャビンのすぐそばにあり、寝ていても船が稼働しているのを感じます。
さらに、時々、部屋にいる時でも”Core on deck!!”の放送が遠くで聞こえてきて、少しわくわくします。
一方、キャビンの外の廊下は驚くほど静かです。船は、12時間シフトで24時間稼働しており、乗船している人たちは、ポジションによって6時-18時と18-6時、または0-12時と12-0時で仕事が割り振られています。すべてのシフトを合わせると、6時間ずつ生活リズムがずれた生活を送ることになるため、常にだれかがキャビンで寝ています。起きている人たちは、寝ている人たちの安眠を妨げないように、細心の注意を払って行動しなければなりません。
最後に…船内のいたるところで聞こえてくるのは、ディスカッションをする声とBGMです!
研究者や技術者チームの人たちは、コアの様子を確認したり、コアのデータ取得の進行について相談したり、今後の研究プランを相談したり、と余念がありません。
その後ろでは、リズムのいい曲が流れています。実験室内だけでなく、食堂のキッチン、ランドリー、ジム、いたるところで様々な曲が流れているため、とてもいいリフレッシュになります。
みんなが心待ちにしている年代のコアが上がってくるタイミングでは、主席研究者以下、そのシフトの人たち全員が集まり、BGMに乗ってダンスをして待っていました。
JOIDES Resolution号の設備についてもっと知りたい方は
https://iodp.tamu.edu/labs/ship/Cdeck.html
ダイナミックポジショニングシステムについての説明は
をご覧ください!
JOIDES Resolution号公式Youtubeには、機器に関する説明ビデオも上がっているようです。(残念ながら船内からはアクセスできませんが…)

SHMSL (Section Half Multisensor Logger; シュミゼル)。「この機械 (SHMSL) にかける」という意味の単語、SHMSLing (シュミゼリング) が生まれました。
Sedimentologist のお仕事
2020年1月24日
安川 和孝(東京大学 助教)
こんにちは.IODP Expedition 378 に乗船している,東京大学の安川和孝です.
田中さんが3回にわたりJOIDES Resolution (JR) 号のトピックを伝えてくれましたが,今回は私の方から,船上での具体的な仕事について紹介したいと思います.
田中さんと私は2人とも,sedimentologist (堆積学者) としてこの Expedition 378 に乗船しています.
田中さんが昼シフト (12時~0時),私が夜シフト (0時~12時) です.
夜シフト組は,掘削サイトへのトランジット中に少しずつ生活時間をずらしていきました.今では15時半就寝・22時半起床の生活にすっかり身体がなじんだ夜の世界の住人です.帰国したらまともに仕事に戻れるのかとても不安です.
さて,本題の仕事内容に入ります.
Sedimentologist の任務は,「採取されたコアが一体ナニモノなのか」を記載することです.
JR号でのコア記載は「DESClogik (デスクロジック)」と呼ばれる専用ソフトを用いて,とてもシステマチックに行われます.
私たちの仕事場であるコアラボには複数のパソコンがあり,コアを観察しながら情報を入力できるようになっています.
船上での堆積物コア記載においては,試料がどんな見た目をしているか (堆積物の色や構造,粒子の大きさや種類,掘削やコア処理に伴う人為的な損傷など),何からできているか (ルーペや顕微鏡により観察される化石や鉱物など) を詳細かつ正確に捉え,現物を見ていない人にも伝わるように表現しなければなりません.必要に応じて,鉱物種を特定するX線回折分析や化学組成を調べる蛍光X線分析なども行いながら,得られた堆積物の全体像を捉えていきます.
そのために,どんな専門用語を使うか,どんな観察・計測を行うかなどを,掘削開始までにチームで話し合って決めます.もちろん,実際に取れたものに応じて,臨機応変に修正を行っていきます.
最終的には,掘削サイトの地層がどのような堆積ユニットに区分されるか (Lithostratigraphy) を決めるのが我々のゴールです.
他のラボでは,コア試料中の微化石による年代決定や堆積物の物理特性分析,有機・無機地球化学分析,古地磁気分析,複数の掘削孔同士の層序対比などが行われており,Expeditionが終わる頃には,全ての情報が統合されます.
これらの情報は航海後に公表され,世界中の研究者が将来にわたり参照していくものですから,乗船研究者の果たす役割はとても重要です.と同時に,海底下はるか深部に埋もれていた数千万年前の地球環境の記録を掘り起こし,世界で初めて目にする知的興奮と臨場感を存分に味わうことができるのが,乗船研究者の大きな特権です.
本航海では,日本,アメリカ,オーストラリア,ドイツ,韓国から計7人の sedimentologists が乗船しています.
大学教授から博士課程学生までバラエティに富む面々で,和気あいあいと仕事しています.
私と田中さんの日本人コンビは,それぞれ夜と昼のシフトで,顕微鏡を用いたスミアスライド観察を主に担当しています.
堆積物を爪楊枝で少量とってスミアスライドと呼ばれる簡易的な試料を作成し,それらを顕微鏡下で観察して鉱物や化石の種類や割合を調べ,堆積物の名前を決める仕事です.掘削が始まると次から次へとコアが上がってくるので,観察するスミアスライドは数百枚にもなります.
この作業はどうしても主観に依る部分があり,観測者どうしの認識のすり合わせが重要となります.
航海ごとに方針は異なると思いますが,私たちのチームでは,なるべく経験のある観察者が集中して見続けた方が誤差が小さいだろうと考え,顕微鏡担当を各シフト1人ずつに絞ることにしました.
出航前の雑談で,私が「IODPは初参加だけど,JAMSTEC の航海でコア記載の経験はありますよ hahaha」という話をしたら,チームの打合せで「スミアスライド観察は Kazutaka と Erika が適任だね」「せやな」「異議無し」「がんばって!」みたいな流れになりました.(安川による意訳)
JR号広しといえど (全長 143 m x 全幅 21 m x 7層構造),直接的に堆積物の名前を決定するのは sedimentologist,その中でも顕微鏡を用いて構成物を詳細に観察する我々2人です.責任は重大ですが,とてもやりがいのある仕事と思って顕微鏡をのぞき込む日々です.
・・・とはいえ,実際には誰も予想していなかったモノが上がってくることもあります.
個人で判断に迷うときはチームで議論しながら,最も妥当と考えられる記載をしていきます.
これからいよいよ,ターゲット層の最深部へと挑んでいきます.
どんなものがでてくるか,食堂でも他のラボの面々を交えて期待で盛り上がっています.

Exp. 378 堆積学者チームの7人.(左から順に; 敬称略) 田中えりか, Simon George, Hojun Lee, 筆者 (安川),Swaantje Brzelinski, Ingrid Hendy, Laura Haynes.(写真クレジット: Simon George)
Happy New Year!
2020年1月27日
田中 えりか(東京大学 大学院生)
こんにちは
田中えりかです!
先週金曜日は中国で旧正月の開始にあたり、みんなで”Happy new year!!!”と祝いました。
研究室にはこんなものも…
ふと気づいたのですが、JOIDES Resolution号の船内の壁面には様々な工夫が凝らされています。
実用上の理由のものもあれば、リフレッシュを目的としたものもあり、気がつくと「壁」フォルダができるぐらいに写真を撮りためていました。
今回はそのうち一部を紹介します。外に出るときに使うヘルメットが置いてあります。
危険性が高い作業の時には、ヘルメット・保護メガネ・安全靴 (つま先の部分に鉄板が入っている靴) を身に着けて実施します。
採取した堆積物コアが保管されています。半割されたコアはDチューブという容器に入れられ、保管庫 (今回はテキサスA&M大学) に送られます。Dチューブには、ID情報が入ったバーコードが貼ってあり、このバーコードで管理されます。
なお、保管庫は世界に3つあり、アメリカ・テキサス、ドイツ・ブレーメン、日本・高知です。
私の正面のテレビです。外洋だとテレビは見られないので、船内のカメラ映像を流しています。
現在流れているのは、ドリリングフロアの映像です。左上の数字がパイプの位置 (深さ) を表しており、これが0になると”Core on deck!!!” と声がかかります。
私の後ろのホワイトボードです。日本でも「かわいい」は色々な場面で使いますが、”pretty”はもっと便利で「いい天気」や「いい景色」といった意味にも使えます。
ご覧のとおり堆積物や鉱物にもです(笑)
このホワイトボードは、腰ぐらいの高さから天井までありますが、議論に使う図がぎっしり貼ってあります。ホワイトボードだけでは、スペースが収まらず、横の壁もコピー用紙でぎっしりと埋められています。お見せできないのが残念です。
航海ごとにロゴをつくるのですが、今回はこちらです。
航海前にも航海中にも、開いた口が塞がらないような出来事がたくさん起こっているので、クラーケンに向かっていくJOIDES Resolution号はとてもいいアイデアだと思います。こちらもお伝えできないのが残念です。
中央のSTOPボタンは測定機器 (前回お話ししたSHIL) の緊急停止ボタンです。右側は私たちの船上生活をプログラミング言語に見立ててユーモラスに書いてあります。
これまでの歴代の航海のロゴが飾ってあります。日本近海の航海だと、ロゴに日本語が入っていることが多い印象です。私のお気に入りはこのロゴです。台風の時期に航海を行って、がんばって逃げ回った軌跡がよくわかります。
先日の航海レポートに書いた「古地磁気を測定しているので機内モードにしてください」という表示です。
毎週日曜日は避難訓練の日です。
電波がつながらないので、息抜き用のクロスワードパズルが貼ってあります。皆で解き進めて、だいぶ埋まってきました。これを撮っている最中に間違いを見つけました。
最後に、みんながミーティングに使うカンファレンスルームの壁面は、過去の航海のレポートで埋まっています。重みを感じます。船では揺れた際に、モノが動かないように、ロープやすべり止めを使って固定しておきます。ロープでものを固定することを「ラッシング」と呼んでいます。
いよいよ、最後のコアが上がり、陸に向けて出発しました。
ここから航海は大詰めで、成果をまとめる作業に入ります。まとめ終わらないと日本に帰れないので、頑張ります。
ロマン
2020年1月30日
田中 えりか(東京大学 大学院生)
こんにちは
田中えりかです!
昨日はニュージーランドのTamuri港で補給を行いました。
補給はこれまで乗った船では初めての経験なので、見ていてとても楽しかったです。
船の横でアクロバティックに船を回してお別れをしてくれました!さて、ニュージーランドの陸地に近づいてから、すっかり暖かさを感じるようになってきました。(筆者は南半球の今の季節が夏だということをすっかり忘れていました。)
私たちが掘削していた地点は、南緯50度のあたりに位置しており、最高気温が10度を下回ることもままありました。南緯50度というとイメージがつきにくいかもしれませんが、北緯50度の位置 (北海道よりも北側) を考えると、どのぐらいの緯度か分かりやすいかもしれません。
また、南半球の高緯度側は、北半球の高緯度側よりも低気圧が発生しやすいため、海が荒れることで有名で、
「Roaring Forties, Furious Fifties, Shrieking Sixties (吠える40度、狂う50度、絶叫する60度)」という名前がついています。
(こんな場所にいたのにも関わらず、運良く、私たちの掘削の間は低気圧が襲ってこなかったのは幸運でした!!!)
この南半球の高緯度側が荒れる理由と、私たちの研究の内容は深く関わっています。
もし地図や地球儀を持っていれば、南緯40度から60度のあたりでぐるっと地球一周してみてください。
おそらく、ほとんど海が広がっていて、なかなか陸地にぶつからないと思います。
日本であれば、山や陸地の凹凸が、低気圧をブロックしてくれたり、弱めてくれたりするのですが、ここでは、低気圧を遮るものがないために、強力な勢力を保てるのです。
実際に、今日の風の画像はこちらです。
2つの低気圧がぐるぐると渦をまいています。そして、陸地がなくて嬉しいのは低気圧だけではありません。海水も遮られずに流れることができます。そのため、南太平洋の高緯度帯では、莫大な量の海水がぐるぐると循環して、南極周極流 (Antarctic Circumpolar Current; ACC)という世界最大の海流を作っていることが知られてます。
さて、最初の船上レポートで、「古第三紀 (私たちが研究している5600万年前~3400万年前)) は、地球が非常に温暖で、南極にも北極にも氷床がなかった時代です」と書いてあったのを覚えているでしょうか?今の時代に、この南極周極流が存在することと、氷床が存在することにはとても深い関わりがあります。
もう一度、地図や地球儀を一周してみてみてください。南極の周りの海は、大西洋や太平洋、インド洋と繋がっていることがわかります。
陸地は海水よりも温められやすく冷めやすいという性質を持っており、陸地が近くにあると、太陽によって陸地とその上にある空気が温められ、それが伝わってしまいます。
しかし、このように海によって切り離されていると、熱が伝わりにくい状態になります。
つまり、南極周極流が陸地からの熱をシャットアウトしてくれているため、南極が自然と冷えた状態となって、氷床が維持できるのです。
一方、私たちが研究のターゲットにしている時代には、南半球の大陸 (オーストラリア大陸や南米大陸など) が南極大陸とつながっていたとされています。すなわち、海流も陸地も今とは全く異なっていたために、バリアの役割を果たすものが何もなかった時代です。そのため、熱が伝わりやすく、氷床ができにくい、温暖な気候が広がっていたと考えられています。そして、そのような数千万年前の記録が海底の堆積物として残っているということに、私はとてもロマンを感じます。
海底掘削は、世界中の海に出向いて行われています。各航海ごとに、ターゲットとする年代や対象が決められ、「ここだ!」という場所を掘削しにいきます。そして、航海に乗れる研究者は、毎回公募で集められ、30人程度のサイエンスパーティーを組みます。
このようにして集まった研究者は、皆がそれぞれロマンを持っているので、食事の時でも、クッキーブレーク (おやつの時間) でも、ずっと議論をしていられます。自分の知らないことであっても、話を聞いているだけで、とても楽しそうで、幸せなひと時です。
あと1週間でこのような時間が終わってしまうのは悲しいですが…次に会う時には、今回の航海で出たデータを使って、もっと壮大な話をできるといいですね。
(というわけで、掘削したサンプルを使って、陸上で早く測定に入りたいです。)
エンドレスJanuary
2020年1月31日
田中 えりか(東京大学 大学院生)
こんにちは
田中えりかです。
JOIDES Resolution号は、日付変更線を西から東に通過し、現在2度目の2020年1月31日を迎えました。
日本では、「エンドレスエイト」といって延々と夏休みを繰り返す回を流したアニメがありますが (世代でない方はすみません…)、アメリカにも似たような映画があり、”Groundhog Day”という名前です。こちらは、2月2日を延々と繰り返すお話です。
そして、1月31日 (2度目) の00:45からは、この映画の上映が行われました。研究者、技術者関係なく、三々五々集まってバケツサイズのポップコーンとコーラを片手に見る映画は最高でした。
さて、1月31日 (1度目) には、日本の高校にZoomというアプリを使って接続し、JOIDES Resolution号の船内の様子を紹介する試みを行いました。
撮影中の様子はこんな感じでした。
ドリルリグやラボ内を紹介した後、質問コーナーを行いました。
後半は、アメリカの研究者にも登場してもらい、二人で回答を行いました。
質問と回答の一部を紹介します。
Q. 船上と陸上のラボで違うところは?また、ものが動いたりするときにはどうするの?
A. 一番の違いは、船上だと揺れたりものが動いたりするところ。(2人とも同意見でした)
船内のものは基本的には、固定されていたり、普通より重くして、動かないように工夫がなされています。
Q. 船酔いにはならないの?
A. JOIDES Resolution号ぐらい大きな船だと大丈夫。ただし、浅いところでの航海や、これより小さい船だと、揺れが大きくて、酔いやすいことが多いかも。
Q. 一番好きな食べものは?
A. LAVA Cake! (2人+撮影していたアウトリーチメンバー2人が声を揃えました)
土曜日に出てくるスペシャルメニューで、チョコレートケーキの中からチョコレートソースが流れ出てきます。隣にはアイスが添えられています。かなり甘いですが、おいしいです。
これが噂のLava Cakeです、このメニューが出るようになったのは、ここ10年ほどのことのようです。
Q. 休みはあるの?空き時間には何をしているの?
A. 基本的には、12時間交代で毎日作業をしています。部屋は2人部屋ですが、片方のシフト中は、もう一人が占有できるように割り振られています。
シフト以外の時間は、バンドを組んで歌を歌ったり、船内にあるジムに行ったり、みんなで映画を見たりしています。
Q. 他の分野の研究者の人たちと研究について話したりするんですか?
A. 食事の時間、作業の時間、シフト以外の時間、ジムに行ったときなど、四六時中議論をしています。
思ったことはすぐに共有して、ずっと話し合いをしています。
参加してくださった皆様ありがとうございました!
私自身、久々に日本の空気を吸えて、リフレッシュできました!
下船まで
2020年2月6日
田中 えりか(東京大学 大学院生)
こんにちは
田中えりかです。
早いもので下船まであと1日となりました。
(日付変更線を越えたので、日本と17時間差で過ごしています)
無事にレポート類を片付けることができたので、とても安心して下船することができそうです。
タヒチに向かう回航の間は小さな楽しみがたくさんありました。
夕日をドローンで撮影したりサンゴ礁の島 (lles Maria) のそばを通ったり
Thank you, all!
2020年2月7日
田中 えりか(東京大学 大学院生)
いよいよ本日着岸です。
華やかなメンバー
対してジャケ写のような爽やかさのある写真
全員集合写真はなんと…この場所で
タヒチに入港です!
乗船期間は終了しますが、Exp.378は、Texas A&Mでのサンプリングパーティー、Post Cruise Meetingと続いていきます。
また、そのような折々でレポートを上げられればと思います。
ありがとうございました!