航海概要
テーマ
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航海予定期間
2016年12月8日~2017年2月7日
掘削船
JOIDES Resolution
乗船/下船地
グアム/香港
掘削地点
科学目的
The IODP Mariana Convergent Margin Expedition (based on IODP proposals 505-Full5 and 693-APL) will investigate geochemical, tectonic, and biological processes at intermediate depths of an active subduction zone. This expedition will core the summits and flanks of serpentinite mud volcanoes on the forearc of the Mariana system, a non-accretionary convergent plate margin in the western Pacific. In addition, a reentry cone and casing system will be installed at three of these sites to provide the infrastructure for post-cruise installation of long-term monitoring; the existing Hole 1200C borehole observatory (CORK) will also be removed.
Sediments, rocks, and fluids recovered during this expedition will be used to (1) to understand mass transport and geochemical cycling in subduction zones of non-accretionary forearcs at convergent margins; (2) to ascertain spatial and temporal variability of slab-relate fluids in the forearc environment to trace dehydration, carbonate dissolution, and water/rock reactions in the subduction zone; (3) to understand physical properties of the subduction zone as controls over dehydration reactions and seismicity; (4) to study spatial and temporal variability in metamorphic and tectonic processes and the history of these processes in non-accretionary forearc regions; and (5) to investigate controls over biological activity associated with these mud volcano processes.
南マリアナ前弧の海底地形と海山
(太字が掘削ターゲットの海山)
各掘削サイトの概要
※実際のオペレーションは後に公開されるScientific Prospectusに基づいて行われます。この情報は、オリジナルのプロポーザルに基づくものですのであくまで参考情報です。
岩相 | 年代 | 掘削深度 | コアリング方法 | |
---|---|---|---|---|
MAF-02B | 蛇紋石泥(泥火山) | 不明 | 200m(水深3,560m) | APC, XCB |
MAF-03B | 蛇紋石泥(泥火山) | Holocene | 250m(水深3,850m)年代: | APC, XCB, RCB |
MAF-09B | 蛇紋石泥(泥火山)掘削予定深度: | Holocene | 150m(水深2,000m) | APC, XCB, RCB |
MAF-11A | 蛇紋石泥(泥火山) | Holocene | 150m(水深1,260m) | APC, XCB, RCB |
MAF-12B | 蛇紋石泥(泥火山) | 不明(Pleistocene?より若い) | 250m(水深1,400m) | APC, XCB, RCB |
MAF-13A | 蛇紋石泥(泥火山) | 不明 | 250m(水深2,200m) | APC, XCB, RCB |
MAF-15A | 蛇紋石泥(泥火山) | Holocene | 100m(水深3,666m) | APC, XCB, RCB |
MAF-16A | 蛇紋石泥(泥火山) | 不明 | 250m(水深4,500m) | APC, XCB, RCB |
※コアリングについて
- APC (Advanced Piston Corer):軟質なウーズや堆積物に使用される
- XCB (Extended Core Barrel):固結した堆積物に使用される
- RCB (Rotary Core Barrel):結晶化した硬質な堆積物及び岩石に使用される
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共同首席研究者
Patricia Fryer and Geoffrey Wheat
J-DESCからの乗船研究者
氏名 | 所属 | 役職 | 乗船中の役割 |
市山祐司 | 千葉大学 | 助教 | Core Description |
鈴木志野 | JAMSTEC | 特任主任研究員 | Microbiologist |
高井研 | JAMSTEC | 分野長 | Microbiologist |
道林克禎 | 静岡大学 | 教授 | Core Description |
乗船に関わるサポート情報
乗船研究者としてIOから招聘される方には乗船前から乗船後に至る過程の数年間に様々なサポートを行っています。主な項目は以下の通りです。
- プレクルーズトレーニング:乗船前の戦略会議やスキルアップトレーニング
- 乗船旅費:乗下船に関わる旅費支援
- アフタークルーズワーク:モラトリアム期間中の分析
- 乗船後研究:下船後最長3年で行う研究の研究費
乗船の手引き(乗船前準備や船上作業・生活方法に関する経験者からのアドバイス集)>>こちら
乗船者募集
主な募集分野
- sedimentologists
- structural geologists
- paleontologists
- biostratigraphers
- petrologists
- paleomagnetists
- petrophysicists
- borehole geophysicists
- microbiologists
- inorganic/organic geochemists
- この他関連する分野
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募 集〆切
2015年8月17日(火)
2015年9月30日(水)※延長しました
〆切ました。
注意事項
応募する方は全員英文CV、さらに在学中の場合は指導教員の推薦書が必要となります。修士課程の大学院生の場合 は乗船中の指導者(指導教員もしくは代理となる者)が必要です。
最終更新日:2017年2月6日
※日付は日本時間
レポートインデックス
レポート9(2017年2月6日)>>スーパースターは、期待を裏切らない。
レポート8(2017年1月30日)>>Meet Characters! Meet Sciences!
レポート7(2017年1月24日)>>船上レポート事情
レポート6(2017年1月11日)>>研究者夫婦の事情
レポート5(2017年1月11日)>>Geologyって時間と空間を旅できる楽しい学問だけれど、チャレンジもたくさん!
レポート4(2017年1月5日)>>夜な夜なコーラス隊が船内をくまなく練り歩くクリスマス。
レポート3(2016年12月30日)>>Meet Prof. Patricia B. Fryer!!
レポート2(2016年12月28日)>>微生物も首席もスーパースターもその生き様が気になる話。
レポート1(2016年12月26日)>>IODP第366次航海、ついに始動!
レポート9:スーパースターは、期待を裏切らない。
鈴木志野(海洋研究開発機構 特任主任研究員)
Joides Resolutionは、すべての掘削を終え、陸への帰還を目指し一直線。まもなく香港に到着します。航海の率直な感想として、とても楽しい2か月間でした。この地球の海底下で起こっていることは分からないことだらけだけれど、机上の空論ではなく、現実として向き合うことができたことが一番楽しかったことです。そして、現在の人知で考えると、生命が存在し得ないであろうこの超アルカリ深部環境に、もし生命がいるとするならば「我々がどこから来て、そして、どこへ行くのか」といった月並みだけれど、進化の根源的な問いに対して、何かを伝えてくれるはずだと思えると同時に、その過酷な環境を克服してきた生命たちが、生存戦略の一環として身に着けた機能の中に、人類がこの地球で生き続けるために利用できるものがあるかもしれないと期待したりもしてしまいます。それらをきちんと見出してあげられるかは、個々の研究者が、先人の研究と自分の経験をもとに磨き上げてきた感性にかかっています!帰国後、微生物の解析をするのがとても楽しみです。
さてさて、最初のレポートで「生き様が気になる」として、微生物、首席研究者、そして、スーパースターを挙げたと思うのですが(船上レポート2を参照)、微生物は帰国後解析し、首席研究者のPattyにはインタビューを敢行したので、最後は乗船している日本人研究者で、自称スーパ―スター高井研博士について、レポートしたいと思います!とはいえ、本人の言葉はいろいろなところですでに紹介されてきているし、彼の研究については海洋研究開発機構(JAMSTEC)のホームページに載っているし、本人のWikipediaもあるので、本レポートでは、2か月共に船上で過ごしてきた私の客観的な主観(?)により、彼の人物像、研究者像を伝えたいと思います。
高井研博士は、国立研究開発法人海洋研究開発機構研究担当理事補佐、かつ、深海・地殻内生物圏研究分野分野長 という長く立派な肩書きを持つ方なのですが、同じJAMSTECにもかかわらず、私はこれまで高井さんとはほとんど接点がなく、彼の人となりについて知る機会もありませんでした。乗船するなり「女の子はみんな俺にはまる」と豪語し、自分のことを「客観的に言って、天才でスーパースター」と言ってしまう彼に、当初は「このチャラいおじさん大丈夫か?日本人の恥じらいはどこへ行った?!」と思っていましたが、約2か月を共に過ごしてみて、(女の子のことはさておき)漫画One Pieceのルフィ―の名セリフ「海賊王にオレはなる!」のように、彼は実際にすでにスーパースターなのかもしれないけれど、それ以上に「スーパースターになる覚悟のある人」で、「そのために誰よりも努力できる人」で、「周りの期待を受け止め、その期待以上に応えることを楽しみ、最終的には周りを巻き込むことができる人」であることが分かりました。そして、それがきっと人々を惹きつける理由なのだと感じました。
研究者としての高井さんは、壮大な地球史、生命史における時間と空間を大胆に旅するための知識と経験と知性とツールとチームメンバーを持ち合わせていると同時に、本人の自然科学への真摯さ、純粋さ、遊び心、飽くなき好奇心、そして、生まれながらの勝ち気さが絶妙なバランスで共存している研究者なので、これまで誰も描き切ることができなかったマリアナの全貌を描いてくれるはずと信じることができます。ただ私も同じ研究者なので、そこは負けてられません。誰も踏んだことのない地に飛び込んで、誰も見たことのない生命の神秘を見出すことが研究者の醍醐味なので、彼とは違った視点で、私ならではの手法で、マリアナの蛇紋岩海山に生きる生命の真の姿をあぶりだしていきたいと思っています。
ところで、研究者の性分としてはどうしても「女の子はみな、高井さんにはまる。」という本人の自説(実際は仮説)を検証してみたくなり、高井さんと同じシフトで、彼と関わることの多かった女性乗船研究員、および、JRスタッフに聞いてみました!結果は・・・本当に全員「Yes!!!」で、皆彼のファンになっていました:)。証言者K&B「「Catwalk Ken」は本当に素敵。コアを待っている間に必ず何かCrazyなことをしてくれるの。だから、私たちはワクワクすることを表現するときに「Catwalk Ken」と言っているの。」(Catwalkとは、コアが最初に上がってくるところで、研究者はそこで待機して、コアが上がってくるのを待ちます。Kenは高井さんの呼び名です。)証言者L「彼は最高!彼は自分が何をすべきなのか、常によく理解していて、仕事に対してとてもまじめで、説明もとても上手。でも、全体としてはとても遊び心のある面白い人。」証言者C「彼はCatwalkのKingよ!」だそうです。本人の仮説はやはり正しかったようで、「ただの勘違い男なんじゃないのか???」と疑ってかかっていた私の仮説は、見事に否定されました:)。
そして、私はというと、高井さんとは船上では、半分はこの上なく下世話な話をし、一瞬の隙も逃さずに浴びせられる愛の(?)ムチに耐え、でも、きっと一番優しくしてもらったのは私だろうし、何より研究者として成長させてもらったことは間違いありません。そして、仕事もプライベートもいろいろとあるのかもしれないけれど、それを感じさせず、常に変わらず明るい高井さんが近くにいてくれたおかげで、私もずっと笑って過ごすことができました。高井さんは純粋な科学の真の価値を知る数少ない研究者の一人だと思うので、いつかJAMSTEC号を高井さんがリードする日が来たら、その時は私も乗船して、Crazyなことで「Catwalk Ken」して、船を一緒に盛り上げることができたら楽しそうだなと思えるそんな人でした。
レポート8:Meet Characters! Meet Sciences!
鈴木志野(海洋研究開発機構 特任主任研究員)
Joides Resolutionはいよいよ終盤。ビールへのカウントダウンも始まりました!掘削終了まで、あと2日です!
アメリカでは、個性的な人のことを「彼、彼女はCharacter (キャラクター)だ」といった言い回しをすることがあります(よくないニュアンスを含む場合も多々ありますが。。。。)。今回は、魅力的な「Characters」である乗船研究者たちが、ここで得られたサンプルを基に、帰国後、どのようなサイエンスのミッションに挑むのかについて、2人の研究者から話を聞いてみました。
Geochemist: Olivier J. Sissmann, PhD.
フランスから乗船しているOlivierは、日本が大好きな筋金入りのオタクで、彼のiPadには、私の知らない日本のアニメ動画がたくさん!彼の宝物は、ガンプラとガンダムのTシャツと、NARUTOのフィギュアで、彼のiPhoneには、日本語のアニメソングか、ゲームソングしか入っておらず、コアがうまく上がらず、空振りが続くときは、一緒に宇多田ヒカル(ゲームソング)を歌いながらコアを待ったりしています。
そんな彼は、この海山でたくさん検出されるメタン、メタンが重合したアルカン、および、有機酸(ギ酸や酢酸)がどのようにして作られたのか、その起源の詳細を明らかにしようとしています。メタンの起源を知ることが、なぜ重要なのか・・・。それは、非生物反応によって生成されるメタンは、「生命の起源」に直結すると考えられているからです?!
地球上のメタンは、メタン菌(つまり生物)によって生成されたものが大部分であると考えられていますが、この海山には、地質学的、化学的反応のみで生成されるメタンが多く存在すると考えられています。酸素のない初期地球に似た環境で、生物反応を介さずに無機的な炭素(二酸化炭素等)が有機的炭素(糖、脂質、有機酸、アルコール等。つまり、生命にとっての必須基質)に変換される際の第一段目の物質、それがメタンだと考えられています。よって、非生物的に生成されたメタンが存在するということは、初期生命が用いたであろう非生物的に生成された有機物という話に直結してくるというわけです。
Geochemist・Geologist: Catriona Menzies, PhD.
スコットランド出身のCatrionaは、間違いなくこの船の「太陽」。いつも明るく、ポジティブで、イベント大好きな、博愛主義の、超カワイイ天然系の女の子です。そんな純真無垢な明るさ、かわいさに癒され、とろける乗船研究者は数知れず。「私が明るくないと皆が悲しむから!!」「クリスマスが来ると思うと毎日興奮して、もう3日間ほとんど寝てないわ!(クリスマスの一週間以上前の話。)」「30歳を過ぎても、「fun(面白いこと、ばかげたこと)」を楽しめない人間には、なりたくないわ。」「この船最大のジョークは「Dr. Catriona」よね。」などなど、放つ言葉も弾ける可愛さにあふれています。
そんな彼女は、Geochemistなのですが、Geochemistryの手法を用いて、Geologyを理解する、つまりは、Geologistでもあるわけです。彼女はこのマリアナでの航海で、沈み込んだプレートを構成する鉱物由来の水が(*鉱物の脱水反応により、水が生じます。)どれくらい表層に上がってきているのかを明らかにし、最終的には、このマリアナ沈み込み帯における、鉱物由来の水の流れ、循環、を明らかにすることを目指しています。彼女はニュージーランドの断層掘削プロジェクトにも参加しており、マリアナ前孤に見られる沈み込み帯領域、また、陸上の断層領域における、水の流れ、岩と水の反応による岩の膨張、そこに生じる圧力、そういったものが、最終的にどのようにして、地震を引き起こすのか、ということについても総合的に理解しようとしている研究者でもあります。
レポート7:船上レポート事情
鈴木志野(海洋研究開発機構 特任主任研究員)
Joides Resolutionは、すべてのCORK設置を終え(船上レポート5参照)、現在、セレスチア海山で最後の掘削に入ろうとしています。CORK設置はどの海山でもトラブル続きで、共同首席研究者らは、(そして、乗船研究員も)その進み具合に一喜一憂していましたが、無事に設置が完了しました。掘削研究の難しさを目の当たりにするとともに、共同首席研究者のみならず、乗船技術者、および、陸上でサポートしているIODPのメンバーらの経験と知識により、我々のサイエンスがサポートされているという事実に、あらためて感謝です。
さてさて、今日は、第一回目の乗船レポートは、千葉大学の市山先生が書いてくださったのですが、その後、なぜ私(鈴木)ばかりになっているのか、について、レポートしてみたいと思います。えっ、そんなこと???と思うかもしれませんが、これには、船内の深い(?)事情が隠されています。
このJoides Resolution。元々は、Marine Geology(海洋地質学、海洋地球科学)研究を行うために作られた船なので、地質学の研究をするための設備は一通りそろっています。残念なことに、私個人は、どんな機器が、何を計測するためにあるのか、について正確に把握できていていないのですが、(一部の機器については、市山先生が千葉大学のFacebookで紹介しているので、そちらを参照してください。)、割り当てられているスペースも非常に広く、Geologistが集まって解析したり、ディスカッションしたりするには十分なスペースがあります(写真1、写真2)。また、化学的解析をするための設備も、一通りそろっており、Geochemistもまた、コアに含まれている間隙水の化学成分解析に余念がありません。これら、船上で得られたデータは、乗船研究者全員の知能を結集して、非常に詳細なレポートとしてまとめ上げられ、これが人知として蓄積されていくのです。そのため、毎朝ミーティングが開かれ、これまで出たデータをどう解釈すべきかについていろいろな議論がなされています。よって、GeologistとGeochemistは乗船期間中、データの取得、解析、レポート執筆に勤しむ日々となるのです。
一方で、微生物学は後から参入した分野なので、Microbiologistは、写真3のように、現在のところ、とても狭いスペースに皆で寄り集まって仕事をする状態が続いています。微生物学の解析には、高性能な解析機器が必要であり、また、その解析に時間がかかることが多いため、船上に微生物学的解析に必要な設備や機器は揃っていません。そのため、データを出しようがない状態となっており、結果的に、船上での詳細なレポートを記載していくことは、難しい状況となっています。そのため、下船後、個々が論文という形で人知に貢献していくことが強く求められています。
では、何のためにMicrobiologistは乗船しているのか?―――それは、微生物は生き物なので、外部の環境変化に非常に敏感で、コアが掘削された瞬間から、刻一刻と変わっていってしまうものなのです。なので、コアが上がってくるときには必ず待機していて、サンプルを得て、その後、できる限り早く、できる限りきれいな環境で、サンプルをその後の研究に用いることができるように処理し、保存するという作業をします。保存されたサンプルは、それぞれの国に帰国後、自分たちの研究室で解析されます。ということで、Microbiologistは、コアが上がり続けている間は、寝る間もないほど忙しいのに、移動やCORK設置などでコアの上がってこないときは、まとまった(充電)時間が取れるのです。
この船上で、微生物学専門の日本人は私だけなので、結果的に、私が船上レポートを書く時間を見つけられているというわけです:)。
レポート6:研究者夫婦の事情
鈴木志野(海洋研究開発機構 特任主任研究員)
IODP航海では、いろいろな国の研究者が乗ってくるのですが、単純に、職場結婚するとそうなるからか、配偶者が研究者という場合も少なくないようです。今回は、そんな研究者夫婦の各国の事情について、レポートしたいと思います。
今回の航海において、中国、韓国、アメリカからの男性乗船研究者、オーストラリア、日本(私)からの女性乗船研究者の5人は、既婚だが、子供はいない、もしくは、子育て中で、それぞれ研究者を配偶者とする研究者です。これは、私と同じシフトの人間の中でのことなので、逆側のシフトも考えると、もっといるのだろうと思います。そのメンバーが集まると、自然と家庭の話になるのですが、興味深いのは、子育ては大変だ、とか、職探しが難しい、といったことは、共通の悩みとして存在するのに、夫婦で研究者をするには、とか、子供の教育という話になると、意外としっくり理解し合えないことが多いです。それは、お国事情によって、妻だったり、母だったりという立場や機能(求められているもの)が変わったり、子供の教育に求めるものが変わったりするからなのだろうと思われます。
中国の彼は「夫婦2人で働かないと家庭の経済が回らない!だから、今も妻は南極に航海中で、息子は私の母が面倒みている。働かない妻なんて、信じられないよ!!」と言い、アメリカの彼は「妻がニューヨークにポジションを見つけたから、僕も彼女について、前職を辞め、ニューヨークで職を見つけた。本当は南カリフォルニアが好きなのだけれど、妻はニューヨークがいいって言うから。。。。でも、妻と一緒にいられることが、僕にとっては一番の幸せなんだ。」と言い、オーストラリアの彼女は「夫は安定した職についているし、私の今の身分(半分は研究所、半分は研究ファンドで雇用されているという身分)は、ファンド探しが大変だけれど、私は若い女性だからか、企業がファンドを出してくれるの。だから問題ないわ。」と言い、韓国人の男性は「妻は、2人の子を育てるために家庭に入ってくれた。子供が育ったら、仕事に復帰したいと思っているらしいが、彼女は家族のために、いろいろなものを犠牲にしてくれたのだと思っている。」と言います。
日本人の私は、夫婦で出張がかぶらないように調整するし、夫より先に職を見つけて、「ついてきて~。」と夫に言ったことはこれまでにないし、若い女性だからといって、ファンドをもらったこともないし、仕事を完全にやめて家庭に入ったこともありません。つまり、このすべてに当てはまりません。なので、会話が「あぁ、そうなんだ。。。」という感じになってしまうのです。
私にとって、IODPの航海で母親が2か月も家を空けるということは、単純に子供と離れるさみしさとか、子供への申し訳なさとか、夫への負担の増大に対する申し訳なさとか、そういったことを除いて、それとは違う罪悪感を覚えたりするものだったりします。それは、私自身が、日本という国で、「妻(母)は家庭を守るもの」という価値観に育ったからなのだと思います。でも、現実は、私のいない時間が、娘2人の成長(自立)を促していることは明らかだし、娘たちと娘たちの祖父母(つまり、私たちの両親)と過ごす時間が増えることで、彼女たちが祖父母からも愛されているのだということを、実感できる時間となっています。夫も、家事を回すということに関しては、祖父母のサポートがあるので、むしろ日々の家事労働が減り、充実した仕事ができているようです。
そういう意味では、これがあまりに頻繁に続くようでは親子関係に問題が生じそうな気はするものの、私と夫の両親が許せば、意外と悪い面は少ないのかもしれない、と思うようになってきました。
でも、どこかで、そうすっきり割り切れないのは、やはり、私が受けてきた教育が故なのか、それとも、母親として、十月十日を共に過ごし、夜な夜な授乳を繰り返した幼い娘に、一瞬でも忘れられてしまうような事態に耐えられそうにないからなのか。。。。航海に参加していて、私も家族も、それぞれ楽しく過ごしているのに、ふとそんなことを(空き時間に)考えたりしてしまいました。
それはさておき、中国人の彼と話していて、あの中国人研究者のエネルギッシュな働き方で、中国10億人のうち、働ける男女が共に、なりふり構わずバリバリと働いたら、日本は絶対勝てないと思ってしまいました。
ではでは、次はどんなコアに出会えるのか、楽しみです。
レポート5:Geologyって時間と空間を旅できる楽しい学問だけれど、チャレンジもたくさん!
鈴木志野(海洋研究開発機構 特任主任研究員)
現在、Joides Resolutionは、第2の蛇紋岩海山、ビッグブルーの掘削を行っています。
さて、前回は船内での生活についてレポートしたのですが、実は、「そもそも船の上で何の研究をしているの?」と思う人も多いはず。(日本語での詳細は、JAMSTECのホームページにあるので、そちらをご参照ください。)乗船研究者は個々のミッションを持って船に乗ってきているのですが、今日は今回の航海全体における科学的なミッションに焦点を当てて、なるべく簡単にレポートしたいと思います!
今回、我々が掘削しているのは、マリアナ海溝周辺に点在する蛇紋岩泥火山です。蛇紋岩とは上部マントルを構成するかんらん岩と水が反応しできた岩石のことです。このマリアナの海底では、海溝と呼ばれるとても深い「溝」があり、そこでは海洋プレートが地球内部のマントルへ沈み込んでいます。その沈み込んだ海洋プレートから供給される水と上部マントルのかんらん岩が反応し、蛇紋岩ができ(蛇紋岩化作用)、それが、泥火山となって噴き出してきていると考えられています。
その際に、先日、共同首席研究者のPattyもインタビューで言っていたように(船上レポート3を参照)、マントルの岩石だけでなく、沈み込んだ海洋プレート由来の岩石(ブルーシスト等)も同時に、泥火山から噴き出してきていることが確認されているので、今回の航海では、沈み込み帯における上部マントルおよび蛇紋岩泥火山の間での物質(そして、生命!!)の移動、および、循環を明らかにしようというのがミッションです。そのために、沈み込んだ海洋プレートの海底からの距離(深度)の違う蛇紋岩海山を3つ掘削しています(図を参照)。(地質学の説明については、千葉大学 市山助教監修)
この図を見ると、まるで明らかになっているようですが、これも全部、Pattyをはじめとする蛇紋岩海山を研究してきた科学者たちの「仮説」。この仮説が真実か否かは、これから明らかになっていくのだと思います。
と知ったように書いていますが、私は微生物学者なので、この船に乗るまで、実は物事を地質学的時間と空間の中でとらえる術を持っていなかったのですが、ここに来て、コアを囲んで地質学者らと話しているうちに、(知識不足は否めないけれど)その時間と空間の感覚を共有できるようになってきて、Geologyの楽しさ、スケールの大きさが分かり始めた気がしています。そして、同乗船研究員で、JAMSTECの高井研博士によると、面白い岩石が上がってきたときは、今回の(若干年上の)地質学者らは、ただただ腕を組み、じっと石を見つめて、黙っているとか。きっと、一つの石から、この石をここまで運んだいきさつについて、色々な想像を膨らませている時間なのだろうと思います。楽しそうだと思いませんか?
今回の航海、実は研究申請書(研究の意義や研究計画が記されたもの)は早々に採択されたらしいのですが、予算が問題となり、実現するために、共同首席研究者の2人は、とても苦心したようです。実際、申請書が採択されてから、実現までに、何と13年間もかかったとか!
そして、この研究が今後さらに発展できるかは、実は、現在この航海中に取り付けを目指しているcirculation obviation retrofit kit (CORK)の設置に成功するかどうかが生命線の一つだったりします。CORKとは、長期間隙流体計測装置とよばれ、掘削孔を密閉し、海底下の間隙水の流動を計測する装 置のことで、孔内に温度計、圧力計、採水ホース等が設置できるものです。ただ、蛇紋岩泥は、まるでクリームチーズようなネトネト感なので、海底下数千メートルのネトネト泥海山の掘削孔にCORKを設置するのはなかなか難しいようなのですが、そこは、経験豊富な掘削技術者やエンジニア、そして、CORKによる研究の専門家で共同首席研究者のGeoff Wheat教授に期待するしかありません!
深海掘削研究は、私も初めてですが、予算確保から、航海期間中、そして、実際、個々のミッションの研究データを出すところまで、本当にあらゆるポイントで思いもしなかった難局が待ち構えているなと感じます。それも、技術的、科学的知見の蓄積が未熟なパイオニア研究が故のリスク。私個人としては、そんなパイオニア研究への挑戦を楽しみつつ、私でなければ見いだせなかった科学の真実を見出し、人知に貢献できたら、最高だと思いながら、乗船を続けています。
レポート4:夜な夜なコーラス隊が船内をくまなく練り歩くクリスマス。
鈴木志野(海洋研究開発機構 特任主任研究員)
今回は、船内のHoliday eventについて書いてみようと思います。12月8日から2月8日には、これでもか!というくらいに祝日が詰め込まれています。特に、欧米人にとって特別なのは、クリスマス。船上でも、家族に会えないさみしさをごまかしながら、皆で集まったのですが、その名も「クリスマスショー」。えっ?クリスマスパーティーじゃなくて、クリスマスショー???
クリスマスショーの幹事は、抜群に仕事のできる、繊細かつ大胆なジョイデスレゾリューションの女番長、リサ。彼女は公募で集めたコーラス隊を完全に仕切っていて、なんと、シフト交代の時間帯に、コーラス隊は毎日決まって1時間(かそれ以上)コーラスの練習をする。私も、クリスマスの3日前に、たまたま練習中のコーラス隊の前を通りかかり、そのまま「日本語のジングルベルを歌う人材」として、コーラス隊に入れられてしまった。
さてさて、クリスマス当日、都合よくケーシングが入り、コアが上がってこないことが確定。そこで、リサから夜12時集合!という連絡が。でも、私は疲労もピークで、シフト明けということもあり、部屋に戻ってしまった結果、事の顛末を見逃したのだが、ナイトシフトのコーラス隊は、そこからいろいろな部屋を回って、クリスマスキャロルを7回も歌ったらしい。しかも、1回5曲以上。これには、かなり驚いた。
朝起きると、コーラス隊仲間がへとへとの顔をして、口々に「もう声がでない。」「シャワー浴びたい。」との本音が。でも、引き続き、夜歌い続けた人も含め、私たち素人コーラス隊が他の研究員や乗組員を観客として、クリスマスキャロルのコーラスを披露するという、いわゆる「クリスマスショー」が催された。「素人コーラス隊で、10曲程度のクリスマスキャロルなんて、間がもつのだろうか。」と個人的には思っていたが、そこは、さすが、クリスマスキャロルの力。個々のクリスマスの思い出と相まって(?)、温かい雰囲気で終了しました。
それにしても、リサは仕事ができるだけでなく、歌もすごくうまいし(ソロで歌声を披露してくれました)、ギターも弾け、仕事でもイベントでも優れたリーダーシップをいかんなく発揮し、仕事を愛し、船を愛し、音楽を愛し、そんなとても魅力的な、この船になくてはならない女性ラボオフィサーです。彼女がいることで、助かっている研究者はかなり多いはず。この航海の(名物?)イベント大好き女性乗船研究員が「私にとっては、リサが真のサンタよ!こんな楽しい時間をもたらしてくれたのだもの。」と一言。
そんな、素敵な女性サンタによりもたらされた、素敵なクリスマスイベントでした。
レポート3:Meet Prof. Patricia B. Frye!!
鈴木志野(海洋研究開発機構 特任主任研究員)
IODP第366次航海に参加していますJAMSTECの微生物学研究者の鈴木志野です。
前回のレポートで少し紹介したように、今回の共同首席研究者の1人、Patricia B. Fryer教授(通称:Patty)はアメリカで成功した女性教授です。掘削初日に、私がある研究者に「Atlantis Massif(中央海嶺の蛇紋岩システム)の研究もしている。」と話したところ、その研究者が「Atlantis Massifより、Marianaの方が絶対面白い。」と答えた瞬間、マリアナの女王Pattyが割って入ってきて「そんなことない!!システムが違うだけ。どちらもたくさんの面白いところがある!!」と諫め、その瞬間、私は彼女の虜になりました。ということで、Patty本人のことがもっと知りたくなり、インタビューを敢行してきたので、日本のみなさんとも共有できたらと思います。(日本語訳の語調は、私の勝手なイメージです。)
Q1「マリアナのどこに魅了されたのですか?」
マリアナ背弧、島弧と研究をし、次に前弧の研究へ移ろうと思い、その付近の地球物理学的調査を始めると、火山のような山(現在のConical Sea Mount)が見つかったの。元々火山学に興味があったから、まずそこでとても興奮したのよ。そこで炭酸カルシウムのタワーも見つけ、とても感動して、その後、その火山のような山が蛇紋岩の泥火山だとわかったの。蛇紋岩が泥として噴き出しているところはこれまでになかったから、とても驚いたし、感動したわ。そのあと、その山を掘削したらブルーシストが出てきて、それは、本当に心を打たれたわ!!!(ブルーシストとは、低温、高圧で生成される岩石で、ブルーシストが存在するということは、沈み込んだプレート由来の岩石が、蛇紋岩泥とともに山頂へあがってきたを意味する。)マリアナは、もう40年間研究しているけれど、研究を進めるたびに、次々と継ぎ目なしに、興味深いことが出てくるから、好奇心がつきないの。これからもGeoff(Wheat)やKen(Takai)が研究を続けていってくれると思うと、とてもうれしいわ。あなたも是非参加してね。
Q2「(私がアメリカで7年間研究者をした経験から)アメリカで女性が勝ち抜くには、とても強く、政治的でなければならないという印象がありますが、なぜあなたはそんなにも気さくで、チャーミングでいられるのでしょうか?」
私は面白いと思った事(Excitement)をだれかと共有し、それで、周りの人とつながっていられることが、とても大好きなの。科学はとても楽しいものだから、いつだって、この面白さを共有したいと願うし、相手が面白いと思うことも知って、さらにつながりたいと思うのよ。そうして、複数の人(知識)が融合した時は、本当に最高の気分になるわ。恐らく私は科学的発見以上に、そのExcitementを共有することに喜びを見出しているのだと思うわ。この仕事は、趣味が仕事になったようなものだから、いつだって楽しくいられるし、本当にラッキーだと思っているの。その証拠に、私は小さい時から、山を歩いて石を集めるのが大好きだったし、初めて図書館で借りた本は「Vesuvius 70AD」(ポンペイが火山に襲われる話らしいです;;)だったの。確かに、私がFaculty(大学の教員の職)になった時、Geology部門では女性教員が2人しかいなくて、かつ、フィールドワークは男性の聖域だったから、フィールド調査や航海に出ることで、とても珍しがられたし、嫌がらせも受けたわ。だけれど、そのことは私のGeologyに対する好奇心に対して、何ら影響はなかったし、これまで、誰かと競おうと思わずこの仕事をしてきて、今でも仕事を続けていられているのだから、私は本当にラッキーだと思っているの。特に、私の生まれた家族は、父と母に19人の兄弟姉妹がいるのだけれど、私のいとこたちの中で、collageに行ったのは私だけだったし、大学院まで行ったのは、今でも親族で私だけなの。そんな家庭で育ったから、今の状況は本当に不思議なくらいよ。私の中の科学者の定義は「好奇心を失わない者」。だから、8歳くらいの少年少女も、まさに科学者だと思うことはよくあるし、逆に好奇心さえ失わなければ、私はずっと科学者でいれると思っているわ。
Q3「旦那様、お子様との家庭生活と、研究者、教授としての仕事の両立は大変でしたか?」
夫も研究者で、夫とは初めての航海で出会ったの。素敵でしょ?とても背が高くて、ブロンドの髪をしたイケメン(good-looking guy)で、とっても素敵だったの。その時から今まで、ずっと共に生きてきたわ。夫は仕事にとても理解があるし、私がサイエンス、そして、航海が好きなこともよく知っているから、応援もしてくれたし、私も彼に協力もしてきたわ。娘は歌手なのだけれど、生計を立てていくのが大変で、少し心配しているの。娘が3歳の時、娘と離れて航海に出るのはとてもつらいと思ったことはあったけれど、結局娘は何も覚えてもいないのだから、気にすることはないと後でわかったわ。
Q4「趣味はありますか?」
裁縫が趣味よ。今回Geoff が着たサンタクロースの衣装も、私が夫のために作った衣装なの。あとDingy(小さいボート)のレースに出るのが大好きで、Dingyのレースでこれまで負けたことは一度もないわ。
(インタビュー後の感想)Pattyもそうですが、魅力的だと感じる研究者は、自分の好奇心に素直で、自然科学に真摯に挑み続けている人が多いなと感じます。第一線の研究者として活躍し、イケメン科学者の旦那様と共に支え合いながらお子様を育て、女性としてもとてもチャーミングなPatty。Pattyが、自然体で、無理がなく、人生を楽しんでいられるのは、彼女の中で、何が好きで、何を楽しいと感じるのか、そして、恐らく何が幸せなのか、ということの優先順位がきっちりつけられているからなのかなと感じました。同じ母として、研究者として、とても素敵な生き方だと感じたし、こんな素敵なロールモデルとなる女性研究者が日本にも増えれば、研究者になりたいと思う若い女性もきっと増えるのではないかと感じました。
レポート2:微生物も首席もスーパースターもその生き様が気になる話。
鈴木志野(海洋研究開発機構 特任主任研究員)
IODP第366次航海に参加していますJAMSTECの微生物学研究者の鈴木志野です。乗船して3週間がたち、1つ目の山、ブルーム―ン海山の掘削を終えました。
掘削中は、忙しい時には1時間に1つのコアが上がってくるので、首席研究者の監督の下、ガスサンプルを採取し、微生物サンプルを採取し、終わるころには次のコアがすぐそこまで来ていて、そんな日々が数日続くと、「Core on Deck」の船内放送が恐怖のアラームでしかなかったのですが、今は1つ目の山の掘削を終え、束の間の休息を楽しみ、そろそろ「Core on Deck」が待ち遠しくなってきた、そんなところです。
初航海の率直な感想として、微生物学者にとっての掘削航海の醍醐味は、海底(ここでは水深約4000 m)のその下がどうなっているのか、5感のすべてで(いや、味見はしていないから4感か。。。)感じられるところだと思います。ここは蛇紋岩泥火山なので、基本的には、ねちょねちょした粘土のような青い泥の間に、風化した黒い蛇紋岩の塊が散らばっているような、そんなコアが上がってきます。やはり生身のコアと戯れると、生命は、地球規模の時間軸の中で、沈み込み帯 (80-300ºC)と蛇紋岩海山(~pH12.5)の劇的な地質学的、地球化学的変遷にさらされ、一体どういった旅をし、どういった適応進化してきたのだろうかと、現実として思いを巡らせることができます。その時間は至福の時です。
そして、もう1つの醍醐味は、世界中の異分野の研究者から、たくさんの知識を学べるところです。今回の共同首席研究者の1人、ハワイ大学のPatricia B. Fryer教授は、マリアナの女王と呼ばれるほど、この地に魅入られ、長年研究を続けてこられた地質学者です。「女王」という響きとは裏腹に、とてもかわいらしく、かつ、聡明な女性で、コアを見ながら、その背景で起きたであろう地質学的動きについて、私にもわかりやすく簡潔に、そして、楽しく説明してくれます。同じ女性研究者として、一瞬にしてファンになってしまいました。(この報告をダシに(?)女性研究者としての生き様について、取材を申し込んでみようかと思っていますので、お楽しみに:))。様々な地質学者、地球化学者とコアを囲んで話していると、彼らが何を見て、そして、それをどう感じ、どう考えるのかが学べて、私も研究者として一回り成長できているように感じています。
こうやって、サイエンスにどっぷりつかる日々は楽しくもあるのですが、とりわけこの冬のシーズンはクリスマス、お正月と、イベント続きで、家族を思い出し涙する。。。。。そんな時も、共同首席の出番。パーティーでサンタクロースになったり(アラスカ大学C. Geoffrey Wheat教授)、みんなにハワイアンクリスマスダンスを披露したりして(Patricia B. Fryer教授)、みんなを盛り上げてくれました。首席の2人は、科学者のみならず、船のクルーたちにもこの掘削の科学的背景を説明するセミナーを催したり、皆の渋い顔を横目に大小さまざまな決断を下したり、本当に権利とは重責が伴うものなのだとつくづく思ったりします。セミナーと言えば、昨日はJAMSTECの自称スーパースター高井研博士が、皆をアッといわせる発表をして、JRの話題をさらっていきました。さすがスーパースター!
レポート1:IODP第366次航海、ついに始動!
市山祐司 (千葉大学 助教)
今回IODP第366次航海に参加しております千葉大学の市山祐司と申します。少し遅くなりましたが、IODP第366次航海の開始から現在に至るまでの様子を簡単にご報告させていただきます。
我々は、12月8日にグアム島を出航し、現在はブルムーン海山と名付けられた蛇紋岩と呼ばれる岩石で形成された海底の高まりを掘削しております。私にとってIODP航海の参加は初めてであったため、興奮と大きな不安とともにグアム島に到着しました。グアム島では5日間の停泊があり、その間にこれから2か月間の船上での研究や生活についてのガイダンスを受けました。グアム島と言えば、何といってもビーチリゾートです。乗船前は、この停泊期間中にグアム島を満喫しようと目論んでいたのですが、乗船と同時に体調を崩してしまい安静を強いられる羽目となってしまいました。最悪のコンディションでのスタートに、早くもホームシックにかかってしまいました。でも今はもう大丈夫です。航海開始直後は、不慣れな英語生活と馴染めない食環境に大きなストレスを感じておりましたが、2週間が経過して今は(我慢することに)かなり慣れてきました。そしてもう一つストレスを感じること、それはトイレです。各部屋にシャワーとトイレが付いております。このトイレが旅客機と同様のバキューム式のトイレなのですが、なぜか朝起きてからの最初の反応がとても悪いのです。15分ほどの間隔をおいて最終的には流れてくれるのですが、いつもハラハラさせられます。
研究の方では、私はコア試料の記載を担当しています。採取されたコア試料の地質学的特徴や岩石の特徴を観察・記録していきます。コアの記載は1チーム6人から構成される昼と夜の2チーム交代制で作業を行っています。私のチームは全て異なる国から参加してきた研究者から構成されておりますが、今のところみんな協力して作業を進めていくことができています。さて、注目のコア試料ですが、私の目的の試料はたくさん採取されておりますが、なかなか状態の良いものが採取できていません。こうなると、比較的良い試料が採取されるやいなや熾烈な試料争奪戦の火蓋が切られます(写真)。これにもまたストレスを感じつつも、まだまだ航海はこれからだと自分に言い聞かせながら現在に至っております。ブルムーン海山の掘削も終わりに近づきつつあり、今後は残り2つの蛇紋岩海山の掘削が予定されています。これから一体どのようなコア試料が現れるのでしょうか?長い航海を満喫したいと思います。
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