Exp. 340 Lesser Antilles Volcanism and Landslides

航海概要

航海概要

テーマ

Drilling volcanic landslides deposits and volcanoclastic sediments in the Lesser Antilles Arc: implications for hazard assessment and long term magmatic evolution of the arc
(IODPでのテーマカテゴリー:Solid Earth Cycles and Geodynamics)

プロポーザル#681-Full2(フルバージョン)>>外部リンクはこちら(PDF)
Scientific Prospectus>>外部リンクはこちら

航海予定期間

2012年1月17日~3月18日

 掘削船

JOIDES Resolution

掘削地点

科学目的

本航海では、Lesser Antilles Arcの掘削により、火山弧の形成と崩壊のプロセスを解明する。第1の科学目的としては、(1)火山弧に沿った噴火活動のプロセスとタイミングを明らかに すること、(2)火山形成の初期海洋および地表活動期の間の火山活動を復元すること、(3)島弧火山の崩壊と海底土石流の引き金、運搬、堆積をコントロー ルするメカニズムを明らかにすること、そして(4)浸食、断片化および取り込みに関する堆積物と水の価し、リスクアセスメントへの言及を行うこと です。

USIOのページ>>こちら

共同首席研究者

Anne Le Friant、石塚 治(産業技術総合研究所)

J-DESCからの乗船研究者
石塚 治 産業技術総合研究所 研究員 Co-chief Scientist
田村芳彦 JAMSTEC チームリーダー Core Description
-Sedimentology/Volcanology
片岡香子 新潟大学 准教授 Core Description
-Sedimentology/Volcanology
前野 深 東京大学地震研究所 助教 Core Description
-Sedimentology/Volcanology
遠藤大介 筑波大学 大学院生 Core Description
-Sedimentology/Volcanology
藤縄明彦 茨城大学 教授 Core Description
-Sedimentology/Volcanology
足立辰也 山形大学 大学院生 Physical Properties/
Downhole Measurements Specialist
齋藤武士 信州大学 助教 Paleomagnetist

乗船者募集(〆切ました)

概要

Based on IODP Proposal 681-Full2, this expedition will investigate the constructive and destructive processes of volcanic arcs by drilling sites along the Lesser Antilles Arc. The primary objectives are (1) to characterize the processes and timing of eruptive activity along the arc, (2) to reconstruct volcanism during the early marine and subaerial stages of volcano construction, (3) to identify the mechanisms controlling triggering, transport, and deposition of submarine debris avalanches from collapsing island volcanoes, and (4) to assess the role of erosion, fragmentation and incorporation of sediments and water in debris avalanche mobility with implications for risk assessments.

乗船者募集〆切

2011年5月1日
2011年6月1日まで延長
適任者の応募があり次第

終了

応募する>>こちら

その他・注意事項

乗船旅費について>>こちら(乗船が決まった方は様式に記入の上お送りください)
乗船研究者のためのガイドライン>>こちら
※応募する方は全員英文CV、さらに在学中の場合は指導教員の推薦書が必要となります。
※修士課程の大学院生の場合は乗船中の指導者(指導教員もしくは代理となる者)が必要です。

乗船に関わるサポートについて

乗船研究者としてIOから招聘される方には乗船前から乗船後に至る過程の数年間に様々なサポートを行っています。主な項目は以下の通りです。

  1. プレクルーズトレーニング:乗船前の戦略会議やスキルアップトレーニング
  2. 乗船旅費:乗下船に関わる旅費支援
  3. アフタークルーズワーク:モラトリアム期間中の分析
  4. 乗船後研究:下船後最長3年で行う研究の研究費

船上レポート

最終更新日: 2012年4月17日
※更新の日付は日本時間

レポートインデックス

レポート12-2>>おわりに JOIDESは社会の縮図? そして感謝
レポート12-1>>JOIDESは世界の縮図?
レポート11>>T氏の一日
レポート10>>エキサイティング?
レポート9>>海底地すべりの起源、”島”
レポート8>>Good core!とは.そして,男/女の壁?
レポート7>>さまざまな期待
レポート6>>2つ目の孔の掘削
レポート5>>2番目の掘削地点でトラブル発生
レポート4>>最初の地点掘削終了・次のポイントへ
レポート3>>最初の掘削地点へ到着・掘削開始
レポート2>>JR号出航
レポート1>>ジョイデス・レゾリューション号乗船

レポート12-2「おわりに JOIDESは社会の縮図?そして感謝」

楽しいことも,苦しいことも,皆貴重な体験です.その瞬間の気持はいろいろですが,あとから振り返ると,すべてが自分にとって,かけがえのない体験になっているのではないでしょうか.日本の乗船者の人が,ちょっと疲れた顔をしているとき,私はそう,声かけをしてきました.すると,ちょっとあきれ顔をしつつ「藤縄さんて,すごくポジティブですね」と,少し笑いがこぼれます.また,シフト替えの時に,多忙な石塚さんと同席するときには,できるだけ自分のあほネタを披露して,まじめな石塚さんが思わす吹き出すのをみて,「よっしゃ,今日も笑い取ったぞ」と,ほくそ笑んできました.最近は何か,日本人乗船者の人には,少し,パターンを読まれてきている感じで,新鮮な笑いのためには,日々の工夫も必要です.一方,終わりの頃には,となりのRobに英語でボケをかますことも,少しできるようになりました.結構喜んでくれるんですよね.私をここに派遣するのに,まじめに苦労をしてくださった方には,はなはだ申し訳ないのですが,私はそれで良いのだと思います.笑顔はすべての原点ですから.サイエンスも,作業も,そして国際プロジェクトも,楽しくなければ成功しません.楽しくなるのは,自分たちの気持ちが前を向くことですからね.笑いは人を前向きにさせてくれます.これはGeorgesと,このJRの環境が,私に教えてくれたことです.実際,こんなおもしろい体験,そうできるものではないなあ,と思いますよ.

研究面においても,石塚さんと Anneの2人のコチーフ,そしてしっかりとした締め役のNicoleには,研究の進め方について,いろいろ励ましや調整をしていただいて,すごく感謝しています.今後の研究展開にはまだ,どれだけ自分が貢献できるのか,若干不安な面はありますが,とにかく前を向いて,頑張りたいと思います.

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写真4.ブリッジの写真(最新型のブリッジで,安全航行を保証しています.SamさんとJohnさん)

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写真5.ケータリングスタッフ(料理長のTaylorさん,いつも大盛り,ありがとう!?差し入れてくれたスコッチケーキ,半分はアーカイブハーフにしようと思ったけど,美味しくて全部ワーキングにして食べちゃいました!)

忘れていけないのは,この,海に浮かぶ地質学研究所ともいうべきJOIDES Resolutionの運営には,航海中だけでも,実にたくさんの人の協力があって成り立っている,ということです.我々研究者に直接協力してくださるテクニカルスタッフやキュレーターはもちろんですが,コアを掘る作業員の人,船としての機能を維持する船員さん,生活や研究に必要な水や電気の生産管理をする人,コアを掘るための器具の保全管理をするメカニック.さらに,おいしい食事を毎食提供してくれるケータリングスタッフ,船室やベッド,タオルの入れ替えや洗濯をしてくださるスタッフ等々.そういう方達による,快適な衣食住の支えと,それから経済支援があって,このプロジェクトが進んでいることを,(来なくても分かっているはずのことですが)目の当たりにすることができたことも,私にとっては大きな気づきでした.

また,個人的には,自分のパソコンが結構シリアスにトラブったとき,スペシャリストのマイクが,実に2日間かけて直してくれたこと,すごく印象に残っています.その最後に私が,迷惑かけてごめんね,といったら「何が迷惑なものかい,僕たちはこういう事から学んでいるんだよ(It’s learning!),問題から解決策を探る道を学ぶんだから,ウエルカムさ」と,さらりと言ったマイクの笑顔,本当にかっこよかった.

最後になりましたが,この航海を応援してくれた家族,梅津慶太さんはじめJ-DESCの支援の方々,とりわけ,準備段階から,不慣れな私たちに様々なお世話をしていただいたばかりでなく,航海中も,いつも明るく元気を送り続けてくださった,布施暁子さん・・・本当にありがとうございました.カリブの海よりも深く,深く,感謝いたします.

2012年4月12日 25回目の結婚記念日に

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写真6.夕暮れの写真(4月になってやっと撮れたカリブの夕暮れ・・・)

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レポート12-1「JOIDESは世界の縮図?」

藤縄明彦(茨城大学/Core Description-Sedimentology/Volcanology)

我らがEXP340の船上レポートも最後,私の番に回ってきました.長いようで,過ぎてしまうとあっという間,まるで私の来し方の縮図のようです.

本当に久々の英語環境の中,最初はまさに,耳と頭がさび付いていて,英語は聞き取れないし,やることは全く初めてだし,文字通り五里霧中,手探りの状態での出だしでした.私の属してきたコア記載班には,航海参加8人の日本人の中5人が入り,コチーフの石塚さんも,かなり夜シフトに加わってくださり,実際6人の日本人研究者がコア記載を体験してきました.その中で昼シフトは片岡さんと私の2人で,あとの日本人は,他の班にいる足立君(物理特性計測)や斎藤さん(古地磁気測定)も夜シフトです.元来ぶっきーな上に,加齢による物覚えの悪さで,最初はついて行くのもやっとやっと,片岡さんや,同じ班のAdamにいちいち聞きながら,まるで,できの悪い学部学生(昔の自分)のごとく,仕事をしていました.コアがどんどん上がってくるサイトでは,ほとんど目がテン状態のロボットでしたね(それって,C3POじゃないか?).

それでも,2週間もすると,私のような老働者(変換ミスではないです)でも,コツをつかみ,まあまあ,役に立つようになりました(と勝手に解釈しています).もっとも,申請時から実際に来る前も不安でしたし,乗船したばかりでも,「こんなにたくさん新しい仕事があって,自分は仕事がのろくて,足手まといになるのでは」と思っていました(でも,性格上,悲観はしていませんでした.そう,できないことはどうやってもできないんだって)が,それでも,少しでも役に立っている実感がわくと,やはり大変楽しくなります.

それよりも,こういう閉鎖空間で,いろいろな国籍の人が,ひとつの目的に向かって仕事をするのって,まさに,宇宙飛行士の訓練とか,どこぞの自己啓発セミナーをしているみたい(実際経験はないですけど)で,大変興味深く生活しています.まして,私は平のcore describerなので,気が楽で,いきおい,人間模様や組織の運営状況などを,わりと岡目八目で見られる事になります.コチーフの石塚さんのご苦労を尻目に,いやあ,勉強になりましたね.イギリス人の勤勉さ,フランス人のおおらかさ,アメリカ人のオープンマインド,ドイツ人の堅実さなどなど.一番印象深いのは,コア記載班の班長とも言うべきフランス人の火山学者Georges Boudonの,何があっても余裕を忘れない懐の深さと,それを補佐するイギリス人堆積学者Peter Tallingの勤勉さです.Georgesはどんなにさし迫った状況でも決して焦らず,必ずみんなの緊張を解きほぐして,仕事をやりやすく,楽しくさせる天才です.一方,Pete(愛称ピート)は,ほとんど寝る間も惜しんで,健康が心配になるほどコア記載のまとめをして,毎回サイトレポートを書いています.彼のおかげで,我々はここでの仕事は,ほぼコア記載に集中することができました.

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写真1.ピーターの写真 (交換した桃屋のTシャツを着て)

私はこの2人を間近でみただけでも,ここに来た甲斐があったと思います(すみません,研究のことでなくて).ある意味,人生観が変わりますね.自分が日本に帰って学生達に対峙するとき,そのままではないですが,自分なりにGeorgesのあの,引き締めて引っ張るのではなく,弛めて人をやる気にさせる姿勢を,何とか活かしたいなあ,と思います.

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写真2.ジョルジュの写真(こんなオシャレな禿頭,日本ではなかなかお目にかかれません・・・と,ちょうどこのキャプションを書いているときに,たまたまGeorgesが来たけど,日本語が読めなくて助かった!やべっ)

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写真3.モンプレー(CARI-10Bからみたマルチニク島の活火山モンプレー)

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レポート11「T氏の一日」(4月11日)

田村芳彦(海洋研究開発機構/Core Description-Sedimentology/Volcanology)

私が乗船してすぐに恩師の一人であるGill教授からメールをいただいた。それには「乗船中は学ぶことが沢山あるよ。タービダイトもそうだし、人間についてもね。」と書かれていた。彼の言葉はまったく真実であった。一風変わった人がいたので仮にその人をT氏として観察したレポートを書いてみた。本人が誰かわからないように脚色してみたが乗船の風景は十分伝えていると思う。T氏はこれまでハードロック(火山岩)を研究してきたし、それを誇りにさえ思っていた。ところが、この航海で掘削されるのはソフトな堆積物(砂や泥)ばかりではないか。T氏は”専門外”の砂泥を毎日12時間記載し続ける羽目に陥った。

T氏の一日

T氏は、22時起床。多分ほかの人たちが残業していてもすぐ寝てしまうので起きるのは早いのではないかと思われる。顔を洗ったあと、ジャージに着替えてタオルを持ってジムに直行。船が揺れているのか本人が寝ぼけているのかわからないが、以前蛇行して歩いているのを目にしたことがある。今日もアメリカ人のMさんがすでに踏み台昇降マシンをしている。T氏は「おはよう」といってランニングマシンで45分走る(後日談であるが、よく毎日飽きずにジムへ通えますね、と聞くと、Mさんに意地でも負けたくなかった、と答えたそうである)。筋トレマシンや懸垂も一通りやっているようにみえる。しかし、ドイツ人が140kgにしていたウェイトを60kgに変えているのを見たことがある。T氏は部屋に戻ってシャワーを浴びて、食堂でジュースを飲んで23時55分にのんびりコアラボに出勤してくる(食堂ではもちろん23時から食事ができる。しかし、T氏は以前、古来日本人は一日二食だった、戦国時代もそうだ、という話を聞いていたく感動したらしい。それ以来一日二食にしているらしい)。午前0時から嵐のようにコアがやってくる。T氏は毎日毎日実体鏡で砂の記載をしている。砂と言っても火山から降ってくる火山灰や、火山体が崩壊して海底を流れ下ったタービダイトである。砂に入っている鉱物、多くは斜長石、輝石や角閃石、さらに磁鉄鉱までが自形をしていてすばらしく美しい。たまに黄鉄鉱の輝きを見て感動している(黄鉄鉱は英語でfool’s goldとも呼ばれる)。このようにT氏は(前半は)文句も言わず、黙々と記載をこなしている。コアが半割されて運ばれてくる合間を狙って、6時くらいに昼食。食事がとてもおいしく、デザートもあるのでうれしそうに食べている。古来の日本人もこんなによく食べたのだろうか。食事のあと、すぐにコアの記載を再開する。まだとても元気だ。しかし、10時くらいになると時計をちらちらみながら仕事をしている。11時30分、もう今日は限界だ、と思った頃に新しいコアが来て愕然とするT氏。12時になんとか仕事の引き継ぎをする。その後食事をして(この食事もすごく楽しそうだ)T氏は自分の部屋に帰ってベッドに直行する。次の日も全く同じことの繰り返しである。

後日談その一。先日ポストクルーズの研究プランの発表会があり、T氏も自分の計画を発表した。ちなみに乗船前にT氏の欲しがっていたハードロックはほとんど掘削されていない。私はT氏が何も発表しないと思っていた。しかし、なんと驚いたことに、T氏はタービダイト(砂)を研究するという。タービダイトのサンプルを300個リクエストしてこの一帯で噴出するマグマおよび上部地殻の平均組成を求めるという。どうやら毎日12時間タービダイト(砂)を見続けたせいで、すっかり頭の中身もタービダイトで一杯になったらしい。確かに前半より後半の方が楽しそうに仕事をしているな。単純な人間はわかりやすいな、と私は思った。

後日談その二。T氏がある日就寝前に本を開くと、古来日本人は菜食主義であった、という一文があった。T氏はそれに感銘を受け、次の日から菜食主義になる、と皆に宣言して3日間野菜と果物しか食べなかった。しかし、4日目にはまた嬉しそうに普通の食事をしていた。あの宣言はどうした、と問い詰めると、その本の後ろの方には、自分の食べたいものが一番身体の欲しているものだと書いてあった、という。それって科学的に立証されているわけ?と尋ねると、哲学の本棚の本だからどうかな、という答えだった。

後日談その三。本当か嘘かわからないが、T氏は数年前にヨガの行者に諭されて心を入れ替えたらしい。多分参考にならないと思ったが、一応T氏に乗船の心得を聞いてみた。T氏が言うには、乗船の心構えというものはない、普段の心構えが大事だ、とのことである。そこで、普段の心構えとはどんなものかと聞くと、ヨガの行者(ヨ)はT氏(T)に次のように言ったらしい。話はだらだらしていたが要約すると次の様らしい。

ヨ「好き嫌いせず、誰とでも和やかに仲良くするのが人の本当の生き方だ。」

T「それって、聖徳太子の言った、和をもって貴しとなす、とか、論語の,君子は和して同ぜず、とかいうのと似ていますね。でも聖人君子ならできると思いますが、普通の人はちょっと無理ではないですか。」

ヨ「論語読みの論語知らず、とはお前のことだな。」

T「先生、それはちょっと違うと思います。立派なことを言うだけじゃなくて、どうしたらそうできるかという、やり方を教えてほしいと言いたいんですよ。」

ヨ「やり方は子供でも知っているさ。」

T「そんな馬鹿な。子供が知っていてどうして大人の私が知らないんですかね。」

ヨ「お前も知っていたよ。でもつまらないことばかり考えていたから忘れたようだな。」

T「え、いったいなんですか?」

ヨ「簡単なことだよ。いつもスマイルさ。」

T「いつもスマイル!」

そこでT氏は本当に思いだしたらしい。小学生の時に友達にこう言われたな。「お前はいつも笑っているから悩みなんてないだろ」。さらに思い出した。娘が友達ととったプリクラ背景はニコちゃんマークが一杯で、everyday smileと書いてあった。子供でも知っていたな。

最後に。毎日船にメールや写真を送ってくれて励ましてくれる妻(恵美)へ。いつもありがとう。愛してるよ。

サウジアラビアからフロリダ州立大学に留学しているモハメド・アルジャハダリ (Mohammed Aljahdali)さんと私。モハメドさんの専門は古生物で、微少化石 (ナノプランクトンの化石)による年代決定。とても陽気で敬虔なイスラム教徒。船上だけではなく普段もお酒を飲まないが、お酒を飲んでいる人を見るのが好きらしい。

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レポート9「海底地すべりの起源、”島”」(4月3日)

遠藤大介(筑波大学/Core Description –Sedimentology/Volcanology)

こんにちは、筑波大の遠藤です。そろそろ航海も中盤に差し掛かり、コアもかなり上がってみなさんもだいぶ疲れがたまってきている(?)ところです。ぼくは今回の航海でJR号に二度目の乗船なので、前回との違いを感じたことを書こうと思います。

ぼくの前回の航海(Exp. 335;Superfast 4)は東太平洋の低緯度域での掘削でしたので、乗船直後と下船直前以外で航海中に”島”を見ることはありませんでしたが、今回の航海(Exp. 340)ではカリブ海レッサー・アンティル諸島のモンセラート島、ドミニカ島、マルチニーク島などの火山島を海から眺めることができます。というのは、今回の航海の目的が、”レッサー・アンティル諸島の火山活動史を明らかにし、火山性海底地滑り発生機構の解明”のため、火山島の沖合遠方から近傍までの地点での掘削が行われているからです。掘削されたコア試料を観察し、それをもとに注状図(*)と呼ばれる図を書いて、堆積物の時間変化や水平方向での比較を行います。

今回の航海のうちでは特に、モンセラート島とマルチニーク島について島に遠い掘削地点(サイト)から近い地点までの間を移動しながら掘削を行っているため、サイト毎に違った顔つきの島を見ることができます。ただし、島の周りには雲がかかっていることが多く、島や火山の全景が見えるということはなかなかありません。掘削地点が島に近く、なおかつ雲が少ないというチャンスを狙って、きれいな島の写真を撮りたいものです。

*ある地域の地層の層序•岩質•厚さ•含有化石などを柱状に示した図。地層の対比などに利用。地質柱状図とも呼ばれる。

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写真1. カメラを持ってヘリデッキに出る田村さん(JAMSTEC)と石塚さん(産総研)

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写真2. モンセラート島の東南沖(サイトU1394;CARI-02C)から見た、スフリエールヒル火山(3月7日撮影)。2003年に溶岩ドームの一部が崩壊して岩屑なだれが発生し(debris avalanche)、海底に堆積した。山肌の割れ目からは現在も蒸気が上がっているのが見られる。

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写真3. マルチニーク島の西方沖(サイトU1400;CARI-07C)より、朝日を浴びるセント・キッツ島が見える。

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図1.Exp. 340の掘削サイトとレッサー・アンティル諸島、海底地すべり堆積物の位置図(IODP Exp. 340 Scientific Prospectusに追記)。

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レポート8「Good core! とは.そして,男/女の壁?」(3月22日)

片岡香子(新潟大学/Sedimentologist/Volcanologist)

本日はオフ.ではなく,コアがほとんど上がってきません.こんな日があっても良いですね.いろんな研究者と話をしたり,これまでの記載を見直し,データベース上のデータを修正したりして過ごしています.

これまで私たちは,残念なことにメインターゲットの一つである岩屑なだれ堆積物をとることができていません.しかしながら,Lesser Antilles諸島周辺の海中・海底では,火山性の土砂を母材とした流れの現象が多数起きていることが,連日上がってくる大量のコアの観察からも理解できます.火山砕屑性混濁流堆積物(volcaniclastic turbidite)と降下火山灰層が半遠洋性の泥質堆積物中にたくさん入ってきているため,コア記載は連日修羅場と化していました.無数にある薄層の降下火山灰層の記載は非常に細かく特に大変です(ある地点では150枚以上!).一方,厚層のタービダイトがコア一杯につまっていると,コア記載者(core describers)みんなで「Good core!」と喜んでいます.記載が楽になるからということではなく(それも少しはありますが),タービダイトは私にとってまさに見たかったものなので,おそらく人一倍喜んでいます.この航海の特色は,これまで事例の少ない火山島周辺を掘削するという点にあります.そのため,一般的な半遠洋性の堆積物の穏やかな顔つきではなく,生物起源の砕屑物を一部巻き込んだ火山砕屑物の多種多様な岩相が,コア記載者を悩ませて,いや楽しませてくれています.

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写真1.Good coreなのかBad coreなのか.記載をしているGeorgesと記載データをデータベースに入力しているAdam.もちろん学問的にはどれもgood coreです.

私は船が苦手で(航海当初は船酔いと睡眠不足に悩まされました),また海・船と言えば男の世界(?)という安直なイメージもあって,そもそも研究航海に積極的に関わりたいという気持ちを実は,あまり持っていませんでした.ただ,この航海は私の好きな火山砕屑物を掘るということで,とにかく乗ってみようと応募しました.乗船してみると,JRにはコチーフの一人であるAnneをはじめとして女性の研究者や技術者が多数乗船しており(18名いる?),何か困ったことがあれば気軽に相談もできることから,いろんなことは杞憂だったのかも,と感じています.日本では,地球科学や地質学の世界での女性研究者の比率は少なく,現に私の所属する大学でも,女性は教員のなかで圧倒的に少数派です.男女の比率においては極めてアンバランスな日頃の世界から飛び出し,この船の中で,各国の女性研究者やJRの女性技術者と話をするだけでも,とても居心地の良い雰囲気に身を置くことができます.また数がそれなりに増えれば,女性だからと言って何も特別なことはなく,フェアで対等な研究者・技術者同士の交流や議論がここにはあります(ひょっとしたら表面だけかもしれませんが,短期間ではそこまで深くは分かりません).一方,ケイタリングスタッフ(調理・清掃・洗濯の類)はすべて男性ですが,彼らは逆にとても気さくでかつ紳士的です.こういった点において,日本の女性研究者にとっては,JRでの研究漬けの連日は,夢のような世界かもしれません.

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写真2.昼シフトのCatwalkでコアを切っているのはみんな女性の技術者です.

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写真3.唯一の壁.

今のところ,男女の壁を発見したというのはミーティングルームのそばにあるトイレぐらいでしょうか.これは当初,共用だったのですが,分けてくれました.こういうバリアなら歓迎ですね.

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レポート7「さまざまな期待」(3月19日)

齋藤武士(信州大学/Paleomagnetist)

乗船して2週間経ちました。遠藤君を除いた研究者全員初めてのJR号乗船という珍しい(?)パーティーですが、なんとかいろいろ慣れてきたところでしょうか。タッツーヤに続いて船上レポートを送ります。

現在はMontserratでの掘削が終了してMartinique西方沖に移動し、CARI-10Bの掘削を始めるところです。昨日の昼にこれまでの成果とこれからの掘削に関するミーティングが行われました。conference roomに研究者全員が揃うのは、出港直後に行われた諸レクチャーの嵐以来です。あの時は日本との時差ボケや、外洋へ出たことによる船酔いで、あまり頭に入ってこないことも多かったのですが、昨日の話でいろいろ整理がつきました。心機一転これからの航海にのぞめそうです。

本航海は火山が崩れてできた岩屑なだれ堆積物をメインターゲットにした初めての航海だそうです。どうやら航海前から掘削の困難さが指摘されていたようですが、予想通り(?)、狙っていた獲物が採れていません。岩屑なだれ堆積物というのは、固い溶岩と柔らかい火山灰層や堆積物層が交互に挟まっている堆積物です。一様に固いものや一様に柔らかいものを掘る技術は確立されているらしいのですが、固かったり柔らかかったりするものを掘ることは難しいようです。これまでに掘ることができたのは基本的に柔らかい堆積物層だけです。私はこの航海で、溶岩の方に興味を持っているので、さて一体どうしようと困っているところです。とりあえずこれからの掘削に期待したいと思います。
あと私が期待しているのは、鯨かイルカか何か海の大きな生物を見ることです。せっかく船に2か月近く乗るので、何か見たいと思っているのですが、今のところ何にも見られていません。船が動いているときに波しぶきから海面に飛び出すトビウオを見たくらいです。参加前に思っていたよりもフリーな時間がないことも一因でしょうか。基本的に自分のシフト(1シフト12時間、2シフトの交代制で24時間仕事を続けます)の間は実験室から離れられないので、自由に過ごせるのは自分のシフトが終わってからになります。しかし、自分のシフトが終わるとほとんどクタクタで、何かするというよりは部屋に戻って寝てしまうことが多いです。

Anyway、これからの航海でいい試料が上がってくること、鯨が見られることを期待して、まだまだ続く航海を楽しみたいと思います。それでは私のレポートはこの辺で。SeeYou~

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出港前にSanJuanで。月は日本と同じですが、高さが違います。ほとんど真上に見えるので低緯度にいることを実感します。 Martiniqueへ移動中のJR号。遠藤君としばらく海を眺めていましたが、トビウオ一匹しか見られませんでした。

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超伝導磁力計で測定する私(足立君撮影)。右側の大きい筒状の機械が磁力計です。その手前に見えているのが、測定するコア試料(半分に割ったもの)です。左側のPCでコントロールします。

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レポート6「2つ目の孔の掘削」(3月11日~12日)

足立辰也(山形大学/Physical Properties/Downhole Measurements Specialist)

11日の夜シフトでは、2つ目の孔のコアが次々に上がってきました。この穴は1つ目の孔よりもコアの回収率が良いようです。

通常、分析や記載はコアが上がってから3時間後、すなわちコアが常温に戻ってから行います。しかしこの日はコアが上がってすぐにFirst trackというワークフローを行うことになり、私が分析を進めていきました。作業自体はいつもと同じでしたが、3時間後にも改めて分析を始めるため、コアがどんどん上がって来た時は同時に3つの装置を動かしていました。すべての分析が終わる頃にはさすがに疲れましたが、シフト終了後のお昼がバーベキューだったので、お腹いっぱい肉を食べて疲れとストレスを発散しました。仕事終わりに海を見ながらの食事は格別です。

12日にはさらに多くのコアが回収され、12時間ずっと分析作業に追われました。Physical propertiesグループ 内で私が担当する作業では上がったコアをすべて分析し終えましたが、コアを半割してからの作業、特にコア記載チーム・古地磁気学チームの作業がかなり残っていたため、昼シフトの乗船者達もひたすら記載・分析に追われることになりそうです

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クロスオーバーミーティングの様子

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BBQは本当に最高でした♪

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たくさんコアが上がって来ると作業も大変ですが、明日もまた頑張ります!!

レポート5「2番目の掘削地点でトラブル発生」(3月9日~10日)

足立辰也(山形大学/Physical Properties/Downhole Measurements Specialist)

8日から続いていた2番目の掘削地点で、掘削終了時にドリルが抜けなくなるというアクシデントが起こりました。夜シフトの私たちはすでに上がって来ているコアの分析および記載をしていましたが、それらの仕事が終わってもまだ地点に留まっているという状態でした。結局そのまま夜シフトから昼シフトへ移行してしまったのですが、私たちが寝ている間にドリル下部を爆破して離脱し、今度は約20m離れた2つ目の穴の掘削が開始されました。

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レポート6「最初の地点掘削終了・次のポイントへ」(3月7日~8日)

足立辰也(山形大学/Physical Properties/Downhole Measurements Specialist)

最初の地点では、山体崩壊(岩屑なだれ)によってもたらされた雑多な堆積物の掘削が難しく、思うようにコアが回収されませんでした。最終的には掘削孔内でコアバレルが破損してしまい、この地点での掘削は終了になりました。

7日のクロスオーバー後、JR号のヘリポートからモンセラート島全体をはっきりと見ることができました。大きく4つの山体に分けられるモンセラート島ですが、最も大きなSoufriere Hills 火山が美しく、シフトの疲れを忘れるほどでした。

8日には2番目の掘削地点に向かい、早速掘削が始まりました。この地点では2つの穴を掘る予定になっています。この地点は前の地点よりも早く掘削が進み、効率的にコアが採取されました。
また、この日はコア記載グループのGeorges さんの誕生日ということで、クロスオーバーの後、お祝いのケーキが振る舞われました。短い時間でしたが、皆で楽しくお祝いできて良かったです。

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モンセラート島・Soufriere Hills火山

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ジョーじぃさん、おめでとう!!

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レポート3「最初の掘削地点へ到着・掘削開始」(3月6日)

足立辰也(山形大学/Physical Properties/Downhole Measurements Specialist)

最初の掘削地点に到着し、早速掘削が開始されました。この時には船の揺れが少なくなり、船酔いもだいぶ治まって食事もとれるようになりました。

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上がShip Timeの時計、下が標準時間の時計.モニターにはドリルフロアーの様子がリアルタイムで映っています.

午前4時40分頃、ついに最初のコアが上がってきました。Physical Properties Specialistである私はグループメンバーと役割分担し、whole-round core (上がって来たままの半割されていない状態のコア)を最初に分析していきます。最初のコアを最初に分析するというプレッシャーを感じつつ、コアの基本的な物理特性を測定していきました。上がってくるコアはそれほど多くなかったため、余裕を持って分析を進めることができ、しばしばコア記載グループや古地磁気学グループの作業を覗くこともできました。

6時過ぎになると外も明るくなってきて、デッキやキャットウォークからモンセラート島が見えました。思ったより近くに見えたことに感動しながら、少し疲れた体をリフレッシュしました。毎日昼の12時頃になると、次のシフトの人達とクロスオーバーミーティング開かれ、各研究グループからコアの分析および記載データの簡単な報告が行われます。この日はコアの回収率があまり良くなかったため、次に上がってくるコアに期待しつつ夜シフトが終了しました。

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上がってきたコアの切断作業

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Christophさんと分析中の私

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レポート2「JR号出航」(3月5日)

足立辰也(山形大学/Physical Properties/Downhole Measurements Specialist)

5日午前8時30分頃、JR号は最初の掘削ポイントへ向けて出港しました。沖へ出るまでの間、乗船者は皆デッキへ出て景色を眺めたり、写真を撮ったりしながら楽しみました。船内に戻ると再び乗船者全員でのミーティングや各研究グループに分かれてのワークフローの確認が始まりました。
最初の掘削に向けて着々と準備が進められる中、船酔いに苦しむ乗船者も何人か見受けられました。私もその一人で、沖に出てからの6時間は特に辛く、分析装置の操作方法も頭に入らず、食事も食べられませんでした。

最初の掘削ポイントはモンセラート島付近にあり、深夜0:00~昼12:00の夜シフト中にコアが上がってくる見込みだったので、私を含む夜シフトの乗船者は早めに部屋で休息をとりました。

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船に掛けられていた梯子がクレーンで外されて行きます.

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出港時にJR号を引っ張る小型船が2隻近づいてきました.

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埠頭に架かっていたロープも外され、船上に引き上げられていきます.

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Good Bye Sun Juan!!

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レポート1「ジョイデス・レゾリューション号乗船」(3月3日)

足立辰也(山形大学/Physical Properties/Downhole Measurements Specialist)

今回のExp.340では、カリブ海・レッサー・アンティル諸島に分布する火山について、1.岩屑なだれの発生プロセスとその時期、2.火山災害および火山の進化を反映する噴火史、3.長期的なマグマ循環および進化過程、4.深海底堆積物の分布を明らかにするため、海底を掘削・研究していきます。乗船する日本人研究者は合計8人で、私はPhysical Properties Specialist(物理特性スペシャリスト) として掘削コアの分析を行います。
乗船するジョイデス・レゾリューション号(以下JR号)はすでにプエルトリコ・サンファンに寄港しており、同じ港に豪華客船が停泊する中、JR号の高いやぐらが異彩を放っていました。3日に港へ到着・乗船した我々は、これから航海をともにする乗船者たちと早速ミーティングを行いました。港に停泊中の2日間、昼間は掘削ポイントの地質概要、掘削スケジュール、船内生活などのガイダンスを聞き、夜はそれぞれのグループに分かれてサンファンの繁華街へ出かけました。私もPhysical PropertiesグループのリーダーであるChristophさんに誘われて食事へ行き、サンファンのきれいな街並みを眺めながら海外の乗船者達と楽しいひと時を過ごしました。

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サンファン港に停泊するJR号

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同じ港に停泊中の豪華客船

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きれいな街並みの繁華街

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Physical propertiesのメンバーとの食事

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成果一覧

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※IODP研究成果の取りまとめは、研究航海乗船者に対するサポートを継続していくために非常に重要なものです。成果については、主に日本(J-DESC枠)から乗船した方が含まれる論文をまとめております。新たに論文等を出された場合や資料中の過不足・お気づきの点などがございましたら以下まで情報をお寄せください。

参考:IODP Publications
http://publications.iodp.org/

参考:Scientific Ocean Drilling Bibliographic Database
http://iodp.americangeosciences.org/vufind/

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